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つわぶき友の会

《日 時》
2020年1月29日(水)13:45〜15:40
《会 場》
八幡浜市文化会館ゆめみかん(愛媛県八幡浜市保内町宮内1番耕地118) 
《テーマ》
「世界経済を揺るがすエネルギー資源獲得競争」

現在は良くも悪くもグローバリズムの時代。世界の経済やエネルギーリスクが日本にどのような影響を与えるのか、私たちはどのようにリスクを避ければいいのかなどについて、門倉貴史氏(BRICs 経済研究所)にお話を伺い、神津カンナ氏(ETT代表)との対談が行われました。 

講演

2020年世界経済の減速と国内経済の見通しは

2020年の世界経済はどうなるのか予測すると、残念ながら減速していくと思われます。世界経済の今年最大のリスクは米中の貿易摩擦。IMF(世界通貨基金)の試算結果(18年10月発表)によると、中国で1.41ポイント、アメリカで0.95ポイント、日本も米中向け輸出減速で0.66ポイント、世界では0.82ポイント、成長率は下押しされます。米中の包括的貿易協定の第一段階は合意に達しましたが、今後が不透明なため、アメリカ企業は設備投資に慎重で製造業の生産停滞により景気が減速。中国では昨年発表された経済成長率が6.1%と29年ぶりの低成長になり、外資系企業が高い関税を嫌い生産拠点を海外にシフト、国内求人数の大幅減少で雇用・所得環境が悪化、消費が伸び悩み成長率は5%後半まで落ちると予測されています。また中国発端の新型コロナウイルス肺炎による世界経済への悪影響も見逃せません。 


貿易戦争が世界経済に及ぼす影響


一方、ヨーロッパにも大きなリスクがあり、1月末にイギリスがEUから離脱、年末までの11か月しかない移行期間にEUと新しい貿易協定を締結しなければ、合意なき離脱によりヨーロッパ全体を大混乱に巻き込む懸念が高まっています。さらにもう一つのリスクはドイツ最大の民間銀行、ドイツ銀行がデリバティブ商品の投資運用失敗から経営破綻の可能性が否めず、7,500兆円もの巨額の不良債権(リーマンショックをもたらしたリーマン・ブラザースの場合は120兆円)を抱え、世界的な金融危機に発展しないかということです。  

日本では2012年に始まったアベノミクス(「大胆な金融緩和政策」「機動的な財政出動」「成長戦略」の3本の矢)により、これまでの景気動向は脆弱ながら回復に向かっていました。アベノミクスが目ざすデフレ脱却の流れは、円安→企業業績回復→賃金上昇→消費拡大→物価上昇であり、確かに大企業では業績改善による賃上げ、消費拡大が起きていますが、日本企業の大半は中小企業のため限定的な影響です。アベノミクスが今後も続けられるならば、金利の高いドルが積極的に買われ外国為替市場で円安の流れになり、輸出主導で景気が拡大、2020年中に円・ドル為替レートは1ドル=112円、日経平均は25,000円の見通しになっています。しかし、実際の株価は様々な要因が複雑に絡み合って影響しているので、リーマンショック級のリスクが起これば、安全な通貨といわれる円に世界中の投資家が殺到し、1ドル100円前後の急激な円高局面まで進み、日経平均は17,000円まで沈むと考えられます。

一方で今夏開催の東京五輪は景気の下支えと考えられ、招致決定の13年から30年までに全国で累計32.3兆円が期待されています(17年3月発表の東京都の試算)。また昨年12月に閣議決定された経済対策は事業規模26兆円と大きいですが、民間事業も含めての数字なので政府の財政支出は4兆円弱のみ。毎年の政府補正予算4兆円と比べると大きな効果は期待できません。そして「オリンピックの崖」と言われるように今年後半には景気は後退局面に入っていきます。昨年10月から始まった消費増税に対して節約を意識すると答えた人が全体の約80%を占めていますが、消費低迷は景気悪化の一番の要因。さらに過去2回の増税と同じく、消費税収は上がったものの一般会計税収は悪化するパターンをたどるのではないかと思われます。今後一層の経済対策が望まれるところです。


消費税収と一般会計税収の推移


新興国中心に中長期で増え続けるエネルギー消費

エネルギー問題に目を向けると、今年初めアメリカによるイラン司令官殺害で中東情勢不安定化、原油供給が不安視されましたが、情勢緊迫化の割に価格は高騰していません。なぜかというと世界経済の減速により利用が伸び悩んでいるからです。しかし中長期では新興国の経済成長で世界の原油消費量は増加を続け、需要に供給が追いつかず価格上昇が予測されています。新興国の成長エンジンはこれまで輸出だけでしたが、国内の消費や投資が成長を加速させ、原油消費も増えていきます。  


新興国は中長期で高成長が続く 新興国とG7各国の潜在成長率(2014年~2018年の平均)


世界のエネルギー事情を見ると、アメリカは、2000年代のシェール革命により世界一の産油国になり、低価格で大量に採取できるシェールガスとシェールオイルは生産性をアップし、企業の収益が伸びています。中国は、これまで石炭や石油などの化石燃料を主なエネルギー源にしていましたが、温室効果ガスや大気汚染が増加し、よりクリーンなエネルギーへの移行のため原子力大国を目指しています。現在運転中の原子力発電基数はアメリカがトップ、しかし建設中・計画中は中国が最も多くなっています。ヨーロッパは国によってエネルギー政策が異なり、ドイツは2010年代から再生エネルギーの風力発電率を高めています。とはいえ現在世界で最も消費が多いのは化石燃料。しかし地球温暖化の原因であることから世界の平均気温は100年あたり約0.73℃のペースで上昇し、日本の平均気温はそれ以上に約1.19℃のペースで上昇すると予測されており、温暖化は世界の食料生産にも悪影響が及ぶと考えられています。 

日本の現在の電気料金に対する意識調査では、料金が高いと少しでも感じている人が8割以上に上っています。2011年の福島第一原子力発電所事故以後、原子力発電を停止させ火力発電をフル稼働せざるを得なくなった日本では、海外からの資源輸入増加が電気代へと上乗せされたため、消費税増税以前から節約志向が高まっています。一方で火力発電増加とCO2排出量対策は世界から注目されています。 


個人資産は分散投資、エネルギーはミックスしてリスクを最小限に

お金の話に戻りますが、今後、日本人の平均寿命が伸び続ける中で、老後のために若いうちから資産形成が必要になってきます。仮に90才まで生きるとして、老後に必要なお金は、60才から65才までの無年金期間の生活費+年金では足りない生活費+介護や病気にかかる備え=これだけで3,300万円…あまりにハードルが高い金額です。退職までに副業や起業を行い、また近い将来インフレ転換に伴いお金の価値が物に比べて下がっていくので、現金のタンス預金は得策ではありません。銀行預金でも利息収入より元本目減りが現れる可能性が高いので、リスクを取れる範囲内で株式や不動産投資に振り分け、中長期の分散運用がリスクを最小限に抑えるコツです。 

個人の分散投資の考え方はエネルギー政策にも当てはまります。石油・石炭・LNGの化石燃料、再生可能エネルギー、原子力発電のどれか一つに偏ったエネルギー政策はリスクが大きいです。化石燃料に頼りすぎると中東情勢不安定で価格が上がり、地球温暖化のリスクも大きい。再エネに頼ると、クリーンだけれど、コストがかかり賦課金として家庭の電気代が上がる。というように資源のない日本のエネルギー政策は3つをバランスよく組み合わせていくことが重要だと思います。  



対談

神津 世界が今、どの国もさまざまな形のリスクを抱えている中で、日本のリスクというのは何だと思えば良いのでしょうか? リスクを小さくしている下支えがあるとしたら、それは何でしょうか?

門倉 アメリカの株価はバブルといっていいくらいです。日本では過熱感がなく、投資家が慎重な投資をしていますね。またこれまで遅れ気味でしたが、優良品を世界に売り込むアベノミクスのクールジャパン戦略があります。

神津 愛媛特産のみかん一つをとっても、いろいろな種類が作られ高級品もあります。時代が変わり品種も変わるけれど、みかんを食べる文化は残るのですよね。消えるもの、変わるものと共に残るものがあるということです。今は化石燃料に対して風当たりが厳しいけれど、車文化はまだ続くでしょうしガソリン車は急激に減少していない。やはりしばらくの間、原油消費は伸びていくのでしょうか。

門倉 先進国は代替えしつつありますが、新興国は技術的な問題からまだ対応できませんから化石燃料の消費は新興国中心に増えます。

神津 アメリカは世界一の産油国であり、また原子力発電も世界一ですよね? 今後エネルギー政策はどうなるのでしょうか。

門倉 トランプ大統領の考えは温暖化対策に非協力的で化石燃料を使い続けるでしょう。でももし民主党政権に変われば政策も変わります。

神津 それにEUの中では銀行の不良債権による破綻危機を控えるドイツが先進的に再エネを増やしているという矛盾がありますよね。

門倉 賦課金が過剰に上がり、風力発電のための送電網コストもかかるので、家計負担が増大している上に、ドイツ経済は中国との関係が深く、中国の経済衰退にドイツも巻きこまれます。

神津 各国が抱えたいろいろな火種が飛び火していくんですね。

門倉 中国経済の悪化はインバウンド消費が増加している日本への影響もかなり大きいです。

神津 世界を見渡すと難しい時代になってきたと感じますが、でも、つい私たちはこれから30年先の世界や日本について考えても仕方がないと思いがちです。ただ、門倉さんがおっしゃっていたように、その30年後、2050年になると猛暑が10月中旬まで続いて京都の紅葉の見頃はクリスマスの時期になるとか、世界人口が100億人を突破して、国連が昆虫食を推奨するくらい気候のせいで食料生産が難しくなる可能性が高いと聞くと何とかしなくてはと感じます。私たちが今からできることはありますか。

門倉 企業の技術革新による温室効果ガス削減が最も重要です。日本は省エネがかなり進んだので、個人消費者の省エネは限界があると言えます。

神津 いずれは世界でエネルギー、食料、水が争奪戦になると考えたほうがいいのでしょうか。

門倉 インド、中国では深刻な水不足になると予測されており、一方、海水を淡水にする技術も少しずつ進んでいますよね。

神津 日本にいると水や食料は意識せずに口にできますが、エネルギーに関しては資源がない国という宿命を背負っていて、世界で争奪戦になったらどうしたらいいでしょう。

門倉 自給率向上が大事ですし、資源調達先の多様化でリスク分散しなければなりません。日本は水が豊富なので水力発電を見直すのもいいですが、自然環境に左右される再エネだけに頼るのはリスクが高いと思います。

神津 そうですね。電力はベストミックスといいますが、悪いところを比べてこの程度なら認められる、リスクミックスにしたほうがいいという人もいます。 

門倉 ビル・ゲイツが「リスクを負わないことがリスク」と言っており、長い目で見るとリスクを取るかどうかが重要なポイントになります。バブル崩壊を経験した日本人は、トラウマからリスクをとるお金の運用に消極的になっています。しかし今後は、経済動向を見極めながら分散投資してほしいですよね。

神津 すべての分野にリスクはあるのだから、投資をする際、投資先を分けてリスク軽減を考えるように、エネルギーに関してもリスクが相殺されるようにうまく組み合わせて使うことが大事なんですね。



門倉貴史(かどくら たかし)氏プロフィール

エコノミスト・BRICs経済研究所代表
1971年神奈川県生まれ。95年慶應義塾大学経済学部卒業、同年銀行系シンクタンク入社。99年日本経済研究センター出向、2000年シンガポールの東南アジア研究所出向。02年から05年まで生保系シンクタンク経済調査部主任エコノミストを経て、現在はBRICs経済研究所代表。同研究所の活動とあわせて、フジテレビ「ホンマでっか!? TV」、TBS「サタデープラス」、読売テレビ「クギズケ!」など各種メディアにも出演中。また、雑誌・WEBでの連載や各種の講演も多数行なっている。『図説BRICs経済』(日本経済新聞社)、『増税なしで財政再建するたった一つの方法』(角川書店)、『不倫経済学』(KKベストセラーズ)、『オトナの経済学』(PHP研究所)、『お父さんのための裏ハローワーク』(方丈社)、『日本の「地下経済」最新白書』(SB新書)など著作多数。

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