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石川エネの会かなざわ

《日 時》
2013年9月7日(土) 13:30~15:30
《会 場》
金沢エクセルホテル東急(金沢市香林坊2-1-1)
《テーマ》
「日本の原子力発電の政治経済的な意義」
原子力を含むエネルギー問題は、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故以降、私たち一人ひとりにとって身近な問題となり、数多くの議論が重ねられています。政府が、そして何より私たち自身が、どのような選択をすれば、エネルギーをはじめとする日本の将来像を描けるのでしょうか。中野剛志氏(評論家)に、揺れ動く世界の情勢を俯瞰(ふかん)しながら、エネルギー問題が日本の政治経済に与える影響をお話しいただきました。

講演「日本の原発の政治経済的な意義」原発の必要性は、今、エネルギー安全保障の視点から問われている

本日は、政治経済、国際関係、国家論といった観点から、原子力発電の意義についてお話ししたいと思います。私は科学技術の専門家ではありませんが、原子力を含めエネルギーというものは政治経済に深く関与している問題であるにもかかわらず、技術的な専門家と経済的な専門家が同じテーブルで議論し合う機会が少ないと感じています。

福島第一原子力発電所の事故以後、原子力発電の意義があらためて問われるようになりましたが、自然災害の多い日本において、安全な原子力発電は果たして可能なのかという疑問があります。これに対し、私は可能だと思っています。なぜなら、福島第二、女川、東海第二の原子力発電所は、被災したにもかかわらず深刻な事故に至りませんでした。つまり地震・津波対策を厳重に講じることで、原子力発電の安全性は維持できるからです。あえて言うなら、事故を踏まえた教訓や知見の蓄積を今後に生かすことで、安全性が高まるとも判断しています。ただし、人間が操作している限り事故のリスクを0%にすることは不可能であり、また仮に日本で原子力発電をゼロにしても、他国で稼働していれば、事故発生による何らかの影響は免れないという認識も必要です。

原子力発電は、エネルギー安全保障、環境対策、経済性という3つの有用性により推進されてきました。1970年代のオイルショックにおいては、エネルギー安全保障が注目されましたが、近年は、CO2を出さず地球温暖化対策に有効という環境対策の点と、大量かつ安定的で安い電力供給ができるという経済性の点が主張されてきました。しかし、事故のリスクがゼロにならない、人命が失われる可能性さえある場合、後者二つの根拠で原子力発電の必要性を主張することはできません。有力な根拠になるのは、エネルギー安全保障であり、これには4つのメリットがあると考えます。一つ目はエネルギー源の多様化に寄与すること。省エネ推進のみでは電力削減に限界があり、またこれ以上の化石燃料依存による輸入増はありえません。次に、原子力発電燃料のウランは数年間使用でき、かつ準国産であること。三つ目は、ウランの輸入先は政情が比較的安定した国々に分布しており、価格も安定していること。そして四つ目は、天然ガスの約5万倍もの発生熱量の原子力発電は、大量かつ安定的な電力供給ができること。しかも自然エネルギーと比較してみると、風力が16~18円/kWh、太陽光が55~63円/kWhに対し、廃炉・廃棄物処理費用を含み8~13円/kWh程度と試算されています。(地球環境産業技術研究機構 秋元圭吾氏による推計)


エネルギーの安全保障は、なぜ必要なのか

「安全保障」という言葉が、軍事的な意味合いのみならず、エネルギーや食料についても使われているのはなぜでしょうか。そもそも安全保障とは、他国の干渉、市場の価格高騰や災害といった外部からの脅威から、民主主義の理想である、自分たちの国の運命は自分たちで決めるという「国民自決権」を守ることです。たとえば日本にとって必要な食料を他国が輸出制限したり、あるいは市場におけるエネルギー価格の乱高下に左右され国の経済が破たんしたり、国民が将来の展望を描けなくならないようにするため、政府は安全保障を確保する義務があります。そして国民も、個人の思想や価値観にかかわりなく、安全保障については全員一致することが民主主義の考え方です。

戦後の日本では、軍事問題はもとより、食料、エネルギーの安全保障についても議論が避けられてきた傾向があるため、日本の民主主義は未成熟と言われています。それに対しアメリカは3つの安全保障を決して手放しません。そして、民主主義を勝ち取り守るために人命が損なわれる可能性さえあるという事実は、アメリカ独立戦争やフランス革命をはじめ、20世紀のアフリカやアジア諸国の独立運動を見れば明らかです。人命より優先される民主主義の概念は、日本では一般的に理解されにくいでしょうが、民主主義を守るエネルギー安全保障のために、たとえリスクがあっても原子力発電を選択する必要があると私は考えています。

なぜならば、エネルギー自給率が先進国の中で低い日本が、原子力発電の代替としての自然エネルギー推進といっても、安定供給が困難な自然エネルギーでは安全保障が成り立ちません。2008年の電源構成率において原子力の比率が日本とほぼ同じだったドイツでは、国産の石炭比率が47%を占めています。また14%を占めている天然ガスはロシアからの輸入リスクがあるので、これを軽減するために自然エネルギーを促進しており、環境対策というより安全保障を重視してきたことがわかります。


エネルギー価格抑制によるインフレ圧力緩和と、公共投資による需要創出によるデフレ圧力緩和

日本は今、アベノミクス効果でデフレから脱却しようとしています。バブル崩壊後に経済政策でデフレ陥落を免れたものの、1998年、消費税を3%から5%に上げた結果、物価は下落し価値が上がったお金はそのままプールされました。物を買わず投資も控えるので再び物価が下落し、その結果、企業の赤字、倒産そして失業と連鎖するデフレスパイラルに陥り、以来14年も続きました。しかし実は2006年からリーマンショックの2008年まで消費者物価はやや上昇しており、これは原油価格が高騰したせいです。デフレなのにインフレも同時発生する「スクリューフレーション」と呼ばれる現象は、食料や電気料金など生活必需品がインフレになって中低所得者層の所得を減少させ、貧困化をもたらすことになります。



そして、エネルギー価格上昇の原因の一つが、中東情勢の悪化や地政学的リスクの増大です。アメリカの軍事介入危機が高まっていたシリア内戦において、イランはアサド政権を支持、アメリカが支援しているサウジアラビアが反体制側を支持し、対立するイスラム教二大勢力の国家間代理戦争の様相を呈しています。アメリカは国内の力を回復するためにイラクから撤退し中東から手を引こうとしていたところ、イランによる国内テロ攻撃の挑発から介入せざるを得ない状況に追い込まれ、また同盟国イギリスやドイツの軍事介入不参加表明、ロシアによるけん制強化によっても、「世界の警察官」としてのアメリカの地位低下が明らかになってきました。平成23年度の日本は、原子力発電停止に伴うLNG火力増大により、LNG輸入量が前年比20%も増加しました。そのうちホルムズ海峡を通過する割合は24%です。仮にイランがホルムズ海峡を封鎖した場合、日本がエネルギー危機に陥るというように、遠い中東諸国の政情が大きな影響力を持っています。

一方、アメリカを脅かす超大国となった中国は、人口増大・経済発展により世界中から新たなエネルギー資源ルートを確保しようと、尖閣諸島など日本近海に接近しています。これまでアジア太平洋地域を守っていたアメリカの軍事力が今後、弱体・後退していけば、日本の安全保障はエネルギー面においてもより危険にさらされることになるわけです。

エネルギー価格上昇のもう一つ大きな原因は、投機マネーの流入です。欧米の金融緩和で溢れ出したマネーはエネルギー・穀物市場に流入し価格高騰を招き、エジプト革命の端緒となった民主化運動も小麦の暴騰がきっかけであったように、途上国の政情不安はさらに価格を高騰させます。こうした影響を被らないためにも、日本は原子力発電の再稼働により電力を安定供給し、輸入エネルギー資源の比率を減らし、電力価格の上昇を抑えるべきです。併せて、デフレ緩和のために公共投資による需要創出も必要だと思います。たとえば原子力発電所の津波対策の防波堤工事を公共投資で行ったり、防災のための公共投資は惜しみなく実行し、国土の強靭化を最優先することにより、雇用が生まれ、その結果、需要も生まれます。

早急なデフレ脱却判断から、消費税増税により格差拡大を促し低所得者層の死活問題を招くよりも、エネルギー価格抑制でインフレ圧力緩和、公共投資による需要創出でデフレ圧力緩和という、二方向からのスクリューフレーション対策により、所得の底上げと内需拡大が可能だと考えられます。懸念の財政状況については、政府の債務残高増大といっても、たとえばユーロ圏の国債と異なり、自国通貨建ての国債で、しかも保有者はほぼ日本人で占められているため、デフォルト(債務不履行)はありえません。また長期金利は90年代以降、世界最低水準で推移し、しかも円高傾向ということは、財政が比較的安定した国家と世界から見なされているわけですし、公共投資のための財源の余地はまだあります。財政健全化のためにも、まずデフレ脱却と景気上昇による税収増の政策を図り、日銀による金融緩和で溢れたマネーは格差是正などの有効な目的に投入されるべきだと考えています。



中野剛(なかのたけし)氏 プロフィール

評論家
1971年神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省し、資源エネルギー庁新エネルギー部新エネルギー対策課課長補佐などを務める。2000年に英国エディンバラ大学に留学。政治思想を専攻し、博士号(社会科学)を取得。元京都大学大学院工学研究科准教授。著書に『日本防衛論』(角川SSC新書)、『反・自由貿易論』(新潮新書)など。『日本思想史新論』(ちくま新書)で山本七平賞奨励賞受賞。

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