私はこう思う!

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ケ・セラ・セラ

芦野 英子氏 eiko ashino
エッセイスト

3月29日、六ヶ所村の日本原燃本社に行ってきた。再処理施設、MOX燃料加工施設は2024年度上期に向けての竣工目標を立て準備中であった。低レベル放射性廃棄物埋設については透水性を防ぐための覆土を構成し、施工に向けて作業が続けられている。この後も増えていくであろう事を考えると、現在占めている土地の広さを改めて考えさせられる。そして一個一個の廃棄体に入るドラム缶は、周囲をコンクリートで固められ、さらに集合体もコンクリートで覆われることになる。私はこの問題に関わって50年になる。始めは小学生だとすると今は大学生、大学院生にもなろうか。多くを見聞きし、多くを学んだように思う。

日常何も考えずに電気を使っていることを思うと、問題は深く広く考えていかねばと思った。
今年は降雪も少なく、この日も朝方に雨が降ったものの、午後には晴れて、道々あちこちに立てられた風力発電の風車を見るたびに、人間が使うエネルギーの問題を考え続けていた。一つの家庭の電力消費から、公共施設、公共交通、企業までその全てに思いをめぐらせていた。

六ヶ所は原子燃料サイクルの拠点でもあり、エネルギーの未来を切り開く場所でもある。東京をはじめとする大都市でのエネルギー消費は、都民にも十分理解してもらいたい。小さな身近な消費だけでなく、飛行機や電車、バスなど、何気なく利用している場所でも大きなエネルギーを私たちは使っている。食物を作るところから、それを食べ、排せつし処理してもらうのでさえ、大きなエネルギー消費なのだ。
私は今88歳になろうとしている。生きて、働いて、泣いたり喜んだりする日々がそれでもなお楽しい人生だったと思う。この先どのくらいの日々年月が私にあるかわからないが、多分あまり難しい事は考えず、その日を何気なく過ごすと思う。この度のように施設を訪れたり、いろいろ考えてみることも、ほんの寸時のことだ。「ケ・セラ・セラ、なるようになる」と歌にあった。日常はこの調子で、あと数年よろしくと願う。

(2024年5月)

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