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中部エナジー探検隊

《日 時》
2014年1月20日(月)14:00〜16:00
《会 場》
名城大学名駅サテライト(名古屋市中村区名駅3-26-8 KDX名古屋駅前ビル)
《テーマ》
「風評被害って? 〜なぜわれわれはまどわされるのか〜」
福島第一原子力発電所の事故後、現地の復興を応援する声が上がる一方で、被災地への風評被害が起こり、また日本全国でも風評によって惑わされる事例が多くありました。社会のあらゆる事象において、メディアの影響により、私たちは風評被害の被害者になる可能性と、逆に加害者になる可能性もあるのではないかという水尾衣里氏(名城大学人間学部教授・工学博士)による問いかけを受け、小島正美氏(毎日新聞社生活報道部編集委員)がメディアに在籍する立場から詳しく解説されたあと、風評被害を拡散する協力者にならずにすむための解決策を考える対談が行われました。

対談 風評被害って? 〜なぜわれわれは惑わされるのか〜風評はニュースによって作られる

水尾 事実無根の情報によって企業や個人などが受ける経済的な損失や、あるいは傷つかなくてもいい人たちを精神的に追いつめてしまうような、心ない風評被害のニュースを目にしたり耳にするたびに、教育制度も水準も高いといわれている日本で、なぜこういうことが起きてしまうのか、恥ずべきことではないかと思います。どうしたら風評被害を出さない、受けない社会にできるのかについて、学生たちと一緒に考えてみたのですが、情報を出す側のマスコミと、受け取る側の私たち双方に問題があるのではないかと思うのです。

小島 記事を書いている私が「メディアを疑った方がいいですよ」と言ってしまうと、書いた記事はすべてウソなのかと思われてしまいそうですが、読者の皆さんには距離を置いて記事を読んでいただきたいと思っています。風評はニュースによって作られるといっても過言ではありません。

水尾 私たちはつい、新聞に書かれているから、テレビで報道されているから正しいと信じてしまうところがありますね。

小島 メディアはどうしても得た情報の一部しか伝えられません。というのは、一つの見方とその反対の見解を組み入れて全体像を語ろうとすると、論文のように面白味に欠けてしまうからです。また新聞記者は物事をネガティブにとらえるように訓練されているともいえます。メディアのゆがみを補う方法のひとつとして、新聞記事の何がどのように間違っているかを教えてくれる、「GOHOOマスコミ誤報検証・報道被害救済サイト」という、弁護士の有志が立ち上げた日本報道検証機構が行っている活動があります。このサイトを見ると、日々いかに多くの間違った記事が流布しているかがわかります。そして、誤報というのは一度、流れ出してしまうと、過ちに気づいて修正する機会が与えられたとしても、拡散した情報は止めようがないのです。

水尾 テレビの場合、たとえば民放なら、番組のスポンサーへの配慮などから、情報にバイアスがかかっているかもしれないと推測したりもしますが、NHKはそういうことはないと一般的に思われていますよね。

小島 一般的な事件の報道ニュースについてはそれほど偏りがないでしょうけれど、ストーリー性を持たせた番組は、ドキュメンタリーであっても、ストーリーの着地点を考えたバイアスがかかっているといえるでしょう。テレビにしても新聞にしろ、面白いこと、珍しいことを取り上げ、物語性を持たせて情報を流布するために、良い話より不安を煽るような怖い話が多く、またとりわけテレビの場合は、インパクトのある特殊な映像を流した方が、高い視聴率にも結びつくわけです。そしてそこには、科学的な根拠がないことも多々あります。


メディアが取り上げやすいのは、「声の大きな」意見

水尾 福島第一原子力発電所の事故後には、被災地の一日も早い復興を願わない人はいなかったはずなのに、復興の妨げになるような報道は実際にありましたね。

小島 福島の農産物生産者は、一人でも多くの人に福島産を買って食べてほしいと願っています。国の基準値を超えたものは市場に出ていないので食べても安心なものばかりですから、メディアが積極的に取材して取り上げればいいのですが、問題なのは、応援記事に対して、「絶対安全かどうか保障もないのに、なぜ福島産を勧めるのか」といった言いがかりをつけてくる人がいることです。新聞は、生産者も応援したいし、一方、反原発の声にも配慮しなければならない苦しい立場に置かれています。

水尾 ほとんどのメディアは声の大きい意見を取りあげるような気がします。

小島 なぜなら黙っている人は世の中を動かすことはできないからです。アクションを起こしニュースになれば、社会に対する影響力を持つことができます。また、新聞記事とは、書く記者と取材させてもらった人との共同作品だと思いますが、ただし、専門家からコメントを頂く時に、記者が考えているストーリーから外れた場合は、コメントの採用を控えることもあるわけなので、共同作品にも記者の主観性が反映されていることを知ってほしいですね。

水尾 私は、テレビ番組等でコメントを求められたことがありますが、今は生放送ならお引き受けしますが、録画はお断りします。なぜかというと、録画の場合、コメントは編集されて、正確な意図が伝わらなかった経験があるからです。新聞のコメントは、記事が掲載される前にチェックすることができますか?

小島 信頼関係が崩れてしまうので、基本的にはコメントを頂いた相手に確認を取りますが、社会面のニュースは、緊急事件ですと、取材から掲載までの時間が短いために、チェックは難しいかと思います。新聞の記事は基本的に、取材して原稿を書いている記者の主観が入っていると考えてください。さらに、書いた原稿をチェックするデスクの判断、そして新聞社の方針も反映されています。


真実を見極める冷静な目を持てば、風評=人災を食い止められる

水尾 3.11以後の2012年4月から、国は被ばく線量の根拠を年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに引き下げ、放射性セシウムの食品の安全基準値を厳しくすることで、国民を安心させようという意図があったと思いますが、私はむしろ基準値を上げて、被災地に配慮した方がよかったと思うのですが。

小島 同感ですね。放射線審議会でも学者たちは反対したにもかかわらず、国民の「安心のために」という国側の考えで設定されました。

水尾 国はねじれた形で国民に迎合してしまったわけですよね。また、小さな子どものいるお母さんたちは、子どもへの愛情から、有効性の裏付けもないニセの情報に振り回されてしまったこともあると思います。

小島 科学的情報については、子宮頸ガン予防ワクチン接種のように、子どもの将来のリスクを回避するためにお母さんたちが取った行動が裏目に出て、最近、副作用が問題になっています。ガンになるリスクと、副作用のリスク、どちらもあるわけですが、副作用の発覚後は、新聞の記事などでは副作用に注目しすぎて、ガンの危険についての記事の割合が減ってしまったような気もします。また、健康食品や美容の記事や広告を見て、つい効果を信じてしまいがちですが、RCT(無作為化比較試験)で実証されたものであれば、信頼することができると思います。それから、遺伝子組み換え作物を嫌う日本人は、アメリカで組み換えをしていないトウモロコシが、実は農薬を大量散布したものだということを知った方がよいでしょうね。組み換え作物の正確な事実を記事に書こうとしても、記者たちが現状を正しく知らないため、ほとんど報道されていません。

水尾 私たちは一体、何を信じたらいいのでしょうか?

小島 私の場合は不確かな情報については、いろいろな分野の専門家の意見を聞いて判断しています。しかし先ほども言いましたように、メディア各社で社の方針などのフィルターが掛けられてしまい、一方向の意見しか出すことができなかったり、あるいは記事そのものが葬られることもあります。また掲載後に苦情を受けて、記者はその後、真実から目をそむけてしまうこともあります。

水尾 学者も、メディアの意図にそぐわないコメントを言うと採用されませんから、自分の意見を二度とメディアで発表する場を失われてしまう危険があります。

小島 世の中で反原発の気運が強い時に、原発推進の学者の意見と反原発の学者の意見を新聞に両方掲載すると、仮に科学的な根拠がないものであっても、人気がある学者でわかりやすくインパクトがあるコメントだと、そちらだけが注目されてしまうこともあります。また、ヨーロッパでは太陽光発電の増加で脱原発が着々と進んでいるとよくいわれますが、ドイツではすでに太陽光発電は採算的には破たんしていることを知っています。ですから、もし根拠のある反対論拠を出してアクションを起こせる専門家が、記者たちを集めて勉強会をするなどの行動を根気よく続けてくれれば、記者も必ず取材に行って学ぶと思います。ニュースで作られた風評は、結局ニュースで打ち消すしかない、ということです。一般の人もニュースがおかしいと思ったら、黙ったままで放置せず発言をお願いしたいのです。

水尾 メディアからの情報は、一つの情報に惑わされず、記者によるバイアスまで考慮しながら判断するということは、今すぐにでも実践できそうですね。いくつもの情報から正しい情報を選択することで、人災である風評を食い止められるということがよくわかりました。3.11後の激しい風評被害は沈静化しつつあるように思えます。そして現在は、太陽光など自然エネルギーが本当に原発の代替になりうるのか、ようやくみんなで考え始めていますが、普及促進が積極的に行われていることが、正しいことなのか、課題は何かなど、正確な情報による記事が作られ、私たちの元に届くようになってほしいですね。


小島 正美(こじま まさみ)氏プロフィール

毎日新聞社生活報道部編集委員
愛知県生まれ。愛知県立大学卒業。1974年、毎日新聞社入社。サンデー毎日や長野支局、松本支局を経て、87年東京本社生活家庭部、95年千葉支局次長、97年から現職。2000年からは東京理科大学非常勤講師も務める。主な担当は食の安全、環境、健康問題。主な著書は『誤解だらけの危ない話』『誤解だらけの放射能ニュース』(エネルギーフォーラム)、『アルツハイマー病の誤解』(リヨン社)

水尾  衣里(みずお えり)氏プロフィール

名城大学人間学部人間学科教授・工学博士
専門は建築、都市計画、環境学。国土交通省独立行政法人評価委員会・日本道路保有債務返済機構分科会、国土交通省中部地方有識者懇談会、愛知県原子力災害計画策定検討委員会などの行政機関や各種団体に委員として就任し、まちづくりや地域振興、環境への配慮などに意見を述べている。

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