地域活動紹介

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2020年度 原子力特別勉強会 ③
2月10日
2020年度 原子力特別勉強会 ②
2月10日
2020年度 原子力特別勉強会 ①
1月15日
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12月10日
2020年度メンバー勉強会②
12月10日
2020年度メンバー勉強会①
12月3日
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12月1日
松江エネルギー研究会
11月30日
山口県地域消費者団体連絡協議会
11月21日
のべおか男女共同参画会議21
11月7日
中部エナジー探検隊
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9月5日
えひめエネルギーの会
9月4日
NPO法人
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8月25日
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えひめエネルギーの会

《日 時》
2020年9月5日(土)13:30〜15:30
《会 場》
ANAクラウンプラザホテル松山(愛媛県松山市一番町3-2-1)
《テーマ》
〜エネルギーの今、そして未来〜 私たちのくらしはどう変わる?

新型コロナウイルスの影響により、ETTとして今回初めてのweb配信による講演を試みました。神津カンナETT代表が、コロナ禍の中で変わったご自身の生活や考え方、これからのエネルギーについてどのように考えていけばよいのかなどを東京のETT事務局の一室から愛媛の会場へ向けて発信し、愛媛の会場ではその配信を参加者の皆さんが大きな画面でリアルタイムで見て聞いて、質疑応答を行いました。

講演 
小見出し1 「〜エネルギーの今、そして未来〜 私たちのくらしはどう変わる?」

「死の受容のプロセス」と福島での事故やコロナを受け入れるプロセスの類似性

今日は私も初めての試みで、このようにパソコンに向かって皆さまに講演をしています。といっても画面に向かって話しているわけで、何だかとても変な感じです。皆さまが松山の会場に集まってくださっていて、私の顔がスクリーンに映し出されているということだと思いますが、これも今までに経験し得なかったことで、コロナ禍によって与えられた変化なのだと思います。 さて、それでは本題です。

コロナの影響で読書する時間が増え、置いたままになっていた本を手に取り読むようになりました。その中の一冊が1969年刊行の『死ぬ瞬間』On Death and Dyingです。この本の作者は、エリザベス・キューブラー・ロスというスイス生まれのアメリカ人の精神科医です。当時ベストセラーになった理由は、精神科医が死に真っ向から取り組んだことであり、彼女は著書の中で「死の受容のプロセス」と呼ばれている「キューブラー=ロスモデル」を提唱しています。これは死を宣告された時から、死を受け入れるまでのプロセスで、第一段階は驚きと疑いによる「否認と孤立」(denial & isolation)、第二段階ではなぜ自分がこんな目に遭うのかという「怒り」(anger)、第三段階になると、なんとか死ななくてすむようにと、神もしくは医療とは別の自然治癒能力にすがる「取り引き」(bargaining)です。しかし何も役に立たないとわかると、第四段階では自らの殻に閉じこもり「抑うつ」(depression)になり、最後の第五段階では人は皆死ぬものだからと「受容」(acceptance)するというのです。

このモデルについては、段階を踏むのではなく行きつ戻りつしたり、または同時に起こったりもするのではないかという批判がありますし、第三段階の「取引」ではキリスト教の神の存在が大きいので、宗教が異なると違和感もありますが、それでも私はこの本を読んで、福島第一原子力発電所の事故やコロナでも類似したプロセスを踏んでいるのではないかと感じました。放射能は目に見えないし、コロナは未知の病ですから、いろいろな噂や憶測が飛び交って、第一段階では混沌とした中での「模索」。第二段階になると、みんなが「興奮」して、コロナの場合はオンライン飲み会や、YouTubeでのリモート合奏など新しい試みをしようとしました。それが第三段階では「怒り」に変わり、公共の場でマスクをしていない人を糾弾し喧嘩になったり、あるいはネット上でコロナ感染者の個人名特定などもありました。それが第四段階まで進むと疲れて「飽き」てくるので、各自思い思いの行動をします。第五段階まで行くと、「ニューノーマル」つまり新しい日常が生まれてくると思うのです。

いま私たちはおそらく第四と第五段階の間くらいにいると思っています。そしてこういうプロセスを踏むのは、失恋でも失業でも日常生活でダメージを受けるどんな場合にでも当てはまるのではないか、段階を経て次のステップに進むのは、人間のありようと言えるのではないかと思います。


小見出し2 できることを、できるひとが、できるだけ、できるようにやればいい

私の好きな世阿弥の言葉に「する態に対するせぬ隙のおもしろき」というのがあり、能においてじっと止まっているだけの方が動く所作より難しく、これができるようになったら一流の能楽師だというのが言葉の真意ですが、まさに今の時期もこれと同じ。世の中が止まっている、動けない今だからこそ自分ができることを探した方がいいのではないかと思います。

『ETT(フォーラム・エネルギーを考える)』は今年30周年を迎えました。しかし私が三代目の代表に就任する直前に3.11の東日本大震災が起き、準備していたこと全てが水泡に帰し、また30周年の今年はコロナ禍という悲運に見舞われ、活動が制限されています。それでも私なりに何かできることはないかと考え、許可をいただいているメンバーの方達にメーリングリストでメールを送ることにしました。2月25日から始めて3月29日からは「神津通信」と名付けて送り続け、8月24日までの半年で約300通書き、一区切りをつけました。休んだ日はたった3日だけです。自分に言い聞かせているのは、できることを、できるひとが、できるだけ、できるようにやればいいということでしたので、私は物書きですから「神津通信」を書き続けたのです。

先ほどお話しした、第二段階の「興奮」や第三段階の「怒り」の状態にあると、人は得てして間違った判断をしやすいものです。今はじっくり構えて福島で起こった事故の時のように白か黒かの二者択一に走らないことが大切だと思います。自律神経や免疫の第一人者である順天堂大学の小林弘幸教授によると、人間の腸の中にはビフィズス菌などの善玉菌が2割、大腸菌などの悪玉菌が1割いて、残り7割は、私たちがヨーグルトなどを摂取し続けて善玉菌に変わるという「日和見菌」だそうです。でも手を抜けばすぐに悪玉菌に変わってしまう —— この話を伺って、白黒はっきりつけるというよりも日和見菌のようなグレーゾーンの考え方をしている人がほとんどなのだから、どちらが正しいかと結論を即断してしまわず、グレーの人たちへの対応を丁寧にすることこそ重要ではないのかと思います。

これまでに人類はものすごく進歩して優秀になってきたかといえばそうではないということが、新型コロナのようなパンデミックが繰り返されてきた歴史からもわかります。そのようなパンデミックの度に多くの死者が出て、社会は変化せざるを得なくなったけれど、これからも新しい感染が出現するでしょうし、今のコロナがかつてのスペイン風邪流行の時と同じく、マスク着用や三密を避けるなど、100年前と同じ対策をしているように、完全に克服することはできないのかもしれません。それでも今の自分たちにできることを見つけて、少しでもよい方向に向かっていけないか考えることで、変わる可能性が出るのではないでしょうか。


小見出し3 コロナ後のエネルギーをどのように捉えればいいのか

ではポストコロナのエネルギーはどうなるのでしょうか。環境問題への注目度は高く、最近ではCO2を排出しない原子力を少しでも多く再稼働した方がいいのではないかという意見も聞かれるようになり、一方、自然エネルギーは手放しで喜べない、様々な難点があることも理解されてきました。もう全てが昔のままということはありえない、だから今こそ新しい段階に向かうため、私たちは変わることを恐れずに丁寧なものの見方をして選択する時だと思います。

一方で、変わらないもの、すぐには変われないものもあるということを頭に入れておかなくてはなりません。環境問題の論点から石炭火力発電所の廃止が叫ばれていますが、老朽化して効率が悪いものは閉鎖するとはいえ、不安定な自然エネルギー増加のための調整に有効な高効率の石炭火力まで閉鎖してしまってよいのか、また原子力も再稼働させたいが、最終処分地も決めないまま先に進めてしまってよいのかなど問題は山積しています。理想は理想として持ち続けながら、すぐにできないこともあると認識した上で精査しなければなりません。

結局、世の中全てのことは、たった一人のエリートのトップが決めてくれるわけではなく、みんなの声を反映させてみんなで決めていかなければならないわけですから、一人ひとりが自分の選択に責任を持つ気持ちを忘れてはならないと思います。特にエネルギーに関しての選択は、冷静さが最重要です。一つだけを選んで他を捨ててしまうと、その一つがダメになった時に、救いようがなくなりますから、理想に到達するまでのプロセスを考えながら上手にシフトしていかなければならないと考えています。先ほどの小林先生がおっしゃっていましたが、アクセルの働きをする交感神経とブレーキの働きをする副交感神経でできている自律神経のバランスが今、崩れているのだそうです。バランスを保つためには、ネットの空間だけで活動せず、身体を使うことが必要だそうです。アフターコロナも、リモートでの活動とともに、生身で人と会って話し合うなどリアルな活動とを両立させ冷静さを維持していきたいものです。

コロナ後のエネルギー、とりわけ原子力について考える時、もう一つ考慮すべきなのは、「トランス・サイエンス」の領域です。「トランス・サイエンス」という言葉は1970 年代にアメリカの核物理学者のアルヴィン・ワインバーグが作ったもので、彼は原子力発電所の多重防護設備を事例に取り、科学に問うことはできるけれど、科学だけでは答えることのできない問題があると論じています。この「トランス・サイエンス」を提唱していらした科学哲学者で大阪大学の小林傳司教授は、福島第一原子力発電所の事故後に、原子力の問題における「トランス・サイエンス」の必要性を訴え、原子力発電のような巨大な科学技術がもたらす社会的影響については、理工系、文系を問わず異分野の専門家たちが多角的に検討をした上で、一般の市民が原子力の安全性の取り組みについて社会的討議を行うのが順序なのではないかとおっしゃっています。私たちは、科学では割り切れない問題を、ただ専門家に解決を委ねるのではなく、社会全体で幅広い合意形成ができるように探求を続けていけないものかと、私も考え続けていきたいと思っています。  


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