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原子力特別勉強会②

《日 時》
2021年2月10日(金)13:00〜17:30
《会 場》
経団連会館(東京都千代田区大手町1-3-2)

原子力特別勉強会の講演の二つ目は、川井吉彦氏(日本原燃(株)顧問)に「原子燃料サイクル施設の現状とエネルギーの安全保障について」をお話しいただきました。


講演
原子燃料サイクル施設の現状とエネルギーの安全保障について

原子燃料サイクル施設の現在の状況

青森県の六ヶ所村は、下北半島の太平洋岸のつけ根にあり人口1万人強。たいへん風光明媚なところで、白鳥も飛来する尾駮沼を囲むような形で私どもの敷地が広がっています。

再処理事業を担当する日本原燃サービスとウラン濃縮と埋設事業を担当する日本原燃産業が合併して日本原燃が設立されたのが1992年。以来29年、現在では社員も2,970名となり、毎年100名程度の新卒を採用するまでになっています。また、現在、再処理工場を中心に、福島の事故を踏まえた新規制基準への対応のための大規模な安全対策工事が行われており、日々、6,000名の協力会社の皆さんがサイト内で働いております。

私どもが担当している事業は、原子燃料サイクル事業のうちウラン濃縮工場、再処理工場、MOX燃料工場、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター、低レベル放射性廃棄物埋設センターの5つの事業。このうちすでに操業中のウラン濃縮工場と高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターについては、新規制基準に対する合格証を受領し、現在、安全対策工事を実施しているところです。 

原子燃料サイクルの中核となる再処理工場については、2014年1月に新規制基準適合のための事業変更許可を申請し、6年半かかって安全審査が終了、昨年7月に合格証を受領し、しゅん工時期を2024年上期に変更しました。

またMOX燃料工場につきましても昨年末に合格証を受領し、しゅん工時期を2024年上期に変更しました。  




新規制基準への適合状況

福島の事故を踏まえて、2013年12月に施行された新規制基準では、地震・津波、落雷、火災・爆発、航空機落下、電源喪失などに対する従来の安全設計基準がより強化されるとともに、新たに竜巻対策や火山対策等が追加されました。

たとえば、津波については再処理工場が内陸5kmに位置し、標高55mに立地しているため影響はないわけですが、地震については、再処理工場の敷地内および周辺の断層、とりわけ敷地に一番近い活断層である出戸西方断層等について改めてトレンチ調査やボーリング調査を行うとともに、地球深部探査船「ちきゅう」による海上ボーリング調査等も実施、その結果、基準地震動(地震の揺れの大きさ)を450ガルから700ガルに引き上げ、それに伴う耐震工事を進めることとしています。

また、東日本大震災時、東北電力からの送電が2日間停止、非常用ディーゼル発電機の稼働により重要施設に電力を供給したという経験を踏まえて、既設の送電線に加え、別ルートからの送電線による2ルート化を図るとともに、電源車を3台から10台に増強しました。

新たに追加された基準のうち竜巻対策については、使用済燃料貯蔵施設の冷却施設や非常用ディーゼル発電機および再処理工場本体の冷却塔、主排気筒に飛来物防護対策を施すとともに、航空機の墜落火災では化学薬品の貯槽を地下約8mに移設するなどの対策を講じることといたしました。

次に重大事故対策についてですが、福島の事故の反省から、想定を上回る重大事象が万が一発生することも考えて、たとえば、使用済燃料プールにおいて、多重化してある冷却水系がすべて止まり冷却機能を維持できなくなった場合、移送ポンプでプールに直接注水、それでも水位が維持できない場合は可搬型のスプレイ設備で注水するといったように、あらゆる可能性を考えた対策を取ることとしました。

また、それでも放射性物質が放出される事態まで至る場合に備え、放射性物質の敷地外への放出を極力、抑制する対策として放水砲などを配備することとしました。

原子力発電所は炉内で核分裂を起こし、膨大なエネルギーを取り出す設備ですが、再処理工場は放射性物質が多数の工程に存在するとはいえ、通常状態では大きなエネルギーは発生しないため、原子力発電所と比較すると、事故までの進展には時間的な余裕があります。従って、重大事故対処設備は可搬型の設備を主とすることとしています。

加えて、新たに耐震性の高い緊急時対策所を建設するともに、2万トンの貯水槽2基を追加設置し、水源である二又川や尾駮沼から取水、移送するための道路(アクセスルート)も整備しています。





立地の経緯とサイクルを巡る賛否

立地基本協定から36年。1974年に電気事業業連合会が事業化にむけて調査を開始し、青森県および六ヶ所村に立地の申し入れをしたのが1984年。翌85年4月に県、村と立地基本協定を締結いたしました。しかしながら、締結の翌年にチェルノブイリ事故が発生、原子力に対する反対運動は全国規模に拡大し、青森県内、六ヶ所村でも激しい反対運動が起きました。こうした反対運動の動きは、県、村の選挙にも大きな影響を与え、村論、県論を二分することになりましたが、1991年の知事選で推進の立場の北村知事が4選を果たしたことなどを契機に反対運動は収束に向かいます。

しかし、その後も2006年のアクティブ試験の開始時には、再処理の必要性を巡って大きな議論となり、民主党政権時代には、福島の事故を受けて再処理事業からの撤退が打ち出されるといったこともありましたが、この時には地域の皆さまの猛反発により、一転して再処理事業は継続ということになりました。地域の皆さまのこうした思いには、国策に協力してきたという強い自負があります。

そうしたことを考えるとき、私どもはあらためて地域の皆さまの思いをしっかりと受け止め、絶対にそのご信頼を裏切るようなことがあってはならないことを肝に銘じるとともに、今後も徹底した情報公開と安全の確保に取り組み、資機材を迅速かつ確実に操作できるよう訓練についても繰り返し実施してまいります。




エネルギーの安全保障の確立に向けて

エネルギーの安全保障とは、エネルギーの供給途絶や価格高騰のリスクから国民生活を守り、国民が自国の将来を自律的に決定できる状況を作り出すことです。いま、コロナ禍で国際情勢が激変するなか、わが国のエネルギーの安全保障をいかに確立するかが急務といえます。しかしながら、原子力発電については再稼働がいまだ9基という厳しい状況にあります。

たとえば、フィンランド、人口550万人という小さな国ですが、この国にとってのエネルギーの安全保障はロシアからの自立。化石燃料をロシアに大きく依存せざるを得ない状況を何とかしたいということで、福島の事故後も原子力推進政策をしっかり堅持し、結果、エネルギーの自給率は55%にもなっているわけです。あの中国でも石油の8割を中東に依存せざるを得ないということで、巨額な財政支援を背景にインド洋に複数の拠点を確保し、中国の内陸部へのパイプラインの敷設に懸命に取り組んでおり、すでにミャンマーから昆明(中国・雲南省)までのパイプラインは完成。これもマラッカ海峡を封鎖されるリスクを何としても回避したいという思いからであり、これこそが中国にとってのエネルギーの安全保障戦略であります。

翻って、わが国はどうか。資源はほとんどない。エネルギー自給率はOECD35カ国中下から2番目。しかも石油の9割を、混迷を極める中東に依存。そして、島国という地政学的なハンデもある。我が国のエネルギーの安全保障は厳しい状況に置かれているわけです。

国際情勢が激変するなか、いかにして自前のエネルギーを確保し、エネルギーの安全保障をより強固としたものにするか。当然、太陽光や風力などの再生可能エネルギーも進めるべきと考えますが、自ずから限界がある。エネルギーの自立のため、我が国としてはやはり原子力の再稼働をしっかり進めるとともに、我々が担っている再処理工場やMOX燃料工場について着実にしゅん工させる必要がある。現在、我が国にある使用済燃料は約19,000トン。これは日本全体の1.5年分の発電量1兆6,000億kWhに匹敵するもので、LNG火力に換算すると約20兆円に相当します。これを利用しない手はない。何としてもエネルギーの自立という先人たちの思いを我々はしっかりと受け継ぎ、再処理工場のしゅん工に全力で取り組んでまいりたいと考えています。


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