地域活動紹介

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NPO法人WARP-LEE NET

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第12回オンライン勉強会

《日 時》
2024年1月10日(水)14:00〜15:35

火山が多く、温泉も豊富な日本で、なぜ地熱発電の開発拡大が十分に進んでこなかったのでしょうか。地熱発電はエネルギー資源輸入の必要がなく、CO2排出も極めて少ないクリーンな再エネであることから、将来の開発が注目されています。地熱発電の課題や今後の展望について、満田信一氏(日本地熱協会会長)にオンラインでお話を伺ったのち、質疑応答が行われました。 

 

講演 日本の地熱発電について

日本における地熱発電開発の流れ 

日本の地熱発電は1919年に大分県別府市で噴気孔掘削に成功したことに始まり、25年には日本最初の地熱発電に成功しています。そして太平洋戦争後に電力の安定供給のため、水力や火力発電の開発と共に、地熱の実用化に向けて調査が始まり、66年10月8日には岩手県の松川地熱発電所が運転を開始しました。70年代に入ると、石油ショックを契機として地熱資源開発は急速に拡大、96年には認可出力50万kWを達成しますが、それ以降、石油価格の安定化とエネルギー政策の転換などによって、地熱発電開発は横ばいになりました。ところが2011年の東日本大震災によるエネルギー危機をきっかけにFIT制度導入もあり、再生可能エネルギー導入拡大が進められ、地熱発電促進の規制緩和も進んでいます。

エネルギー資源を輸入に依存している日本は、バランスの良い供給を達成するためエネルギーミックスの必要性があり、化石燃料の使用を減らし、CO2排出が少ない原子力や再エネの比率を高める方針を取っている中で、現状、設備容量が約60万kWの地熱発電は2030年度の目標として2.5倍の約150万kWが掲げられています。そして日本地熱協会は地熱発電事業の普及推進を図るため2012年に設立され、そこには地熱発電事業者や電力会社、発電設備メーカーなど幅広い産業分野の90社近くが参加し、地熱発電に関する調査研究、情報交換、政府やそのほか関係機関に対する提言などを行っています。


発電設備容量が世界で第10位の日本の地熱発電のしくみ

火力発電は石油・石炭・天然ガスといった化石燃料をボイラーで燃やし、その熱で水を高温・高圧の蒸気に変えてタービンの羽根を回転させ、発電機で電気を起こす方法ですが、地熱発電の燃料は、火山のマグマで熱せられた高温の地下水です。下図で説明すると、長い年月をかけて地下に浸透した雨水や河川水がマグマの熱によって高温の蒸気や熱水になります。そして地下水が浸透しない地層によって地下水や熱が地表に逃げるのを押さえられ、岩石にできた割れ目に熱水が溜まり地熱貯留層になります。地上から貯留層に井戸を掘って地下水を地上まで上昇させると、その過程で沸騰し、発生する蒸気を用いてタービンの羽根を回転させ、発電機で電気を起こす仕組みになっています。また復水器で水となった蒸気や熱水は還元井で地下に戻し循環させています。発電方式には地下の温度が200℃~300℃以上と高いところでは「フラッシュ発電」、温度が150℃程度の低いところでは「バイナリー発電」の2つがあります。「フラッシュ発電」では、地熱流体を蒸気と熱水に分け、熱水は還元井から地下に戻し、発電後の蒸気は復水器で温水にし、さらに冷却し蒸気の冷却に使用します。一方、「バイナリー発電」は、取り出した地熱流体で二次媒体(代替フロン、炭化水素系媒体、水・アンモニア混合物など水よりも沸点が低い媒体)を温めて蒸気化し、地熱流体は還元井から地下に戻し、二次媒体の蒸気でタービンを回転させ発電します。発電後の二次媒体は液体に戻し、循環ポンプで再度、蒸発器に送っています。


■地熱発電のしくみ



日本で操業している主な地熱発電所は20以上あり、最大出力は九州の八丁原発電所の11万kWで、次いで東北の澄川発電所が5万kWとなっています。世界の地熱発電設備容量では、アメリカが1位で、インドネシア、フィリピン、そして特に急速に伸びているトルコと続きます。日本は10位になっています。 


■地熱発電設備容量の変化



地熱発電のメリットとデメリット

地熱発電のメリットとしてまず挙げられるのは、火山国日本の地下のマグマを利用するので燃料が不要であることです。そして太陽光や風力発電のように昼夜、天候に左右されることなく、年間を通じて安定した電気供給が可能で、地震や台風など自然災害にも強い発電方式です。また地熱資源量を見ると、世界でアメリカ、インドネシアに次いで第3位とポテンシャルが高い純国産エネルギーで、かつCO2排出量はほぼゼロであり、化石燃料の輸送時にかかるようなCO2排出もなく、クリーンなエネルギーでもあります。さらに50年以上の操業実績という長寿命で、高い設備利用率は、長期的に見ると経済的です。つまり日本のエネルギー政策の基本方針「S+3E」のS=安全性と3E=安定供給、経済効率性、環境適合を満たした発電です。そして日本は世界最高水準の地熱発電設備技術と豊富な実績を有し、地熱発電用タービンの世界シェアにおいて、日本のメーカー3社が上位64%を占めています。地熱発電の普及は国内産業の活性化と海外展開が望める技術です。さらに発電後の熱水は、ハウス栽培や養殖事業にも活用されています。 

一方、デメリットとして挙げられるのは、太陽光や風力と異なり、調査段階から地熱発電を操業するまでに10年以上もかかり、その上、井戸掘削のコストや時間をかけて地下資源を探査した結果、十分な蒸気や熱水が得られなかった場合は、無駄になるリスクがあることです。地熱開発は段階を踏んで進められますが、まず地元の皆さんの理解が必要で、特に温泉地域に影響を与えないよう説明と協議を繰り返し、合意に達した末に調査が始まります。地表の地質や岩石などの地表地質調査、地下を推定する広域物理探査と並行し、現状の大気の質や水質、地盤変動など、また景観の調査を行い、自然環境への影響の調査、温泉の湧出量などへ影響を与えないことの調査があります。続いて深さ2,000〜2,500mの調査用井戸を掘削し、地質、温度を調査し、地下の割れ目から蒸気が出てくるかどうかを確認します。さらに地熱流体を取り出して実際に噴出させ、発電可能とわかったら、地下をモデル化してどのくらいの量の蒸気がどのくらいの期間継続して出てくるかをコンピューターの数値シミュレーションで予測する貯留層評価を実施します。将来の経済性評価を経て、法律で義務付けられている環境影響評価の報告書を地元に説明し、国や地方自治体に提出してから認可を得ますが、この過程で3~4年かかります。ここで初めて開発が始まり、生産井・還元井掘削と発電所の建設になります。

操業開始後も、生産・発電データの管理が続けられます。例えば地下から地熱流体を取り出し蒸気と熱水を分離して熱水を地下に戻せばまた地下のマグマで温められて蒸気になりますが、熱水が地上で大気温に接触して冷えた状態で地下に入れられ、十分にマグマで熱せられないと蒸気の生産量が徐々に減少して行きます。そのため、地上に出てくる蒸気や熱水の生産量と温度・圧力を常時計測し、地下の状況を把握し、将来を予測しています。減衰リスクに備え、発電出力の維持対策も取られています。

また地熱資源のポテンシャルの約8割が国立公園内にあるため開発規制がある上、温泉地における開発も地元の反対を受けることがあります。そして発電コストの問題もあります。現在普及している3万kWのモデルプラントでkWhあたり約11円程度かかっていますが、さらに低減化させる必要があります。


官民一体で切り開く地熱開発の未来

地熱開発を推進する政府としては、現在、さまざまな形で政策支援を行っています。地下資源開発リスクに対しては、日本の民間企業が資源・エネルギー開発に参入するための支援サービスを提供する、経産省管轄のJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)により、地下資源開発について先導的資源量調査や技術開発を行います。そして開発初期の大きなコストや発電所操業までのリードタイムの長さに対しては、経済的助成制度(地熱資源開発補助事業、出資、債務保証)もあります。また、温泉や自然公園などの規制制度の改革も政策支援の一つとなっています。一方、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も、資源量増大、環境保全・地域共生、発電原価低減に対し様々な技術開発を行っています。

地熱発電を取り巻く事業の環境は、再エネ導入拡大推進の中、この10年でかなり改善されており、多くの事業者が地熱発電事業に参入してきましたが、中小規模の開発が先行される傾向にあり、今後は大規模開発を進めるためにも、政府や関係省庁などの支援を受けながら、リスクを低減化させ、官民一体で開発を促進させていくことが必要ではないかと考えています。 





質疑応答

講演後に行われた質疑応答では、「地熱発電が自然災害に強いのはなぜか」という質問に対し、「地下の地熱貯留層が蒸気を発生させるボイラーであり、地上設備はシンプルで少ないため自然災害の影響を受けにくく、東日本大震災時でも地下の井戸は影響を受けず地上設備のトラブルもなかった」と答えられました。「世界第3位の資源量があるのはどのようにして判明したのか」については、「火山の数や、これまでに掘削された井戸の地下の温度データをもとに日本の国土をメッシュ状に区切って熱量の大きさを推測しているが、未調査の地域も多くあり、今後も調査が続けられる」と答えられ、「2030年度の地熱発電の目標150万kWは、原子力発電の1基にも満たないから、せめて地域振興と結びつく開発が進むよう希望を持っている」という意見に対し、「地熱発電は適切なエネルギーミックスのためにあり、徐々に増加させることで地域に貢献させていきたい」と答えられました。「安全・安心なエネルギーは基本だが、地熱発電においてトラブルが起こったことはないか」という質問には、「老朽化による更新はあるが、発電所自体の安全を脅かすようなトラブルは聞いたことがない」と答えられ、また「地球温暖化問題も大きく、以前は考えられなかったほど再エネが推進されていく中で、地熱発電が躍進的に伸びるために何が必要なのか」という問いには、「日本は自然公園や温泉が多く、それを地熱発電所の急速な普及によって自然破壊に繋げるわけにはいかない。開発をして、もし影響が出た時のために補償制度ができたし、環境省も徐々に規制緩和をしている。自然を守ることは必要であり、劇的に変わることはできないが、官民一体となって自然に配慮しながら粘り強く普及させていくことが重要と思う」と答えられました。 


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