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新潟大学工学部(化学システム工学プログラム)

《日 時》
2019年9月17日(火)
《講 義》
「エネルギーの有効利用と化学工学の役割」
新潟大学自然科学系工学部 清水忠明教授
《見学先》
東京電力柏崎刈羽原子力発電所
《テーマ》
資源・エネルギーに関する講演、見学を通して、
工学と社会の関わりや専門職技術者の役割を学ぶ

新潟大学工学部化学システム工学プログラムの2年生および3年生約80名を対象に、東京電力柏崎刈羽原子力発電所を見学する学外研修が行われました。化学技術者・研究者に必要な化学、エネルギー、環境などを日々学ぶ学生たちが、講義を受けた後、実際にエネルギーをつくる現場を見る機会に同行しました。

エネルギーの有効利用と化学工学の役割とは

午前9時過ぎ、新潟大学工学部の講義室に学生たちが集合しました。最初に新潟大学名誉教授 北山淑江氏より、「電気は人間の命に関わるもの。原子力発電所の見学を通して、エネルギーや環境問題にどう対処していけば良いか、考える機会にしてほしい」と挨拶がありました。その後、新潟大学自然科学系工学部 清水忠明教授による「エネルギーの有効利用と化学工学の役割」と題した講義が約1時間半行われました。

エネルギーは、人間の全ての活動に関わっています。しかし日本はエネルギー資源が無い国で、約9割を輸入に頼っています。残りの1割の中のバイオマスも、多くの部分を外国から輸入している程です。純国産エネルギーの代表は水力ですが、ここ40年程は増えていません。いかに日本のエネルギーが脆弱で、化石燃料に依存しているかという現状の中、CO2対策を考えると化石燃料もCO2もなるべく減らしたいところですが、実現できるでしょうか?

エネルギーの有効利用には、熱力学法則の理解が欠かせません。第1法則は「いかにエネルギー損失を減らすか」で、例えば水を温めて風呂桶に入れたら冷めないうちに入ることです。第2法則は、動力を使い低温から高温へ熱を移動させ、大きな熱エネルギーとして利用する「ヒートポンプ」をなどがその例ですが、熱移動すると温度差が発生するため、理想的な効率と現実にズレが生じます。一方、温度差が少ないと熱移動させるには大きな装置が必要になります。ケミカルエンジニアとしては「エネルギー効率を向上させるが熱移動が遅い装置」か、「熱移動は速いがコストがかかる装置」かといった、相反する要求を満たすバランスの取れた設計が必要になるのです。なお、ボイラーを使った火力発電も原子力発電も、エネルギーの高効率利用としての原理は同じで、高圧蒸気でタービンを回転させて発電します。今回見学する原子力発電所の原子炉は沸騰水型ですから、原子炉の中で蒸気を発生させ、直接タービンに送るしくみになっています。

「新しいアイデアとは、既存のアイデアの新しい組み合わせである」と、ジェームス・W・ヤングは言いました。知識を増やすことも大事ですが、単独の知識だけでは限界があります。知識を組み合わせる「知のハイブリッド化」だと、効率良く新しいものを生み出すことができます。ただし知識の組み合わせは、それだけでは“単なる思いつき”でしかなく、プロセス設計を通じて、実現可能性を評価するのが化学工学です。例えば、1か所の火力発電所には1日に3,000〜4,000トンの燃料が必要ですが、火力発電を置き換えようとするならこれだけの燃料に相当する他のエネルギーを用意できるものかどうか、現実的に考えて評価をしなければいけません。思いつきを実現可能な「構想」にする第一歩がプロセス設計であり、化学工学は化学反応を伴うプロセスを実現するための方法論の体系であるのです。というまとめで、清水忠明教授の講義が終わりました。


安全レベルをさらに高めるための安全対策への取り組み

学生たちは昼食後、2班に分かれてバスで柏崎刈羽原子力発電所へ向かいました。到着後、サービスホール(展示館)の会議室にて、発電所の方から「なぜ原子力が必要なのか? エネルギーは国家安全保障の最重要課題です。ぜひ自分の力で考える機会にしていただきたいと思います」と挨拶があり、発電所の状況について簡単にレクチャーを受けました。柏崎刈羽原子力発電所は、新潟県の柏崎市と刈羽村にまたがって位置し、敷地面積は約420万㎡(3.2km×1.4km)と広大で、柏崎市:約310万㎡(約70%)、刈羽村:約110万㎡(約30%)の割合になっています。2007年7月16日に起きた新潟県中越沖地震(震度6強)以来、1〜7号機のうち2,3,4号機は停止中です。さらに2011年3月11日に起きた東日本大震災(震度7)により引き起こされた福島第一原子力発電所(以下、福島第一)の事故時には、1,5,6,7号機の4機が運転していましたが、現在は、全てのプラントが運転を停止しています。現在は6,7号機について新規制基準の下での審査が行われているところです。構内では、さまざまな安全対策の工事や訓練などが日々行われ、東京電力と協力企業から計5,909人の方々が働いています(2019年9月1日現在)。


柏崎刈羽原子力発電所の配置(イメージ図)


正面ゲートから立入制限区域へ入るとすぐにバスが止まり、入域者チェックのために係員の方が車内に乗り込んで来ました。学生たちは何重ものに厳しい警備に驚いた様子でした。いよいよ発電所の方の説明を聞きながら車窓見学の始まりです。まず海抜37mの地点で、福島第一の事故以降準備したという「緊急車両基地」を見ました。1分間に20トンもの大量の水を原子炉建屋に放水できる「大容量放水車」、正面には津波などのがれき撤去に使う、黄色い「ホイールローダー」(ショベルカー)が置かれています。さらに進むと、消防車・ポンプ車、海水を吸い上げて原子炉を冷やす冷却水をつくるという、青い大きなトレーラー型の「代替海水熱交換機器車」が目を引きました。「電源車(500 kVA)」は、ディーゼル発電機で建物の中に電気を送ります。見学当日は、台風の影響で停電が続く千葉県へ24台中4台が派遣されていると伺いました。あらためて緊急時の必要性を実感しました。

さらに進むと、森林火災から原子炉施設への延焼を防ぐ「防火帯」が幅20m×全長4kmにわたって新規制基準により新設され、海抜21mの高台には「空冷式ガスタービン発電機車」、地下にはその燃料となる軽油タンク(5万ℓ×2基)もあるそうです。

海の方へ向かうと、15mの津波を想定した巨大な「防潮堤」が見えてきました。1〜4号機側は海抜約5mの敷地に高さ約10mの鉄筋コンクリート製、5〜7号機側は海抜約12mの敷地に高さ約3mのセメント改良土の盛土による防潮堤を設置しています。壁を支えているのは直径1.2mの杭で、891本打ったものの、液状化の恐れがあるとの国の審査を受け、今後の対策を検討中とのことです。

海抜55mの展望台に上る途中には(45m地点)、約2万トンの井戸水を蓄えた「貯水池」と消防車が見えました。高低差を利用してホースで水を送る訓練もしているのだそうです。また、構内全体を見渡すと、発電機車や消防車などを柏崎側と刈羽側に、それぞれ分散配置している様子もわかりました。想定外の事態を踏まえた「多重性と多様性と分散」を念頭に対策を取っているとのことです。


安全対策の配置高さのイメージ



講義で構造を学んだ、原子炉建屋の中へ

バスから降りた学生たちは、6号機原子炉建屋へ入り、最上階を見学しました。中央の丸くなっている所は5枚のコンクリートの壁で覆われ、中に原子炉が入っています。原子炉に最初の燃料を入れている様子を写した、貴重な写真パネルを見ました。また、6号機の使用済燃料プールには現在、2,362体の使用済燃料が貯蔵され、熱を持っているため、絶えず満水開放冷却されており、表面の水が動いて循環している様子が見えました。この最上階の安全対策工事はほとんど終わっているため人の気配はありませんが、運転員が24時間体制で監視しているそうです。今後、使用済燃料は青森県の六ヶ所再処理工場で再処理される予定で、新しい燃料として再利用する核燃料サイクルは、日本のエネルギー政策の指針にも示されています。

次に、6,7号機タービン建屋の中へ入ります。学生たちは、「同じ県内にあるというのに原子力発電所の中に入るのは初めて!」と目を輝かせていました。イラストで発電のしくみをおさらいした後、原子炉で発生した蒸気をタービンに送る配管や、約70mもある巨大なタービン発電機の羽根車などを窓越しから見ることができました。最後に発電所の方から、「皆さんは、電気の品質について考えたことがありますか?停電がない、電圧が安定している、周波数が一定であるという品質の良い電気が、重要で細かい部品をつくる日本の二次産業を支えているのです。燃料費が安く、エネルギー密度の高い原子力には、ベースロード電源として日本のために品質の良い電気を届ける使命があります」とお話がありました。質疑応答の時間には、風評被害の質問に対して「私たちは放射能、放射線の正しい知識を持っているから怖くありませんが、皆さんにも正しい情報を知って、正しい判断をしてもらいたいですね」と答えをいただきました。今日一日、中身の濃い学外研修を終え、将来を担う学生たちに日本のエネルギーの現状と未来はどう映ったでしょうか。講義を受けた後、エネルギーをつくり届ける現場を実際に見て肌で感じることで、多くの気づきが得られたことを願いつつ、お世話になった発電所を後にしました。


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