「生活者の視点」でエネルギーについて考え話し合う活動も、時代の流れの中で多くの節目を経験してきました。しかし、やはり最も大きな曲がり角は、2011年に起こった東日本大震災と原子力発電所の事故であること、これは間違いありません。いやが応でも国民一人ひとりが社会の基盤である国のエネルギー問題にあらためて向き合わなければいけなくなったからです。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と鴨長明『方丈記』にもあるように、時代は常に変化しています。特に2011年以降は、変えることが是となり、変わっていくことが当たり前になりました。しかし、2年が過ぎた今、私は思います、変えないことの重要性、変えられないことの存在もあるのではないかと。
今こそ、精査しなければいけないのではないでしょうか。
変わったものは何か、変わらないものは何か。
そして、これから変えなくてはならないものは何か、変えてはいけないものは何か。
2012年度においては、ETTの今後の活動方針をより明確にするために、これまでのメンバーの方々との意見交換などを経て、「より広く、より深く、より密に」という3本の柱をご提示しました。
その中でも一番初めに行ってきたことは「より密に」ということです。
2011年度はメンバーの方々の地域における活動がほとんどできなかったため、事務局は各地域で抱えている問題点や率直な疑問や悩みなど、貴重な思いやご意見を伺い、今後のETTの活動をどうすべきかの基本を構築するために、各地をお訪ねしました。
2012年度は「より広く」という点で、電気、石油、ガスなどを中心としながら、宇宙や海洋といったこれまで以上にさまざまな分野の専門家から話を伺い多様な視点でエネルギー問題について考えられるよう、ホームページや冊子において紹介してまいりました。
そして今年度は、3つめの「より深く」という点に焦点を当てたいと考えております。
たとえば、天然ガス採取のために地下からくみ上げた「かん水」にはヨウ素が多く含まれていますが、資源の少ない日本がヨウ素の輸出大国であることはあまり知られていません。また、多様な石油化学製品の優れた加工技術も日本の誇れる輸出産業ですが、その実体も私たちはあまり知りません。そして電力に関しても、水力発電のダムにおける貯水量確保のための地道な作業、あるいは送電線に付着する積雪除去、通学路の児童に対する落雪事故防止のための人員配備などといった、電気が私たちの家に安全に届くまでの間、どれほど人の手が携わっているのかなどは、ほとんど見過ごされています。
もちろん、「より広く、より深く、より密に」という3本の柱は同時に進行させていくべきものですが、今年は「より深く」に焦点を当て、皆さまの知識、知見の補強をお手伝いできればと思っています。そして、ETTの組織において変えるべきこと、変えてはいけないことは何かを熟慮しながら、皆さまと共に今年度の活動を進め、代表就任3年目の責務を果たしていきたいと考えておりますので、ご理解とご協力のほど、何とぞよろしくお願いいたします。
神津代表からの挨拶に引き続き、事務局から平成24年度の地域活動支援の実績やETTとしての見学会実績、ならびにホームページのリニューアル、メーリングリスト開設などについて報告がなされ、併せて平成25年度の活動方針についての提案が行われました。
後半は、南 砂氏(読売新聞東京本社編集局次長兼医療部長)による「医療分野に学ぶ日本のエネルギー問題」、田中 伸男氏(一般財団法人日本エネルギー経済研究所特別顧問/前IEA事務局長)による「シェール革命とエネルギー安全保障戦略」という2つの講演が行われました。