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関西大学社会安全学部

《日 時》
2015年7月8日(水) 9:00〜10:30
《会 場》
関西大学高槻ミューズキャンパス ミューズホール(大阪府高槻市白梅町7番1号)
これからの世代を担う若い人たちは、日本のエネルギー政策に対して、どのような思いを抱いているのでしょうか。ETTメンバーの槇村久子氏が講師を務める関西大学社会安全学部「安心と安全の社会学」「リスク社会学」の受講生を対象にして、若い世代が自分たちで考え行動するための基準になるデータや考え方の指針を、中上英俊氏((株)住環境計画研究所代表取締役会長)にお話いただきました。

講演
次世代が生きる社会のエネルギーのあり方を考える

快適な暮らしの追求が生んだエネルギー消費の増加

きょうお集りの皆さんは、生まれた時からあらゆる電化製品が揃っていた豊かな世代だと思います。現在、テレビは一家に2、3台、エアコンは平均して3台あるといわれているように、電気による便利な暮らしは、当たり前になっているでしょう。しかし1970年代には、ほとんどの家庭にエアコンはなく、従って、エネルギー消費は今よりずっと少なくて済みました。エネルギー消費の3つの部門とは「産業」「運輸」「民生」ですが、商業や業務にかかわるものと家庭にかかわるものは、一緒に「民生」部門に含まれています。グラフを見ると、この40年間で、民生部門の増加が大きいことがわかると思いますが、この部門のエネルギー消費を効率的にしていかに抑制するかがこれからの課題になっています。


わが国の部門別エネルギー消費の推移


家庭におけるエネルギー消費をエネルギー種別に見ていくと、消費量でも光熱費支出でも、電気が半分前後を占めていることがわかります。用途別の消費量では、給湯、暖冷房、照明・家電製品等がそれぞれ約1/3ずつになっています。また光熱費支出で暖房は18%を占めていますが、これはあくまで全国平均であり、北海道では倍近くの支出になっています。昔から北海道を除く日本では部屋を暖めるという習慣はなく、火鉢やこたつを使って体の一部を暖めたり、厚い布団をかけて暖を取っていました。一方、欧米では部屋全体を暖めるセントラルヒーティングが主流です。その理由は、日本と比べて凍え死ぬ危険があるほどの寒さだからです。シンプルな灯油ストーブを使っていた日本では、その後ファンヒーターが使用されるようになり、現在の主流はエアコンで、一家につき平均2.7台所有しています。さらにファンヒーターも1.3台保有しているため、一家に4台もの暖房器具が揃っており、快適な暮らしになった分、エネルギーに依存しないと生きていけないようになったといえるでしょう。


世帯当たりエネルギー消費原単位の構成比 と 世帯当たり年間光熱費支出の構成比


欧米式バスタブは、中で体を洗い、入るたびにお湯を捨てて、さらにシャワーで洗い流していますよね。でも日本では、バスタブのお湯を汲みバスタブの外で体を洗い、お湯は冷めたら沸かし直すという風習になっています。このように節水、省エネに優れた入浴方法を昔から行っている日本人は、会社等で昼休みに一斉に照明等の電気を切ることも当たり前になっており、昼休み一時間で、原発4基分の電力が節電されていることを知れば、これからの省エネ行動のヒントにもなると思います。また、日本人が発明したLED電球は、価格は高いですが省エネ効果が高く、また寿命が5〜10年と長いため、省資源になります。


エネルギー資源を輸入に頼る日本が取るべきエネルギー政策とは

これからの日本は、人口減少と少子高齢化の加速により、かつて経験したことのない社会になると予想されます。そしてエネルギーに関しては、さまざまな業種の事業者が電気を売ることができる電力自由化が、すでに工場や大型商業施設などでは行われてきましたが、いよいよ来年から家庭や小規模の店舗でも行われます。再来年にはガスの自由化も始まり、私たち自身でエネルギー供給会社を選択できるようになります。その代わり、たとえば大規模停電が起こっても復旧に手間取ったり、あるいは悪質な業者とのトラブルも想定され、エネルギー供給の競争社会になると同時に、消費者も業者選択の試行錯誤をしなければならないわけです。

ところで国が考えるエネルギー政策とは、どのように作られているのでしょうか。たとえば1970年代には、それまで石油に依存してきた日本が、オイルショックによって、石油を、石炭、天然ガス、原子力に代替するという大きな変革をしました。また、2010年には、地球温暖化問題解決のため、原子力が電源に占める割合を2030年に53%にするという政策が発表されました。しかし2011年3月に起こった福島第一原子力発電所の事故によって、日本中の原子力発電所が停止、今は、化石燃料依存度が高まり、震災以前でさえエネルギー自給率が19%しかなかった日本は、さらに6%にまで低下し、先進国の中では最低レベルになっています。一方で、それまでマスコミなどで盛んに取り上げられていた温暖化問題は、すっかり影をひそめています。


OECD諸国の一次エネルギー自給率比較(2012年)


昨年4月に、安倍政権による新しいエネルギー基本政策が発表され、これを受けて今年3月に発表された2030年の電源構成比率において、再生可能エネルギーが22〜24%、原子力は「重要なベースロード電源」として位置づけされ、ほぼ同程度の20〜22%になっています。エネルギー政策の基本的視点には、安全性の確保、自給率の改善、経済効率性、環境への適合があります。4つすべてを成立させるためにはどうしたらいいのでしょうか。3.11以降、日本のエネルギー問題は感情的に議論されていますが、日本の地勢や、エネルギー資源の輸入依存という国情、また世界情勢を考えた上で、冷静に議論すべきです。とにかく、2010年に電源占有率が26%だった原子力を、どの程度の時間をかけて、どこまで減らすべきか、低減分はどのエネルギーで補っていくのかという課題の解決はきわめて困難です。それでも今年12月にパリで開催される国連気候変動会議COP21において、日本としてCO2削減の指標を示さなければなりません。


震災後のエネルギー政策 


住宅等の省エネ化がもたらすライフスタイルと産業活動の構造転換

エネルギー政策では、供給する側でエネルギーの構成比を考え、と同時に需要側で省エネの取り組みを強化と考えていますが、私は、需要サイドが省エネ型・節電型需要構造の実現を図り、その後で供給するエネルギーをどうすべきか考える方が順当ではないかと思っています。なぜなら、電源構成を変えるというようなエネルギーの構造改革は、理論上は簡単でも、計画、建設、そして稼働するまで、20〜30年と長い時間がかかるからです。水力発電が日本の電力構成の6割を占めていた1960年代と比べると、現在の総発電電力量は約10倍になっていますが、震災前までの約半世紀をかけて、化石燃料と原子力とで、構成比の約90%を占めるようにまで変えて来たのです。今後は、太陽光や風力といった再エネをもっと増やせばいいといっても、たとえばアメリカのように広大な土地で、なおかつ豊富な日射量ならば太陽光発電も有効ですが、現在のように発電効率の低い再エネでは、大量のエネルギー供給は望めません。もちろん、日本は再エネ普及が遅れていることは確かですから、増やす方向へ向かうのは、エネルギーセキュリティ、省エネ・省CO2の観点からも重要になっていきます。 


再生可能エネルギー導入量の国際比較(発電電力量ベース)


省エネとは本来、我慢を強いるものではなく、快適さ、利便性を維持しながら、より少ないエネルギー消費で目的を達成することです。エネルギー使用の合理化に関する法律=省エネ法は1979年に施行され、以来、自動車や家電では、最も優れた製品の水準に基準を合わせたトップランナー制度が導入されています。一方、欧米においては、暖房の効率を上げるために、新築の建築物の省エネ性能に関して法的な拘束力のある基準にしています。住宅に関してはまた、スマートメーター導入により各家庭で使用する電力が見えるようになり、スマートハウスと呼ばれているのは、エネルギーが賢く使用され制御される家の仕組みです。しかし、建築時にはかなりのコスト高になるため、導入推進がはかどらないという課題もあります。いずれにせよ、住宅や建築物の省エネの見直しは、私たちのライフスタイルや産業活動の大きな構造転換の糸口になっていきます。


ネルギー利用料と利便性・快適性の関係


身近な省エネといえば、使っていない電化製品のプラグを抜いて待機電力を削るというのは皆さんご存知だと思いますが、エネルギーの無駄遣いはまだたくさんあると思います。省エネの主役は消費者である私たちです。海外に行くとよくわかるように、日本ほど家電製品の種類が細分化され製品数の多い国はありません。たとえば、テレビのリモコン。たくさんついているボタンの中で、一度も使ったことがないボタンがあると思いますが、メーカーが使い手の行動をチェックしていないために、機能を付加しすぎているのです。つまり、まず消費者目線に立たなければ、エネルギー問題も解決しないと思います。欧米ではスマートハウスではなく、スマートホームと呼んでおり、家に機能をつけたら後はお任せではなく、そこに住む人も一緒に考えながら、スマートな(=賢い)暮らしをしていくということなんですね。  


中上英俊(なかがみ ひでとし)氏プロフィール

(株)住環境計画研究所代表取締役会長
1945年岡山県生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築学専門課程博士課程終了後、住環境計画研究所を創設。現在、日本学術会議連携会員、東京工業大学総合研究院ソリューション研究機構特任教授などを兼務。経済産業省総合資源エネルギー調査会、環境省中央環境審議会、国土交通省社会資本整備審議会等、各種委員としても活躍し、現在は、省エネルギー小委員会委員長を務める。

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