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国際ソロプチミスト延岡
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1月20日
NPO法人あすかエネルギーフォーラム
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11月21日
NPO法人WARP-LEE NET
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10月21日
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10月7日
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6月22日
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4月12日
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国際ソロプチミスト延岡

《日 時》
2014年2月22日(土) 13:30〜16:30
《会 場》
延岡総合文化センター(宮崎県延岡市東浜砂町611-2)
《テーマ》
「今だからこそ考えるエネルギーのこと
~地方だからこそ出来るエネルギーセキュリティーの仕組みづくり〜」
日本国内の新聞でヘッドラインになるようなトップニュースが、海外の新聞では小さなスペースで掲載されていたり、全く扱われなかったりすることがあります。また逆に、海外で取り上げられる日本関連の記事の中には、私たち日本人とはまったく異なる見方がされていることもあります。世界から見ると、日本のエネルギー事情は今、どのような状況に置かれているのでしょうか? 海外事情に詳しい田中伸男氏(日本エネルギー経済研究所特別顧問/東京大学教授/国際エネルギー機関(IEA)前事務局長)にお話を伺いました。

講演「最新世界情勢とエネルギー安全保障 世界から日本のエネルギーミックスを考える」
新興国のエネルギー需要増加がもたらす化石燃料争奪

福島第一原子力発電所の事故を受け、原子力を含めたエネルギー問題について、日本国内の議論は盛んになっていますが、果たして世界のエネルギー情勢を考慮した議論といえるのでしょうか。海外勤務が長かった私は、外国人の目で日本の置かれた状況を見る習性があります。事務局長を務めていた国際エネルギー機関IEAでは、世界のエネルギー情勢の膨大なデータを蓄積し、各国がエネルギーをどのように組み合わせて使うことが適切なのかを調査し、エネルギー政策を提言、安全保障を進める支援をしています。IEAは、1974年の第一次石油危機の時に、石油消費国が産油国による大きな影響を受けないよう団結するために設立され、現在28の加盟国があり、90日分の石油備蓄が加盟条件として義務づけられています。エネルギー源を輸入に依存している日本のような脆弱な国にとって、極めて重要な機関でもあります。

これから2035年まで世界のエネルギー需要は、中国、インド、東南アジア、中東などで増加し、再生可能エネルギーと原子力のシェアが大幅に伸びたとしても、化石燃料依存度は、過去25年間の約82%と比較し7%程度しか下がらないと予測され、世界のエネルギー市場は化石燃料を奪い合うことになると予想されます。

一方、シェール革命によって、アメリカはサウジアラビアを抜いて世界一の石油生産国になり、中東の存在が重要ではなくなることから、アメリカが中東に関与する割合も低くなります。中でも、日本に輸入される石油の85%が通行し、世界の約2割の石油と約3割の天然ガスが通行しているホルムズ海峡をイランが封鎖すると、石油、天然ガスともに世界で供給不足となります。またこれまでイランを抑制してきたアメリカの力が弱まると、日本は非常事態に対して果たして自衛することができるでしょうか。IEAの石油備蓄量は16億バーレルありますが、ホルムズ海峡封鎖に対応するには十分ではありません。また日本は現在、貿易収支が赤字になっており、石油不足による原価高騰によっては、経常収支も赤字になり、財政への信頼が崩壊、円が暴落、資本が海外へ逃避と、日本経済の危機を招くことになるでしょう。

隣国中国では、石油と天然ガスの43%がホルムズ海峡を通る海路を持つ一方で、カザフスタン、ミャンマーなどとパイプラインを結び、陸路で石油やガスを輸入する手はずを整えています。領土、海域を巡る中国との摩擦は、パイプラインを持たない日本にとってエネルギーセキュリティの面からも重要課題のひとつになっています。


輸入コスト抑制の鍵は、多様な国との多様な方法による交渉

輸入価格の上昇抑制は、日本経済にとって最大の課題になりますが、たとえば天然ガスの価格を下げるためには、エネルギー源、輸入ルート、パイプラインの敷設などの多様化による対策と、ロシアを抜いて世界一の天然ガス生産国になる想定のアメリカからの輸入が上げられます。ロシアはこれまでパイプラインを通じてヨーロッパに天然ガスを輸出してきましたが、ヨーロッパが中東からのガスで充足してしまうと、ロシアは中国と交渉を活発化し、価格面で折り合いがつかなければ、さらに日本、韓国など、高くても買ってくれそうな国に売ろうと考えます。日本は、交渉時に優位になるように、多様な国と、多様な買い方という交渉カードを用意することが大切です。

石油、天然ガスなど既存のエネルギーのみならず、最近注目されているのが、燃やしてもCO2が出ない水素エネルギーです。天然ガス、石炭産出国で大量に生まれる副生水素をトルエンに結びつけて水素化し、さらに液体化させると長距離輸送と貯蔵が可能です。また南海トラフで掘削実験に成功したメタンハイドレートは、実用化までに15〜20年を要するかもしれませんが、多様化のひとつとして有効な手段だと思います。

OECD(経済開発協力機構)加盟34カ国では、地球温暖化対策重視のため、今後は再生可能エネルギーが増加すると見られていますが、発電コストが他と比べて高いという難点があります。日本の電源構成については、原子力は2020年までに20%に回復、しかし2035年までには経年による廃炉により15%まで減少すると仮定され、代替策は、再生可能エネルギーの3倍増と天然ガスの高い価格による輸入の継続、さらにはエネルギーの効率化となるだろうとIEAは推測しています。国の競争力に差をつけるエネルギーコスト問題を考えると、今後、アメリカは多消費エネルギーの製造業で優位に立ち続け、また人件費が安い新興国でも市場が拡大することにより、日本のみならずヨーロッパでも製造業の輸出市場が大幅に失われることになるでしょう。



原子力は、なぜ日本のエネルギーセキュリティに必要なのか

日本にとって、エネルギーの自給率を上げ、コストを下げるために必要になってくるのが、原子力です。今後、中国、ベトナムや東ヨーロッパにおいて、原発が増加していきますが、先進技術を持たない国における開発や維持は危険を伴うことから、国際会議においても、日本に対し今後も原発継続と、福島第一原子力発電所の事故による教訓を世界でシェアできるように求める声を耳にしています。福島第一原子力発電所と同じ条件で被災した福島第二、女川原子力発電所、東海第二発電所が過酷事故に至らなかった理由を、国内のすべての電力会社が情報を共有しながら学び、安全条件を満たすことができれば、再稼働は可能だと思います。しかし、9.11後に、アメリカの原子力規制委員会が行ったテロによる全電源喪失対処のアドバイスを、日本側が聞き入れて事前に対策を施していれば、人災ともいえる過酷事故は起きなかったと考えると、今後、安全規制の透明性を確保し、独立型の規制委員会や、また最悪の緊急事態発生時に対応可能な組織の設立が必須です。

1986年にアメリカのアルゴンヌ国立研究所において、全電源が喪失しても自動的に停止する統合型高速炉(Integral Fast Reactor)の実験が行われました。この高速炉は、軽水炉では数十万年かかる高レベル放射性廃棄物の処理が、300年余りで天然ウラン並みの放射能レベルに下げられる電解型乾式再処理(Pyroprocessing)を組み合わせた、サイクル統合施設になっています。しかも使用済み核燃料を外部へ移動させたり、貯蔵する必要もありません。商業的な再処理が認可されていない韓国では、アメリカに対してIFRによる再処理導入の認可交渉を進めています。原子力は今や、アジア全体のパワーバランスを変える存在にもなっているのです。

世界各国のエネルギー構成比を比較してみると、たとえばヨーロッパでは、スウェーデンは水力と原子力だけ、ドイツは石炭、風力、太陽光、原子力でバランス、フランスは原子力のシェアが圧倒的に高い、というように各国さまざまで、一つの国としては脆弱かもしれませんが、パイプライン、電力網でつながっているヨーロッパは、エネルギーの集団的安全保障ができています。今後はさらに北アフリカ、中東と電力線をつなぎ、イスラム教国とキリスト教国とを結ぶことで、エネルギーの「平和利用」を図ろうとしています。

アジア地域においても、ゴビ砂漠で行う風力、太陽光発電を電力線で日本まで結び、アジア全体の電力網構築という「アジアスーパーグリッド構想」を孫正義氏が提言していますが、天然ガスについては、東京大学名誉教授の平田氏が考えた「北東アジアガスパイプライン構想」が、中国では着実に実現化されようとしています。中国がモンゴルや東南アジアとネットワークを進めていく一方で、日本は諸外国と孤立したままでエネルギー安全保障ができるのでしょうか。そしてまた、以前からIEAが提言してきたことですが、外国とパイプラインや電力の系統線をつなげたとしても、日本国内に天然ガスのパイプラインが整備されておらず、東西で異なる電圧といった地域間の連動が十分ではないという問題も抱えています。

安全な再稼働は最重要です。しかし再稼働させないことによって、日本のエネルギーセキュリティはそれ以上の大きなリスクを抱えることになるかもしれません。世界のエネルギーに関する動きを見極めながら、エネルギーバランスにおける原子力の割合を考え、さらに、アジア各国とともにエネルギーグリットを構築していくための強靭な外交政策も、日本のエネルギー安全保障にとって必要だと考えています。


田中伸男(たなか のぶお)氏プロフィール

日本エネルギー経済研究所特別顧問/東京大学教授/国際エネルギー機関(IEA)前事務局長
1950年生まれ。東京大学経済学部卒業後、73年に通商産業省入省。87年、資源エネルギー庁企画官、1991年には経済協力開発機構科学技術工業局長就任。通商政策局総務課長、外務省在米国日本国大使館公使、OECD科学技術産業局長などを経て、2007年9月にIEA事務局長就任。11年8月、事務局長を退任し、同年9月より日本エネルギー経済研究所特別顧問着任。13年4月より東京大学公共政策大学院教授。

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