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石川エネの会かなざわ

《日 時》
2013年10月21日(月) 13:30〜15:30
《会 場》
愛媛県中予地方局(松山市北持田町132番地)
《テーマ》
「今、あなたと話したい。これからのエネルギーのこと」
私たちは、新聞、テレビなどで見たり聞いたりした情報から、時として一方的な考え方のみを受け入れ、性急な判断をしてしまうことがあります。大切なエネルギー問題について、身近な地域から日本全国、さらに世界へと視野を広げ、多様な角度から考察するためには、どうすればよいのでしょうか ── 神津カンナ氏(ETT代表)の講演「木を見て森を見ず……とならないために」と、引き続いて行われた竹内純子氏(NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員)との対談を通して、ヒントを頂きました。

一つの電源に依存し過ぎるエネルギー政策のリスクとは

神津 本日は、電力会社に勤務経験がおありの竹内さんに、日本のエネルギー問題について専門の立場から詳しくお話しいただこうと思っていますが、どのような仕事を担当していらしたのですか?

竹内 尾瀬の自然保護活動を担当した後、地球環境問題とエネルギー政策を考える部署に配属されていましたので、双方に興味を持っていました。エネルギー政策の難しさは、安全・安心のSafetyのSを核に、経済性Economy、安全供給・安全保障のEnergy Security、そして環境のEcologyエコロジーという3Eバランスをいかに取るかに尽きるといえます。3Eのどれを重視するかは、その国の気候、地形、資源の有無、人口や産業構造、そして目指す社会によって異なり、正解はありません。バランスのいいエネルギー政策というのは、なかなか難しいものです。日本の場合、1970年代は発電電力量の7割を石油に頼っていたため、オイルショックは国民生活に大打撃を与えました。電源の多様性を確保しようと、原子力やLNG火力の導入を図る努力を加速させたのです。量的不足が解消され1990年代に入ると、海外との価格競争に勝つために電気代をより安くすることが、特に産業界から求められました。95年からスタートした産業用の電力自由化を含めた制度改革によって、日本の電気代は低減してきました。その後、東西冷戦が終わり人類が直面している最大の問題は地球温暖化であるという世界的な認識が広がっていき、97年には京都議定書が採択されました。エネルギー政策のバランスにおいてecology(温暖化対策)の占める位置が優位になり、2009年には、「2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減」という目標を鳩山元首相が国連総会で発表しました。これは相当、実現可能性が乏しいものでしたが、つじつまを合わせるために、当時、策定されたエネルギー基本計画は、年限を2030年に延ばした上で、総発電量に占める原子力の比率を26%から倍以上の53%に、再生可能エネルギーを19%に増やし、省エネも相当量見込んだものとなったのです。しかし一つの電源に5割以上も依存するのは、3Eのバランスを失しており、エネルギー政策としてかなり「出来が悪い」と言わざるを得ません。ちなみに東京電力福島第一原子力発電所事故後に発足した「エネルギー・環境会議」は、原子力発電の比率を2030年時点で0、15、20~25%とする3案を検討対象にしていましたが、仮に0%にするなら再生可能エネルギーの比率は35%程度導入する必要があるとされています。これだけ導入量を増やすためには、約1,200万戸、耐震強度が劣る住宅も補強して太陽光パネルを設置するという前提になっていたのです。報道では原子力発電の比率のみが踊っていましたが、原子力の比率を下げるのであれば何が必要とされるのか、計画の全体を見て私たち消費者の生活への影響を考える必要があります。

神津 温暖化対策重視の政策は、その実現性に首をかしげたくなるような目標値を並べていますが、皮肉なことに今は火力発電が9割を占め、オイルショックのころに逆戻りした感じがします。


震災後の電源構成比


竹内 2011年度のLNG輸入は前年比で約30%増加しましたが、主要な輸入先であるカタールやUAEからはホルムズ海峡を通過しなければならず、イランなど中東の地政学リスクもあります。長期的に考えれば、東南アジアを中心に世界のエネルギー需要が増加する中で、エネルギー自給率4%の日本が、一つの電源に頼り過ぎることは、安定供給の観点からは得策とは言えません。電力消費を抑えながら経済成長を図ろう、グリーン成長を目指そうという意見もありますが、歴史的に見ればGDP成長率と電力消費量変化率は基本的に比例するものです。歴史上では唯一、東西ドイツ統一の時期に、東ドイツの古く効率の悪い設備が、統一による設備投資促進によって高効率のものに変えられたので、経済成長と電力消費量の低減の両立が見られましたが、それ以外には経済成長をしつつ電力消費量を低減させたという事例は確認されていないのです。今まで無かったから今後も無理だということではありませんが、相当、難しいチャレンジであることは認識しなければならないのです。 


エネルギー政策の理想モデルといわれるドイツの実情

神津 エネルギー政策の理想モデルと思われているドイツは、脱原発で、再生エネルギーが主力電源になっている国というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?

竹内 日本は現在、すべての原子力発電所が停止していますが、ドイツは古い原子力発電8基は停止させたものの、残り9基はまだ稼働しており、ドイツの2011年の発電量は、石炭メインの火力が54.1%、そして原子力が17.6%を占めています。ドイツが日本と決定的に異なるのは、地続きの隣国から不足分のエネルギーを融通できること、そして自国に石炭という資源を持っており、エネルギー自給率は約40%にもなることです。再生可能エネルギーの導入量は相当増加しており、設備容量では約35%を占めるまでになりました。しかし太陽任せ、風任せの再エネは稼働率が低いので、発電電力量ではまだ17.4%です。さらに、再エネの導入量が増えると、その不安定性を補うために送電網整備や調整電源の維持などが必要になります。日本における風力発電適地は北海道と東北の一部と言われていますが、地域内の送電網を整備するだけで3,100億円程度、基幹送電網を整備すれば1兆円を超えるコストがかかると資源エネルギー庁では試算しています。


ドイツの設備容量と発電量


神津 送電線や系統設備は、用地買収交渉から建設まで、発電所本体と同様に時間がかかり、また維持費なども負担が大きいですね。

竹内 送電線や系統設備は消費者の目からは見えにくいのですが、整備に必要な時間もコストも莫大なのです。

神津 自由化を導入したドイツでは電気代はどうなっていますか?

竹内 実はドイツの電気代は上昇を続けています。電力自由化は価格の上下によって需給のバランスを取るという制度で、多数の会社から選択して電力を購入できるし、価格が安くなる可能性があるものの、規制緩和により事業者が価格を転嫁しやすくなり、逆に料金が上がる可能性もあります。その上、今、ドイツで問題になっているのは、料金割引のために一年分を前払いしたのに事業者が倒産してしまうというケースもあり、需要家保護策の整備も指摘されています。

神津 北アイルランドでは、プリペイドカードを電力計に取り付けて使用し、残高が0になったらカードを買いに行かないと電気を使えない場合もあるそうです。いずれにせよ、自由化が進むと、スイッチを押せば当たり前のように電気が使える便利さはなくなるかもしれないわけですね。

竹内 自由化は消費者にも選択の自由を与えてくれますが、電力会社にも顧客選択の自由と料金設定の自由を与えるものですから、バラ色の面だけしか見ずに制度改正を進めるのは危険です。ドイツはまた、太陽光発電関連産業など「グリーン成長」で成功したと思われていますが、技術的にはすでに中国・台湾企業に追いつかれ、シェアを奪われ破たんした欧米のメーカーが多くあります。再エネの経済効果に関する試算は多くあるのですが、同時に起こる既存のエネルギー供給事業での雇用喪失や、エネルギー価格上昇による他の産業分野への影響など総合的・俯瞰的に分析する必要があります。

神津 日本は、こうしたマイナス面を検証せずに失敗例に追従しようとしていると思うと不安ですよね。


現実的な道筋は、バランスのとれたエネルギー政策の選択

竹内 今の日本が抱えている課題として、原子力発電所停止の影響と再生可能エネルギー全量固定価格買取制度の問題点という2つのポイントがあります。一つ目については、現在、発電量の9割を担っている火力発電は、稼働率が上昇する中で計画外の停止が増加しており、特に老朽化した火力発電所では、2012年度は10年度に比べ1.7倍にも上昇しています。老朽化した設備も利用しなければ安定供給を果たせないため仕方ないのですが、電力会社の皆さんの現場力頼みの状況といえます。

神津 中部電力の武豊火力発電所は去年3回稼働しましたが、運転開始から40年以上の古い火力発電所ですので、いつ来るかわからない発電指令にも万全の態勢で備え、所員の方たちは日々、点検を怠らずに緊張状態が続いているそうです。

竹内 こう考えると、ホルムズ海峡危機が起こらず燃料を安定的に輸入できていること、老朽化した火力がなんとか大停電も起こさず稼働してくれていることなど、日本のエネルギー供給は実は危ない綱渡りをしている状況であるのに、「今年の夏も電力は足りたのだから、原子力発電はもう要らない」という考え方で、本当にいいのでしょうか。火力発電の焚き増しにより年間3兆8千万円も追加の燃料費が海外に流出することとなり、今は電力会社が内部留保やリストラなどで値上げ幅を抑制している電気代も、約2割は上昇すると予想されています。資源がない日本が原子力を持たなければ、資源国からは足元を見られますし、高い値段でも買わざるを得ないので国際的な価格上昇の原因にもなっています。一方で、日本の原子力だけを止めても安全ではないのです。IAEAの試算によると、今後、新興国や中東諸国を中心に、急増する電力需要を賄うため、原子力発電開発が急ピッチで進められていくといわれており、日本の隣国である中国や韓国も今後、原子力発電を急拡大する計画です。

神津 3.11以前は世界的にも高い安全レベルと評価されてきた日本だからこそ、培ってきた原子力技術をこれからも世界に役立てる必要がありますね。

竹内 二つ目の再生可能エネルギーの固定価格買取制度については、仕組みを詳しく理解されている方が少ないと思います。量産効果でコストが下がれば、賦課金も下がるのではと思われていますが、買取の単価は下がっても賦課金の負担は増加するのです。なぜなら、買取制度は10年もしくは20年間に渡って保障されており、買取価格は技術の普及に伴って引き下げられていくものの、買い取る電力量が増加すれば結局、国民が負担する賦課金総額は増加していくからです。ドイツでも国民負担が課題になり政治問題化しています。日本は、諸外国と比較しても高い買取価格を早急に引き下げる、一定以上の電気料金上昇で買取を停止するといった国民負担上限制の導入を検討する必要があります。電気は生活必需品であり、イギリスやドイツで大きな問題になっている「エネルギー貧困世帯」の増加は、わが国にとっても対岸の火事とはいえません。そして、3.11以降、置き去りにされている温暖化問題についても、もう一度きちんとそのリスクを認識すべきです。

神津 デメリットのないエネルギーというのはないわけですよね。もちろん再生可能エネルギーは積極的に取り入れた方がいいけれど、基幹エネルギーにはなり得ませんし、より安価で安定的なエネルギーを導入しなければ経済発展もおぼつかないといったように、さまざまな組み合わせを考えた上で、国として方向性を決めなければならないと思います。そして税金や社会保障問題と同じく、将来世代へ負担を先送りしないかじ取りをするために、理想論ではなく、現実的な道筋を選ぶようにしなければならないとも感じています。


竹内 純子(たけうち すみこ)氏プロフィール

NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員
1994年、慶応義塾大学法学部法律学科卒業後、東京電力入社。99年より尾瀬の自然保護活動を担当。その後、地球温暖化とエネルギー政策を担当。農林水産省生物多様性戦略検討会委員や21世紀東通村環境デザイン検討委員などを歴任。2011年末に東京電力を退職後、12年より現職。著書に『みんなの自然をみんなで守る20のヒント』(山と渓谷社)。

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