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えひめエネルギーの会

《日 時》
2024年8月24日(土)13:35〜15:05
《会 場》
いよてつ髙島屋7階 キャッスルルーム(愛媛県松山市湊町5丁目1番地1)
《テーマ》
暮らしの視点で考えるエネルギーと原子力について

家庭でも社会でもゴミの処分には手間がかかりますが、エネルギー、特に原子力発電に関する廃棄物の処分問題は大きな課題になっています。私たち電力の消費者はこの問題をどのように受け止め関わっていけば良いのか、秋庭悦子氏(NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長)にお話を伺いました。

講演
暮らしの視点で考えるエネルギーと原子力について

私たちの暮らしを脅かしているのは何か

私は、消費生活アドバイザーの資格取得後、電力会社各社の事業者団体である電気事業連合会広報部のアドバイザリースタッフとして、一般の人たちに電気についてわかりやすくお伝えする仕事に携わりました。その仕事をきっかけに、電化製品をたくさん使っていてもそれまで電気料金の領収書を見る時ぐらいしか意識していなかった電気について学ぶようになりました。電気をつくり送ることがどれほど大変なのかを初めて知り、私のように電気やエネルギーについてあまり関心がなかった友人たちと集まり、「あすかエネルギーフォーラム」を設立して一緒に学ぶ機会を設け、昨年設立20周年を迎えることができました。現在の会員数は100名以上になり、あすか独自の視察や講演会開催のみならず、全国のいろいろなグループとネットワークを結び、暮らしの視点からエネルギーなどについて語り合う活動を続けています。えひめエネルギーの会とも以前にトークサロンを行ったことがありますね。

世界ではウクライナや、パレスチナから中東地域に広がる戦争が大問題になっていますが、今、皆さんの暮らしにとって、何が問題になっていますか? 今年は元旦に発生した能登半島地震に始まり、8月には宮崎の地震後、南海トラフ地震臨時情報に関する政府の特別な注意の呼びかけで驚かされ、さらに神奈川県西部での大きな地震から首都直下地震のリスクも想起されています。また各地でかつてないほどの集中豪雨による甚大な被害も出ており、巨大災害に対してより意識を向けるようになりました。そして今夏は猛暑のせいで熱中症に警戒して1日中エアコンをつけているため、物価上昇と同様に電気代増加も気掛かりです。天然ガス、石炭などの資源価格が高騰し昨年6月に電気料金が値上がりしましたが、今年の5月で国からの補助金がいったん打ち切られました。しかし8〜10月分は酷暑乗り切り緊急支援で補助金がまた出るというので少しホッとされているのではないでしょうか。

気温上昇は日本のみならず、世界で起こっています。地球温暖化の最大原因はCO2排出量の増加だと言われており、2015年のCOP21におけるパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃より充分低く抑え1.5℃に抑える努力を追求するとして世界約200カ国が合意しています。日本では20年に菅前首相が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわちカーボンニュートラルの実現を目指す」と所信表明演説をしています。日本はこれまでもCO2排出量を削減する努力を行なってきましたが、世界全体では途上国の経済発展によりエネルギー消費量が増加、それに伴いCO2排出量も増えています。 


温暖化防止と“ゴミ”の問題

皆さんは温暖化防止のために日常生活でどのようなことを行っていますか? ゴミの削減は有効な手段です。大量ゴミの燃焼には大量のエネルギーが必要で、そのためCO2の排出が増えます。だから、レジ袋を使わない、詰め替え用を利用するといったReduce=削減、フリマやリサイクルショップを利用するReuse=再利用、紙は再生紙を使ったり、ペットボトルから作られる衣類を利用するといったRecycle=再資源の3Rが推奨されています。2022年4月からはその一環としてプラスチック資源循環促進法が施行され、プラスチックの排出抑制、資源循環を目指しています。

実は廃棄物問題はどのような発電方式においても起こっています。火力発電の中で石炭火力は最もCO2排出量が多いため、世界中で風当たりが強いのですが、日本では高効率でCO2排出量の少ない石炭火力にリニューアルされつつあります。昨年見学に行った瀬戸内海の大崎上島(広島県)にある大崎発電所では、石炭ガス化燃料電池複合発電とCO2の分離・回収技術を組み合わせた実証試験を行っています。また水力発電のダムでも台風などの大雨によって濁流と共に大量の流木やゴミなどが流れつき、回収作業は困難を極めています。そしてクリーンなはずの太陽光発電も、パネルは25〜30 年で寿命となり産業廃棄物として処分されますが、中には鉛やカドミウムなど有害物質が含まれているものもあり、回収されて適正にリサイクル・廃棄されるのか、今後は見守っていく必要があります。同じく再エネの風力発電の風車の寿命は20 年と短く、風車ブレードはガラスや繊維プラスチックで出来ているため、こちらもリユース、リサイクルしなければなりません。 


原子力発電にまつわる廃棄物

では原子力発電の廃棄物とはどのようなものでしょうか。大きく分けると3つあります。一つ目は「高レベル放射性廃棄物」。使用済燃料を再処理し取り出したウランやプルトニウムを再利用しながら廃棄物の量を抑える「核燃料サイクル」を行う過程で発生するものです。二つ目は発電に伴って発生する「低レベル放射性廃棄物」で、それぞれ厳重な処分が必要です。三つ目は放射性ではない「産業廃棄物」です。「低レベル放射性廃棄物」を処分するのは電力会社など電気事業者であり、一方「高レベル放射性廃棄物」の最終処分はNUMO(原子力発電環境整備機構)が責任の主体になっています。


■  低レベル放射性廃棄物と高レベルの図解 

「高レベル放射性廃棄物」(ガラス固化体)は、放射性物質をガラスと一体に固め、金属製容器に入れて地下水の接触を防止、さらに水を通さないよう周りを緩衝材の粘土で包んでから、地表から300m以上深い岩盤に埋めて人間の生活環境への影響がないように隔離して閉じ込める「地層処分」という方法が取られます。原子力発電を利用し始めた時から処分方法の研究が進められ、結果として世界でこの方法を選択しました。今世界で一番進んでいるのがフィンランドで、処分地が決定し、処分方法も規制機関から許可をもらって最終処分場の建設が始まっています。他にもスウェーデンは安全審査がクリアされたら建設に取り掛かる予定で、原子力発電所の数が世界第2位のフランスでは場所は決定済みですが、まだ建設には至っていません。フランスでは、原子力発電に関する情報が地域で共有されており、最終処分場候補地では「ゴミを引き受けるつもりではない、世界中から研究者が集まり最新の世界研究基地になることを期待する」と言っています。原子力発電所の数が世界第1位のアメリカではいっときは建設が進められたものの、当時のオバマ政権により計画中止決定後、動きがありません。日本では北海道の寿都町、神恵内村、佐賀県の玄海町で文献調査中という段階です。

「低レベル放射性廃棄物」は、放射能レベルが1. 比較的高い、2. 比較的低い、3. 極めて低いの3ランクに分けられ、1. は、地下70mより深い地層に処分、2. はセメントなどで固化してピット(穴)に埋め、3. はそのまま浅いトレンチ(溝)に埋められます。現在稼働中の原子力発電所で出る低レベル放射性廃棄物のうち2. のみが対象の処分場は、青森県の六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターです。問題は、現在のところ、1. の処分場は未定であり、また、すでに原子力発電所の廃炉(廃止措置)が決定した24基から出てくるもの、原子力発電所ではなく日本原子力研究開発機構など文科省管轄の研究所から出てくるもの、さらには福島第一原子力発電所の廃棄物、例えば敷地内から外に一切出していない膨大な数の処理水タンクなどの解体後の処分場については現在、全く決まっていません。  


■  原子力施設から出る放射性廃棄物 表組み 

廃炉作業で発生する人体に影響のない廃棄物の有効活用

原子力発電所の廃止措置のプロセスは、1. 使用済み燃料の搬出→ 2. 系統除染=施設の配管や容器内に残っている放射性物質を可能な限り化学薬品などにより除去あるいは削る→ 3. 安全貯蔵でしばらく寝かせ、放射能レベルが低くなってきたところで原子炉を取り出す→ 4. 解体撤去(1)内部の解体→ 5. 解体撤去(2)建屋の解体→ そして最終的には何もない更地になります。計画の認可から終了までには30〜40年程度、解体費用は 1基あたり300〜400億円、さらに廃棄物処分で200億円、合計約500億円以上かかります。

1基の原子炉を廃炉にすると、約54万トンの廃棄物が排出されると推定され、そのうち約93%は放射性廃棄物ではなく、残りの約2%が低レベル放射性廃棄物、約5%が「クリアランス物」です。「クリアランス物」とは、「人の健康に対する影響を無視できるレベル」と見なされたものの中でも、国(原子力規制委員会)の確認を受け、一般の産業廃棄物と同じとされたものです。そのレベルは年間0.01ミリシーベルト。これは私たちが自然界から受ける放射線量(日本平均年間約2.1ミリシーベルト)の1/100以下に相当します。「クリアランス物」の中でも原子力発電所で使用されていた金属は、厳しい規制基準で作られた価値の高いものですから、これを再利用しようというのがクリアランス制度です。

例えば原子力発電所や一般社会での再利用の例として、ベンチの脚や側溝の蓋、フラワーポット、照明灯やサイクルラックがすでにありますが、今後24基も廃炉にすると、10年後には「クリアランス物」が現在の10倍も発生すると予測され、大量に利用する方法が検討されています。資源の少ない日本において、解体廃棄物としてそのまま埋設するのは資源の無駄遣いであり環境にも負荷になります。金属を溶解し成形加工する業者さん、そして作業現場周辺地域にも放射能についての理解を深めていただきたいところです。私たち消費者は、日常生活におけるリサイクルやリユースと同様に、「クリアランス物」の安全性について理解した上で、利用することが必要ではないでしょうか。 


■  解体廃棄物の再利用 

秋庭 悦子(あきば えつこ)氏プロフィール

NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長
石川県生まれ。1971年、早稲田大学商学部卒業。98年、(社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任理事。2003年、NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長。省エネルギー、新エネルギー、原子力など総合資源エネルギー調査会の審議委員を務めると共に、消費者の視点でエネルギーに関する理解活動を行う。10年1月~14年3月、内閣府原子力委員会委員に就任。14年5月NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長に再就任。現在、同理事長の他、北陸電力社外監査役、(一財)日本原子力文化財団非常勤理事、(一財)電力中央研究所評議員、ETT企画委員等を務める。

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