代表挨拶
神津 カンナ kanna kouzu
『フォーラム・エネルギーを考える』代表/作家

フォーラムエネルギーを考える(ETT)は1990年に発足した。1986年に起こったチェルノブイリ事故のあと、それまであまりきちんとエネルギー問題を考えることのなかった人たちと、いちからエネルギー問題を勉強し、考えようという趣旨から出発したものだった。
 
あれから30年。環境問題に関する人々の意識の高まり、東日本大震災、そして新型コロナウイルスの流行と、ETTはいつも大きな問題とともに歩んできたと思う。

環境負荷の少ないエネルギー源を選択するにはどうすれば良いか、原子力をどのように捉えれば良いか、自然災害に対する備えはどうあるべきか、増える感染症のリスクの中で、資源のない日本が燃料を輸入に頼っている現状をどう見れば良いか。勉強すればするほど様々な問題が浮かび上がり、時には哲学的に、時には生物学的に、時には科学的に、時には経済の観点からと、色々な角度から考え、ともに学ぶことを大切にしている。結論ありきではないのである。

ETTは「見えないもの」を見る力を養うために、そして自分や社会、国や地球をがんじがらめにしているたくさんの紐がどんなものなのか、それをほどくにはどうすれば良いのか、それを考える会である。少し遠回りかもしれないが、それによって自分が成長すればエネルギー問題も、そしてその他の問題も、正当に考えることができると信じている。

私が好きな言葉に鎌倉時代の名僧、明恵上人の残した「阿留辺幾夜宇和(あるべきようわ)」というものがある。何気なく読んでしまいがちだが、これは「あるべきように」でもなく「あるがままに」でもなく、「あるべきようわ」である。

私の勝手な解釈だが、明恵上人から、いつも考えていなさいと言われているような気がしてならない。流れるままに、ただ身を任せる「あるがままに」でもなく、こうあるべきだという主義でもなく、その時々に、そのぶつかった事柄に接しながら、今、自分の「あるべきやうは」「何か」と問いかけること。考えることこそ重要だと明恵上人は言っているように思うのである。

だからETTは「考える」会であり続けたいと思っている。どんなことがあっても、それに向かって今、自分はどうすれば良いのか、考えられる人でありたいと願うからである。

これからもメンバーとともに、「阿留辺幾夜宇和」と絶えず考えられるような勉強を積み重ねていきたいと思っている。

(2020年7月)

神津 カンナ(こうづ かんな)プロフィール

作曲家の神津善行、女優の中村メイコの長女として東京に生まれる。東洋英和女学院高等部卒業後渡米。帰国後、執筆活動の他、テレビ、ラジオの出演、講演、また、公的機関や民間団体の審議委員なども数多く務めて精力的に活動。豊かな感性と冷静な視点に支えられ、幅広い層から支持されている。

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