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松江エネルギー研究会

《日 時》
2016年12月14日(水)13:30〜16:00
《会 場》
サンラポーむらくも(松江市殿町369番地)
《テーマ》
地球温暖化・エネルギー・原子力 みんなで考えようエネルギーのこと
スポーツジャーナリストの増田明美氏(元陸上長距離選手)は現在、スポーツのみならず社会の様々な問題に視野を広げて活動中です。また秋庭悦子氏(NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長)は、消費者目線でエネルギーについて考える活動を続けられ、原子力委員会委員も務められました。増田氏には今夏開催されたリオデジャネイロ・オリンピックを一つの切り口に、秋庭氏には世界と日本のエネルギーについて、それぞれお話しいただいた後、石原孝子氏(松江エネルギー研究会代表)を交えて鼎談が行われました。

講演1
増田明美氏

エネルギーとマラソンの関係といえば、マラソンは体内の糖質や脂肪をエネルギーとして燃焼させる有酸素運動。私は今も毎夜1時間は走っていますが、東京の街は明かりに煌々と照らされ、たくさんの電気エネルギーが使われているんですね。また仕事で地方都市や海外に行った時には、その土地の景観や特色を走りながら足と目で味わう「観光ランニング」を楽しんでいます。オリンピック解説者としてリオデジャネイロに赴いた時、観光ランニングをしていて日本人とブラジル人の大きな違いに気づかされました。コパカバーナ海岸沿いの道には500mおきに筋力トレーニング用の器具が設置してあり、現地の人たちは鍛えた筋肉を自慢するように男女とも裸に近いスタイルで走っているのです。日本人も少し見習って、筋肉をつけるようにすれば、健康寿命を延ばせるのではないかと感じました。

今回のオリンピックでメダルを獲得した日本人選手の中でも、男子400mリレーの選手たちには感動させられました。決勝3日前のこと、山縣、桐生、ケンブリッジ飛鳥の3選手に偶然スタジアムで会いました。個人としてはライバルだけれど、飯塚選手の個人種目の応援に来たというのです。彼らは、相手の力を認め合い応援し、その上で一丸となってチームの能力を高める理想的な関係を築き上げ、トラック種目では日本男子として初の銀メダルを獲得しました。箱根駅伝もまたチームで戦う陸上競技です。いろいろなチームの取材に行くと、とにかく明るいチームが最後は勝つんですね。試合前の練習でも私の選手時代には考えられないほど、笑いやおしゃべりで盛り上がっています。その理由を監督に聞いてみると、緊張でこわばったままの筋肉で走ると怪我をしやすいし、きつい練習ばかりだとすぐに辞めてしまうから、各選手の個性を尊重しつつ、ミーティングなどでは話しやすいムード作りをしており、それが何より大事だと、話してくれました。スポーツの取材を通じて、何事においても、技術力の向上のみならずコミュニケーションや人間力が大切であると感じさせられます。  

オリンピック中継は多くの国でテレビ観戦されたと思いますが、電気はもちろんガス、水道も通っていない地域が世界にはたくさんあります。国際NGOのボランティアで訪れたラオスの山岳地帯では、女の子が昼間は農作業や谷川の水汲みに駆り出され、夜の限られた時間だけランプの明かりで勉強をして、看護師を目指していました。スイッチひとつで使えてしまうせいか、日本では電気のありがたみを感じにくいのですが、他にも当たり前に思っていることが、実は当たり前ではない人々がいることに思いを巡らせられたらいいなと思っています。


講演2 秋庭悦子氏

世界の人口はこの20年の間に1.3倍増加しました。今後もアジア、アフリカで増加が予測され、それに伴いエネルギー消費量も増加していきます。特に電気は先進国では暮らしに欠かせないものとして、隅々まで行き渡っています。電気があれば、水や食料、医療などの面でも衛生的な暮らしを営むことができるため、電気の普及は文化的なバロメーターになっています。オリンピックが開催されたブラジルと日本を比較すると、人口は日本の約2倍、国土面積は約22.5倍あるのに、ブラジル人一人当たりの電力消費量は日本人の1/2しかありません。

世界の国々は、それぞれの事情に応じた手法、資源で電気をつくっています。ブラジルはアマゾン川などを利用した水力による発電が多くを占め、一方日本では、3.11以降、原子力発電の停止により大きな変化を余儀なくされました。国のエネルギー政策にもありますが、私たちがエネルギーを考えるときに大事なことは、まず安全Safety、そしていつでも電気が使える安定供給Energy Security、コストが安く誰でも使える経済効率Economic Efficiency、CO2排出が少ない環境適合Environmentという、S+3Eが基本です。しかし現在、安定供給については、石油、石炭、天然ガスの輸入に依存しているため、エネルギー自給率はわずか6%でOECD加盟国34カ国の中で2番目に低い水準です。特に石油の輸入先は8割以上を中東に依存、資源調達が滞るリスクを常に抱えています。経済効率の面でも、後進国の経済成長などによる資源獲得競争の激化、そして紛争によっても価格の乱高下が発生しやすく、火力発電増加による輸入コストの増加に加え再エネ導入に伴う賦課金増加のため、電気料金はすでに上昇しており、今後もさらに上昇する可能性があります。

エネルギー自給率向上を再エネに期待する世論は強くありますが、太陽光、風力の不安定な発電量調整には、現段階の技術力ではバックアップとしての火力発電が不可欠です。このため、二重のコストがかかる上に、CO2排出を増加させることもあります。現在、日本のCO2排出量は、大国の中国、アメリカ、インドやロシアに次いで世界で5番目に多くなっています。ところで、脱原発宣言をして再エネを最も導入しているドイツでは、固定価格買取制度に基づく再エネ賦課金が高騰したため、制度そのものを廃止する予定であること、そして現在も原子力が電源構成の15%を占めていることは、一般的に知られていません。S+3Eをすべて満たす電源はないのですから、私たちは将来世代のために、どのような社会を目指していくのかよく考え、資源のない国としてのエネルギー選択をしていくべきではないかと考えています。  


鼎談

石原 増田さん、秋庭さん、ともに大学で教鞭をとられていますが、いまどきの学生はどのような印象ですか?

増田 おとなしいですね。海外旅行にも行かないなど内向き志向になっている、とよく言われるのも頷けます。

秋庭 授業で行うワークショップでは、発言する声は小さくて、議論は苦手のようです。ただ、見学など何かに触れることで変わってきますね。

石原 私も学生を連れて発電所など現場見学に行くのですが、放射線の知識などまったく持たず、見学すると相当驚いた様子で、終了後には「意識が変わりました」と言ってくれるのが一番嬉しいです。

秋庭 講義では原子力発電所で働いている方に話を聞く機会を設けたり、実際に放射線を計測したりします。また、夏休みには青森県六ヶ所村で青森県の大学生たちと交流会を行っています。驚いたことには、青森県の大学生たちですら、六ヶ所村に何があるのか知らない人もいました。しかし見学によって興味を持つようになったと言っていました。

増田 実際に現場に行って、見て感じて、人は変わるものですね。私もリオに行く前は、マスコミの情報で治安が良くない街だと思っていたので、覚悟して行ってみたところ、警備が厳重だったせいかもしれませんが、危険には感じられませんでした。危険はニュースになりやすく、安全というのはニュースになりにくいですね。

石原 今の学生は色々なアンテナを持ってはいるけれど、興味の範囲は限られています。電気に関しては、生まれた時から空気のようにあるものだから意識が低く、例えば一人暮らしの学生の多くは、最新の省エネタイプの冷蔵庫の方が一人用のコンパクトな古い冷蔵庫より消費電力が少なく電気代が安いということを知りませんでした。
それから、3.11の前に原子力発電所に小学生を連れて行ったところ、厳重警備の物々しさを怖がっていましたが、逆に言えばそれほど厳戒だから安全だとも言えますよね。

秋庭 浜岡原子力発電所に見学に行った時、発電所の目の前の公園で保育園児たちを遊ばせているのを目にして、立地地域では地元の人と発電所が共生していると改めて感じました。

増田 子供達にはまず電気がない不便な生活を体験してもらわないと、電気の大切さは実感できないかもしれません。西アフリカ、トーゴの山村にある保健センターには、寄付された冷蔵庫はありましたが、電気が通っていない。だから毒ヘビ対策のワクチンを保存できないので、噛まれると遠くまで運ばれるうちに命を落とすという、電気がないために生命の危機にさらされている現実があります。

石原 家庭や学校、職場だけではなく、様々な場所で使われている電気の役割をきちんと理解しておく必要がありますね。

秋庭 社会に出る前の大学生たちには、一般知識として、日本のエネルギー事情を知ってもらい、世界の中で日本がどのようなエネルギー状況に置かれているのか、考えられるようにと努めています。そしてまた、箱根駅伝の時に選手の長所を生かして走る順番を決めているように、それぞれの電源の長所を生かしてミックスして使うことが必要だということも学んで欲しいと思っています。

増田 若い人たちが電気やエネルギーについて、もっと関心を持てるように、身近な電気料金の話から始める「電気教育」は是非必要ですね。

石原 今日、お集まりの皆さんも、家族や近隣の人たちと電気についてもっと話をするように心がけていただき、流されてくる情報をただ受け止めるだけではなく、みんなで考えていけたらいいと思います。


増田明美(ますだ あけみ)氏プロフィール

スポーツジャーナリスト
1964年千葉県生まれ。私立成田高校在学中、長距離種目で次々に日本記録を樹立する。82年にマラソンで日本最高新記録を作り、84年のロス五輪ではメダルを期待されたが、無念の途中棄権。92年に引退するまでの13年間に残した記録は日本最高記録12回、世界最高記録2回更新。現在はスポーツジャーナリストとして執筆活動・マラソン中継の解説に携わる他、ナレーションなどでも活動中。大阪芸術大学芸術計画学科教授も務める。


秋庭悦子(あきば えつこ)氏プロフィール

NPO法人あすかエネルギーフォーラム理事長
1948年石川県生まれ。早稲田大学商学部卒業後、大手航空会社勤務を経て、89年、消費生活アドバイザー資格取得。電気事業連合会広報部アドバイザリースタッフとして勤務。1998年~2009年、社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任理事。2001年、あすかエネルギーフォーラムを設立し、理事長に就任。総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会、原子力部会、原子力安全・保安部、石油分科会委員などを歴任。2010年より14年まで内閣府原子力委員会委員。十文字学園女子大学講師も務める。

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