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2月10日
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12月10日
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9月4日
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山口県地域消費者団体連絡協議会

《日 時》
2020年11月30日(月)13:30〜15:30
《テーマ》
「地域のアクションで、共に世界を変えていこう!
~SDGsの達成には、あなたのアクションが必要です~」

持続可能な社会をつくるために国連が提唱し世界各国が合意したSDGs。新型コロナウイルス感染により、現在の状況はどうなっているのか、また身近で取り組める目標とは何かなど、妹尾靖子氏(国連広報センター元広報官)による講演を東京から山口県の3つの会場に向けてZoomで配信し、その後、山口県内の3つの会場と結んでパネルディスカッションを行いました。


講演

新型コロナウイルス感染の影響を受けているSDGsの現在

SDGs(Sustainable Development Goals)は日本の方々には浸透しにくい言葉ですが、「持続可能な開発目標」という意味で17の目標があります。貧困に終止符を打つ、地球を保護する、そしてすべての人が平和と豊かさを享受できる世界を目指すという大きな目標達成のために、一人ひとりがアクションを起こす呼びかけです。国連では2000~2015年にかけて8つの目標を設定したミレニアム開発目標(MDGs)を掲げ主に開発途上国が直面する課題を取り上げていましたが、直接的な関係がない先進国からは支援が手薄になりがちでした。そこで先進国にもより主体的で積極的な参加を促すため、2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」をすべての国連加盟国が採択し、2016~2030年までに達成するSDGsが誕生しました。SDGsには1.経済成長 2.社会的包摂 3.環境保護という3つの側面があります。2の社会的包摂は、障害者など弱い立場にある人たちの視点で目標を策定するという新機軸であり、そして 3の環境保護はCO2排出割合が多い先進国に主体的に関わってほしい課題です。世界中の政府、国際機関、援助組織、研究者、企業などが3年かけて議論を重ねて作成された目標で、必要なポイントをすべて包括しています。SDGsの共通概念は「誰も置き去りにしない」こと。そして17の目標すべてが根っこでつながる統合的な取り組みと言えるでしょう。

17の目標の中には、すでに皆さんが意識せずに日常生活で実行しているものもあるでしょうし、これから一つでもいいから関心を持ち、家族や仲間と話し合うのでも十分ですし、さらにアクションを起こせば世界とつながる連帯感を感じていただけると思います。これらの目標を主に新型コロナウイルス感染による影響に言及しながら説明します。今日お集まりの皆さまが最も関心を持ち、日本ではより積極的な取り組みが求められていると思われる目標12、13と5については後で解説します。

目標1「貧困をなくそう」:コロナ禍によリ世界の貧困は0年ぶりに増大。新たに7,100万人が貧困に陥ると国連は予測しています。

目標2「飢餓をゼロに」:コロナ禍の影響で食料の安定確保と栄養状態の達成が危うくなっています。

目標3「すべての人に健康と福祉を」:コロナ禍が最も影響を与えているのが医療で、医療の進歩は数十年は後戻りし、開発途上国では子供対象の予防接種プログラム中断による健康被害や5歳未満の幼児の死者が2020年には数十万人増えるという懸念があります。

目標4「質の高い教育をみんなに」:コロナ禍の休校で90%の児童生徒が学校に通えず、オンライン学習に必要な設備機器がないためにオンライン学習を受けられない児童・生徒が世界には少なくとも5億人いると考えられています。

目標6「安全な水とトイレを世界中に」:開発途上国では家にトイレがなく、水の設備もないため手洗いができない人が約30億人おり、深刻な衛生問題になっています。

目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」:すべての人に手ごろで信頼できるエネルギーへのアクセスが確保されるべきですが、開発途上国では医療現場の1/4で電気が通じておらず、コロナ禍で生命にかかわるリスクがより高まっています。

目標8「働きがいも経済成長も」:2020年は世界大恐慌以来、最悪の景気後退に直面し、一人当たりのGDPは4.2%減少する見込みで、2020年第2四半期で4億人相当の仕事が失われると予測されています。

目標9「産業と技術革新の基礎を作ろう」:産業界では今年は特に人の移動が制限された影響で航空業界は史上最悪の事態に直面しています。また教育界もコロナ危機を克服するための資金援助が不足し、オンライン授業が不十分な状況です。

目標10「人や国の不平等をなくそう」:一番脆弱な立場にある高齢者、障害者、子供、女性、そして移民・難民が、コロナ禍による打撃を最も受けています。

目標11「住み続けられるまちづくりを」:夏前には感染者の90%は都市部と報告されていましたが、現在ではあらゆる地域に広がっており、特にスラムなどでの感染拡大が懸念されています。

目標14「海の豊かさを守ろう」:CO2排出による海洋の酸性化や、近年注目されているプラスチックゴミによる汚染を止めて生態系を守りながら海洋資源を持続可能な形で利用するべきです。

目標15「陸の豊かさも守ろう」:森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、海と同じように生態系の保護、生物多様性の維持を目指します。

目標16「平和と公正をすべての人に」:例えば全ての人が司法へのアクセスを得ることもこの目標に含まれており、過密状態にある刑務所におけるコロナ感染症の蔓延が懸念されています。

目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」:比較的余裕のある先進国が開発途上国をさまざまな方法で支援しようという、いわば17の目標すべてのまとめに当たります。


SDGsの図




日本で取り組みが遅れている目標とは

より積極的で具体的な取り組みが求められているSDGsについて話します。目標12「つくる責任つかう責任」は、持続可能な消費と生産パターンを確保する、つまり「より少ないもので、より大きな、より良い成果を上げる」ことを目指します。世界的に、天然資源は持続不可能な形で利用されており、2010〜2019年に電気・電子機器の廃棄物は38%増加、リサイクル率は20%未満です。2050年までに世界の人口が96億人に達した場合、大量生産・大量消費→大量廃棄の現行の生活様式を維持していては、地球が3つ必要になると言われています。資源利用を減らし、地球の劣化を防ぎ、汚染を少なくすることで、経済活動から得られる利益を増やす必要があります。また、生産者から私たち最終消費者に至るまで、サプライチェーンとこれまでのライフスタイルを見直さなければなりません。一人の消費者としてできることは、出すゴミを減らし、何を買うかについてよく考え、持続可能なオプションを選ぶことです。

目標13「気候変動に具体的な対策を」:これは17の目標の中で「緊急対策を取る」とあり緊急性が強調されています。温室効果ガスの排出量は現在、史上最高水準に達しており、気候変動による自然災害の頻度、深刻度もあらゆる国で高まっています。その結果、経済は混乱、国民生活にも多大な支障を来しています。気候変動対策の国際レベルでの調整のために、2015年12月、パリ協定が採択されました。世界の気温上昇を産業革命前と比較して2℃下げ、1.5℃に抑える努力を追求する試みで、1997年採択の京都議定書と違う点は、先進国も対象になっていることであり、5年ごとに外部の目で進捗状況が審査されます。今注目されているのは、トランプ大統領によって脱退を表明した米国が、バイデン次期大統領により復帰の手続きを取る見込みだということです。

気候変動に関しては、2018年12月、ファッション関連の業界である、人気ファッションブランド、小売業者、納入業者団体、さらには大手運輸会社などが、一致団結した取り組みを行う合意をしています。実は繊維業界は、航空業界と海運業界の合計を上回り、世界の温室効果ガスの約1割を排出しています。最近日本でも、廃棄物にデザインやアイデアで新しい付加価値を持たせ、新しい製品に生まれ変わらせる「アップサイクリング」が、一部の若い人たちの流行になっています。また食品に関しては、世界の年間食料生産量の1/3にあたる約13億トンが廃棄されており、全世界の温室効果ガス排出量のおよそ8%に相当します。そのため国連では健康で持続可能な食料の選択を通じて、気候変動対策への参画を呼びかける「フードチャレンジ」キャンペーンも行っています。

最後に、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」:2019年に世界経済フォーラムで発表された、世界の男女格差(ジェンダーギャップ)ランキングにおいて、日本は153カ国中121位でした。政治・経済・教育・健康の4部門についての調査結果で、政治に参加している女性が極めて少ないための順位となっています。さらに世界各地では、いまだに女性と女児に対する十分な教育が行われず、差別や暴力も残っています。開発途上国の生産者に思いをはせる取り組みの1つとして、パレスチナ難民女性が作った伝統的な刺繍作品を国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の直営店から日本に輸入して支援につなげているものがあります。これは日本に住む女性の手によって行われています。現在約530万人に上るパレスチナ難民は中東に暮らし、ガザ地区という場所にもそのうち約200万人が住んでおり、この取り組みはこのガザの難民女性を対象としています。女性たちは刺繍で得たお金を薬や子供の教育に使っているとのことで、生活支援だけではなく自信にもつながっています。このような地道な取り組みがもっと広がっていくことが期待されます。




パネルディスカッション 

後半は、山口会場(山口県婦人教育文化会館大ホール)から今村主税(ちから)氏(山口県立大学准教授)、萩会場(萩市総合福祉センター多目的ホール)から板垣多樹郎(たきお)氏(山口県地球温暖化防止活動推進センター職員)が加わり、柳井会場(アクティブ柳井ホール)の岡本浩司氏(柳井地区広域消費生活センター相談員)をコーディネーターに、東京の妹尾靖子氏とともにWEBパネルディスカッションを行いました。 はじめに、プロフィールとSGDsとのかかわりについて自己紹介が行われ、板垣氏は、県内の新生児の健康検査や障害者雇用、福祉施設と企業との会議のパネリストなどを務めて目標3にかかわる一方で、山口県阿東町の山林地域では森林の維持に携わり目標15にかかわっていると話されました。今村氏は、山口県立大学で地球環境論を研究しながら温暖化対策も担当しているため目標13と、同時に、企業の規格外品などや食べられるのに廃棄される家庭からの食品を寄贈してもらい、無償で提供する子ども食堂などフードバンク活動を行い目標12にかかわっています。

各会場からあらかじめ提出された質問の中から、萩会場の板垣氏は「エシカル消費とフェアトレード商品の購入場所の情報取得について」と「個人でできる温暖化対策」を選び、これに対して今村氏は「最近はコンビニなどでフェアトレード商品を取り扱うようになった」と発言。妹尾氏は「海のエコラベル=MSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)認証」は、魚を食べ続けられるように海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物を選ぶことで、世界の海洋保全を間接的に応援できる仕組みなので、より普及させてほしい」とお話されました。温暖化対策について板垣氏は「CO2問題は数値だけではわかりづらいが、新規購入や買い替え時にその商品のエコ効果を調べた上で購入するのがもっとも身近だ」と話され、さらに「高齢化が進む地域のみで森林を守るのは難しいので、興味のある人を募って山に入り伐採などの活動を進めている」とご自身の活動を紹介してくださいました。それに対し「里山の環境は人の手がないと維持できないから、まず愛着を持ってもらうことが大事」と岡本氏がまとめました。

次に山口会場の今村氏は「SDGsは諸外国でどのように取り組んでいるのか、また日本は取り組みが遅れているのか知りたい」という会場からの質問を披露し、妹尾氏は「先ほど話したファッション業界の動きのように、SDGsにかかわる活動を自然な流れで行っている海外と比べると、日本では年々認知度は上がっているものの、カラーホイールにデザインしたSDGsバッジを胸につけたり名刺に印字することが先行して、アクションがまだ十分に起きていないように感じられる」と日本と諸外国との比較を述べました。岡本氏から「私たちが日常の買い物など日常生活でできる具体的な取り組み方はあるか」という質問に対して妹尾氏は、「ジーンズの製作工程には、人間一人が必要とする1日の水の量を2.5リットルとすると10年分が必要であると言われている。水をなるべく減らして作られるアウトランドデニムのファンの一人がイギリスのメーガン妃で、それを知った若いフォロワーたちが進んで購入している」という実例を挙げ説明されました。「若い人たちの間に起こっているムーブメントと生活者である私たちの活動が双方バランスよく行われるのが望ましい」と岡本氏は感想を述べました。

最後に「今日からできるSDGs」について、今村氏からは「私たちの住んでいる地域には、お裾分けの慣習がまだ残っているので、食品ロスを避けるためにも余っている食品を寄付してほしいし、無駄のない買い物を心がけてほしい。また温暖化対策に関しては、再エネの導入をより進めてほしい」と話され、板垣氏も食品に関して「地産地消を目指せば地域内で経済が回るし、流通コストもかからない。すぐにでも始められるのでは」と提案されました。世界を視野に入れた実践について妹尾氏から「コロナ感染収束後は、コロナ禍前の元の生活に戻るのではなく、この苦難で体験したことを踏み台にしてできることから始めれば、地球により優しい生活になり、それこそSDGsの目指す方向だ」とお話しされました。



妹尾靖子(せのお やすこ)氏プロフィール

国連広報センター元広報官
山口県内(柳井市、下関市、宇部市)で育ち、県立宇部高校を卒業。津田塾大学を卒業後、テキサス州立大学オースティン校中東研究所で修士号を取得。1988年、国連パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA)で渉外・広報官として勤務。その後、1992年より国連薬物統制計画 (UNDCP、現在UNODC)で渉外・広報官を務める。1994年、国連モザンビーク活動 (ONUMOZ)国際選挙監視員として参加。1995年から2019年7月まで 国連広報センターの広報官として勤務。


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