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2020年度
3月2日
第1回オンライン勉強会
2月24日
石川エネの会 かなざわ
2月16日
福井県女性エネの会
2月10日
2020年度 原子力特別勉強会 ③
2月10日
2020年度 原子力特別勉強会 ②
2月10日
2020年度 原子力特別勉強会 ①
1月15日
岐阜大学・十六銀行産学連携プロジェクト くるるセミナー
12月18日
大阪府立大学
12月10日
2020年度メンバー勉強会②
12月10日
2020年度メンバー勉強会①
12月3日
食のコミュニケーション円卓会議
12月1日
松江エネルギー研究会
11月30日
山口県地域消費者団体連絡協議会
11月21日
のべおか男女共同参画会議21
11月7日
中部エナジー探検隊
11月4日
にいはまエネルギー・環境クラブ
10月29日
フレンズQクラブ
9月18日
NPO法人WARP-LEE NET
9月5日
えひめエネルギーの会
9月4日
NPO法人
あすかエネルギーフォーラム
8月25日
2020年度 メンバー会議 ②
8月25日
2020年度 メンバー会議 ①
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原子力特別勉強会①

《日 時》
2021年2月10日(金)13:00〜17:30
《会 場》
経団連会館(東京都千代田区大手町1-3-2)

菅首相による「2050年カーボンニュートラル」宣言を受け、今後、原子力の位置付けの議論が深まると想定されます。ETTでは、原子力の現状や様々な課題を考える勉強会を、経団連の会場とZoomによるオンライン参加のハイブリッド型で開催しました。新井史朗氏((一社)日本原子力産業協会理事長)による「原子力産業を取り巻く情勢」、川井吉彦氏(日本原燃(株)顧問)による「原子燃料サイクル施設の現状とエネルギーの安全保障について」、富森卓氏(原子力発電環境整備機構地域交流部専門部長)による「高レベル放射性廃棄物の最終処分と最近の取り組み」の3つの講演を行い、今回は「原子力産業を取り巻く情勢」を掲載します。


講演
原子力産業を取り巻く情勢

日本原子力産業協会の取り組みとは

日本原子力産業協会(JAIF)は、1956年に社団法人日本原子力産業会議として設立され、2006年に一般社団法人として改組改革、原子力(発電、放射線利用)の平和利用推進を目的としています。会員は2021年1月現在390社あり、電力会社やメーカーなどの原子力関連企業、また大学や原子力関連施設立地自治体など多岐にわたっています。原子力発電事業のライフサイクルは長く、計画調査から廃炉作業終了まで含めて100年事業と言われていますが、それぞれのステージで多くの仕事が発生します。JAIFの主な事業としては1.「原子力に対する理解促進」、2.「国際協力」、3.「人材育成」が挙げられます。 

1.「原子力に対する理解促進」については、課題解決に向け、会長、理事長による声明、メディアを介する意見発表、海外の原子力関連組織と連携した情報を発信しています。国内向けに原子力産業新聞、海外へはAtoms in Japan、若者向けにSNSを活用したサイトでも情報発信を行なっています。大切な双方向コミュニケーションによる理解活動としては、全国の大学や高等専門学校に講師を派遣して特別授業を行い、エネルギーや環境問題、原子力発電等に関する情報提供と意見交換を行っています。一方、原子力立地地域のオピニオンリーダーへの情報提供や意見交換会、勉強会、メンバーが主催する勉強会への講師派遣も活動の一部です。また事故発生から10年経過した福島の現状理解と風評払拭のため、復興状況や廃炉作業の進捗等を定期的に情報発信したり、国内外の専門家の視察による現地状況の発信などの活動をしています。

2.「国際協力」は、東アジア原子力フォーラムへの参加、韓国、中国、台湾とのセミナーなどの交流、IAEA総会展示会等での福島物産の紹介や各国在日大使館とビジネス交流のレセプションを開催しています。

3.「人材育成」は、これからの原子力産業の維持・発展のため産業界の人材確保を支援する活動として、毎年、東京と大阪で合同企業説明会を行う一方、理工系大学における学内セミナーや、学生向けイベントで原子力の仕事や会社のインターンシップを紹介する特設コーナーを設置しています。また産官学82の機関からなる人材育成ネットワークの共同事務局としての人材育成の取り組みや、国際的に活躍できる若手リーダーの育成を目指し、IAEA連携でスクールの開催、国際研修などへの参加を支援しています。




原子力をめぐる日本と海外の動向

福島第一原子力発電所事故後の原子力政策は、2012年の民主党政権で「2030年代に原発稼働ゼロ」としていましたが、14年に閣議決定された第4次エネルギー基本計画では「安全性最優先」で「世界で最も厳しい水準の規制基準適合と認可された場合」原子力発電所の再稼働が進められるとしました。ただ省エネ・再エネの導入などによって「可能な限り低減」し、翌年の長期エネルギー需給見通しでは原子力発電比率は20〜22%になっています。18年の第5次エネルギー基本計画でも2030年の原子力の電源構成比目標は変わらず、2050年シナリオでは再エネ、水素、原子力などあらゆる選択肢を追求しながら、原子力について「人材・技術・産業基盤の強化に直ちに着手し、安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求、バックエンド問題の解決に向けた技術開発を進める」としています。そして昨年10月からは第6次エネルギー基本計画の議論が進められています。

日本の原子力発電所36基(建設中含む)のうち再稼働は9基のみというのが現状です。しかも西日本だけなので系統安定の観点からもバランスよく早期に再稼働してほしいと考えています。また設置変更許可取得の未稼働プラント7基のうち、東北電力女川原子力発電所2号機は防災対策、地元理解が完了し、安全対策工事が未完、関西電力高浜発電所1・2号機、美浜発電所3号機、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6・7号機は、安全対策工事はほぼ完了し防災対策や地元理解が未完、日本原電・東海第二発電所は、安全対策工事、防災対策、地元理解が未完です。原子力規制委員会の審査中プラントは11 基あり、多くが断層・地震・津波等の審査中で、そのうち7基の現状は下の表通りです。しかし断層については活断層が「ないこと」を証明する困難な作業であり、多くのボーリング調査や地下構造探査が実施されています。

 


海外では現在、原子力利用国の多くは将来も継続する見通しで、原子力を利用していない国でも将来的な利用の動きがみられます。原子力推進国の中では、アメリカが30年ぶりに新たに原子力発電所を建設し、既存の82基は60年運転、4基は80年運転の認可を取得しています。フランスは原子力発電比率を現在の7割超から5割への低減目標期限を2025年から10年先送りしています。イギリスでは2030年までにほぼ全て廃炉予定でしたが、現在2基を建設中で、ジョンソン政権はカーボンニュートラルのために「原子力は引き続き重要なクリーン電源」と考えています。ロシアは現在3基建設中で海外では36基のプロジェクトが進行中です。積極的に外国技術を導入し国産化に成功した中国では、現在10基を建設中、28基が計画中で、さらに、中国は国産の第3世代原子炉を今年運転開始し、今後は国内向けの量産のみならず輸出も視野に入れていると考えられます。

アジア、中東、東欧では、電力需要の急増とエネルギー安全保障を背景に原子力利用が増加しています。特に中東の産油国での原子力利用は特筆すべきで、昨年UAEでは韓国製造の1号機が稼働しています。ポーランド、ルーマニア、ブルガリアなど東欧諸国は、地政学的にロシアでなくアメリカと協定を締結し新設計画があります。一方、将来的に原子力発電所を閉鎖する方針だったメルケル政権のドイツでは、原子炉閉鎖に対する補償金を巡り事業者と政府が訴訟中、また石炭火力廃止前倒しのため原発運転延長を要求する保守グループもあります。同じく文在寅政権の韓国でも、国家気候環境会議において2050年のカーボンニュートラル達成のため石炭火力廃止の前倒し優先にし、再エネを重点的に取り組みながら天然ガスと原子力を補完的に活用すべきと発表しています。




これからの原子力産業界の課題

日本で原子力発電が将来にわたって一定の貢献をするためには大小の課題があり、まず原子力産業界全体で福島の廃炉そして復興に向き合っていかなければなりません。と同時に発電所の安全・安定運転に欠かせない人材確保・育成が必須です。原子力発電所の長期停止は技術力の維持・継承に影響を及ぼし、職場内訓練の機会減少や雇用確保が困難になっていることが判明しており、また世界最高レベルの技術を有する日本の原子炉メーカー3社の原子炉圧力容器納入実績は1970年代をピークに減少しています。運転継続により発生する使用済燃料・廃棄物対策も課題であり、将来を見据えたイノベーションや、今は下火ですが海外に輸出できるような体制・資金調達方法も視野に入れておく必要があります。





カーボンニュートラル実現のための原子力利用

大きな価値を持つ原子力は、安全性SafetyのSを大前提としながら、1.安定供給Energy Security、2.経済効率性Economic、3.環境適合Environmentの3Eが求められています。1.安定供給について、原子力は燃料投入量に対するエネルギー出力が極めて大きいので、数年にわたって国内保有燃料のみで発電可能な準国産エネルギー源です。原子力の燃料ウランは2.9年分の在庫がありますが、気化しやすく備蓄が難しい天然ガスは約20日分、石油はオイルショックの経験から備蓄政策があり約200日分、石炭は約29日分、しかし化石燃料はタンカーや船で海外から輸送しなければなりません。また再エネは燃料不要ですが広大な土地が必要で、原発100万kW級1基と同じ発電量を得るには山手線の敷地一杯の面積、風力の場合は3.4倍も要します。また2.経済効率性の面では、安全対策費用や事故費用、サイクル費用を含めても運転コストが低廉で燃料価格変動の影響を受けにくく、初期投資額は確かに大きいものの稼働すれば40〜60年という長期間、安価な燃料費で運転し、トータルで莫大な発電電力量を生み出します。


3.環境適合については、原子力は運転時にCO2を排出しないことに加え、電源毎のライフサイクルCO2排出量でも水力・地熱に次いで低い水準で、経産省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」においても、「原子力は安定的にカーボンフリーの電力を供給することが可能な上、更なるイノベーションによって再エネとの共存、水素製造や熱利用など多様な社会的要請に応えることが可能」と定義されています。原子力は大きな価値がありますが、潜在的リスクを顕在化させないためには必要な資源を投入し適切に管理しなければなりません。また原子力の価値に対する国民の理解を獲得する必要があります。それでも世界の多くの国々で原子力の利用が継続拡大して行く中、我が国においてエネルギーミックスの選択肢として一定規模の原子力の維持は重要であり、2050年カーボンニュートラル実現に向けても必須であることから、新しいエネルギー基本計画の改定議論において、原子力発電所の稼働率向上や運転期間延長による既存炉の徹底活用、そして新増設やリプレースについて前向きな言及がなされることが重要になってくると考えています。 




質疑応答

「原子力企業の合同説明会に参加する学生数は2011年以降も意外とコンスタントな理由はなぜか」という質問に対し、新井氏は「原子力ルネサンスと言われた時代には原子力工学以外の学生も数多く来場していた。2011年以降は、原子力工学以外の学生は減ったが、原子力工学の学生は減っていない。これは、廃炉作業を含め今も原子力関連事業の必要性を感じてくれているからだと思う」と答えられました。「原子力の価値を国民に理解してもらうために具体的に何をするのか」については、「今冬の電力逼迫時、原子力再稼働があれば電力不足にならなかったとメディアが取り上げてくれることもあった。手法についてはETTの識者からも多くのアドバイスをもらってきたが、今後はメンバーからの発信も期待したい」と答えられ、また「アメリカでは80年運転認可と聞いたが、実際に可能なのか」という問いに対して、「メンテナンスに多額のコストがかかる場合は、むしろ新規の方が望ましいが、すでにあるものをできる限り長く使う方がいいというのが国際議論の論調だ」と答えられました。立地地域のメンバーから、「日本原子力産業協会として国に対して原子力再稼働をどのようにアプローチしているか」という質問に対し、「国の委員会へ参加する機会もあるので、カーボンニュートラル実現のためには、安全性の確保前提で原子力は必要不可欠だと意見表明して働きかけたい」と答えられました。


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