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原子力特別勉強会③

《日 時》
2021年2月10日(金)13:00〜17:30
《会 場》
経団連会館(東京都千代田区大手町1-3-2)

原子力特別勉強会の講演の三つ目は、富森卓氏(原子力発電環境整備機構地域交流部専門部長)に「高レベル放射性廃棄物の最終処分と最近の取り組み」をお話しいただきました。

講演
高レベル放射性廃棄物の最終処分と最近の取り組み

「人工バリア」と「天然バリア」の組み合わせで人間の生活環境から隔離する地層処分

原子力発電環境整備機構(NUMO)は、2000年に地層処分事業の実施主体として電気事業者等により設立され、法律に基づき経済産業大臣の認可を受けた法人で、地層処分施設の場所の選定、建設、操業、閉鎖までを実施します。放射能レベルが高い放射性廃棄物を扱い、原子力発電所で3〜4年使用した長さ4mほどの使用済燃料からリサイクルの過程で発生する放射性廃液(ウランとプルトニウムはほぼ取り出されており爆発はしない)をガラスと溶かし合わせて、ステンレス容器の中に固化します。現在、ガラス固化体として貯蔵管理中が約2,500本(うち約650本は国内で再処理、残りは英仏から再処理後に返還)あり、今後、原子力発電所などで保管されている使用済燃料約19,000トンをリサイクルすると、ガラス固化体の総数は約26,000本となります。原子力発電の稼働開始からおよそ半世紀で26,000本であり、今後の再稼働による増加も踏まえ、総計4万本以上のガラス固化体を処分できる施設を計画し、日本国内でその場所を探している段階です。



 

ガラス固化体は現在、青森県六ヶ所村などの一時貯蔵施設で、約2mの厚さのコンクリートで放射線を遮断し安全に管理されています。出来上がったばかりのガラス固化体は表面温度が200℃以上あり、放射線量は人間が近づくことができないほど高いものですが、30~50年かけて温度が100℃以下に下がった後に、地層処分のステップに入ります。原子力発電がスタートする時から、世界ではこの廃棄物の問題を検討しており、1957年にはアメリカで、日本でも茨城県東海村で日本初の原子力発電所が稼働した66年以前の62年には既に提言されていました。76年からは国内で地層処分の研究が始まり、99年に「日本における地層処分は技術的に実現可能」と確認されました。他の処分方法については、宇宙処分はロケット発射技術などの信頼性に課題があり、海洋投棄は以前、軍事物資を海洋投棄していた国があったが75年にロンドン条約で禁止、また世界共通の財産である南極での氷床処分も、条約により禁止となりました。地上での管理の継続を求める意見もありますが、地震・津波・火山噴火・台風などの自然災害や戦争・テロなどの影響を受けるリスクがあり、また人類が何万年以上にわたり管理に必要となる技術と人材を維持し続け、コストを負担できるかという重要な課題もあります。

地層処分は、「人工バリア」と「天然バリア」を組み合わせた多重バリアシステムにより、地下300mより深い安定した地層に廃棄物を埋設して人間の生活環境から隔離し、長期にわたり放射性物質の動きを押さえ閉じ込めます。「人工バリア」は3層あり、1つ目は直径約40cmのガラス固化体、2つ目はそれを覆う厚さ約20cmのオーバーパック(金属製の容器)、さらに3つ目の厚さ約70cmの緩衝材(粘土(ベントナイト))でバリアした後に、「天然バリア」となる地下深くの岩盤に一体ずつ間隔を開けて埋設します。地下深部は人間の活動や天然現象から隔離でき、地下水の移動が非常に遅く、岩体は放射性物質を吸着する性質がある上、酸素がほとんど無く金属腐食が起きにくいという利点があります。ただし火山・活断層・隆起や侵食などの影響について詳細に評価し、好ましい地下環境特性が長期にわたって確保できるかを十分に調査した上で、処分場を選定する必要があります。地層処分場の規模は、地上施設が1~2㎢、地下施設が6~10㎢、坑道の総延長は200km程度と見込んでいます。また最終処分の事業費約4兆円は、原子力発電を行う電力会社などが拠出することになっています。





「科学的特性マップ」提示をきっかけに国民への理解を深める活動を強化

最終処分の実現に向けたプロセスとしては、2002年から処分地選定調査の受入自治体を全国で公募しましたが、07年に高知県東洋町から応募はあったものの、その後の取り下げ以降は受入自治体が現れなかったことから、13年に最終処分関係閣僚会議により基本方針が見直され、15年に閣議決定しました。見直しのポイントは、現世代の責任として地層処分に向けた取り組みを推進する一方、今後、地層処分以外の適切な方法が確立できたら方針を見直す可逆性の余地を残し、併せて一度埋めた廃棄物を回収できる技術力も担保するものです。また受入地域に対して、敬意や感謝の念を持って社会的利益を還元することの必要性を国民が共有すること、科学的により適性の高いと考えられる地域を国が提示するなど、国が前面に立って取り組むことも盛り込まれました。17年に国が公表した「科学的特性マップ」では、日本全国で火山や活断層などがあることから処分場に適さない地域(国土の約30%)をオレンジ、鉱物資源があるために将来掘り起こされる可能性がある地域(国土の約5%)をシルバー、残りの約65%をグリーンに色分けしました。グリーンの中でも、放射性廃棄物を長時間、陸路で運ぶのは安全上好ましくないことから、特に海に近い沿岸部は、至近の港から地層処分場まで陸上輸送する際の安全性によりメリットがあります。

「科学的特性マップ」の公表後、NUMOは国と一緒になって全国120カ所以上の地域に出向いて説明会を開催しています。グリーンの地域を重点的に、またオレンジの地域の方々にも事業を応援してもらえるよう、対話型で膝を突き合わせて質問に答えるきめ細かな活動を続けたことにより、理解が深まったという声がある一方で、若年層や女性の参加者が少ないという悩みもあります。既に処分地が決まっているフィンランドでも、選定プロセスの開始当初(1983年)は肯定的な意見はわずか1割、処分地選定時(2001年)でも3割でしたが、直近ではようやく賛否が同程度の水準になっているそうです。また「地層処分事業をより深く知りたい」と考える経済団体や大学・教育関係者、NPO等が全国で約80グループあり、それぞれの団体が勉強会や情報発信など多様な取り組みを実施中です。NUMOはこうした団体に対し、処分場を誘致するか否かにかかわらず、社会全体で解決すべき課題という観点を持ってもらえるよう、あるいは処分事業をより具体的に考えていただけるよう取り組んでいます。調査にご協力いただける地域の皆さまには、処分事業に伴い発生する雇用や経済波及効果、資材・工事・宿泊・食事等のサービスに地元の事業者が参入できる機会の可能性、また道路や港湾の整備・拡充等インフラの整備や、関連産業・関連施設の誘致などの様々な情報を積極的に提供していきます。




地層処分事業がもたらす地域の社会的経済的メリットとデメリットも考慮

処分地は、法律に基づく処分地選定調査を通じて選定され、文献調査・概要調査・精密調査で合わせて約20年の三段階の調査を経て初めて決まります。それぞれの調査後には住民のご意見をお聞きし、知事や地元の市町村長が反対される場合には次の段階には進みません。一方、安全性については、国の原子力規制委員会による審査が別途行われます。NUMOの設立から20年以上が経過し、昨年11月からやっと北海道内の2町村で、処分地選定調査の第一段階となる「文献調査」が始まりました。町長が主導して文献調査に応募した寿都町(すっつちょう)と、国からの申し入れを受け入れた神恵内村(かもえないむら)です。神恵内村は、文献調査の応募検討について地元の商工会から請願がされた経緯もあり、国とNUMOが開催した説明会では、村の将来などについても村民の方々と熱心な議論がありました。文献調査は地質図や学術論文等の文献・データをもとにした机上調査であり、この時点でボーリングなどの現地作業は一行うことはありませんが、この調査に応募しただけで、2町村への風評被害、誹謗中傷が出ているともお聞きしており、私どもも大変心を痛めています。



文献調査では、全国を一律に評価した「科学的特性マップ」よりさらに詳しい地域データを使って、明らかに立地に適当でない場所を除外します。調査結果については関係市町村長と都道府県知事にご報告するとともに、地域の皆さまに説明会の開催、公告・縦覧等により報告し、ご意見を伺います。また同時に、地域の経済社会への効果や影響等について検討を行い、総合的にご判断をいただけるような材料を提供し、想定される風評被害などのマイナス面も評価した上で、地域の皆さまに判断してほしいと思っています。そのためには何よりも地域による主体的な合意形成が図られることが重要であり、NUMOは地層処分事業が地域の持続的発展を支え地域と共生できるように、地域の様々なニーズをお伺いしながら将来的な発展ビジョンを共に考え、その実現に取り組んでいこうと考えています。

諸外国でも、長い年月をかけて地域の理解を得ながら処分地を選定してきました。プロセスの初期段階では、できるだけ多くの地域に関心を持ってもらうことが重要で、例えばスウェーデンは、1977年時点では全国8カ所に文献調査の対象地域がありましたが、およそ30年後の2009年にフォルスマルクを処分地として選定し、11年に施設建設許可を国に申請、現在は安全審査中です。フィンランドは1983年より選定を開始し、2000年にオルキルオトを処分地に決定、15年に処分施設建設を許可、16年より建設が開始されています。アメリカは数年前までユッカマウンテン計画により世界のフロントランナーでしたが、オバマ政権時の2009年に計画が撤回されました。国の進め方に対し地元住民の反対があったためで、物事が順調に進んでいてもボタンのかけ違いから振り出しに戻る可能性もあります。一方、スウェーデンやフィンランドの処分地は、結果的に原子力発電所に近接していることもあり原子力に対する理解度が比較的高く、また地層処分事業の経済的社会的影響については、農業・観光業・不動産価値に対するマイナス影響は少なく、建設ピーク時の雇用創出などプラス面の方が大きいと評価されています。スウェーデンの地元市長が16年に来日した時に、印象的な発言を残しています 。―― 「ゴミ捨て場ではなく“ハイテク技術が集まる工業地域”になるという前向きなイメージを市民と共有できた。これから優れた人材が集まり、研究者や見学者が世界中から訪れることだろう。」 






質疑応答

「一般の人にとって、放射能は怖いもの、高レベル放射性廃棄物はもっと怖いものという概念しかないが、放射能についての基礎の理解がなぜ普及しないのか」という質問に対し、富森氏は「半減期という性質や処分場のバリアにより、次第に自然界のレベルに近づくことを具体的に説明しながら、安全性を理解してもらえるよう取り組みたい」と答えました。また「地層処分地に立候補してもらうためには、将来より今の経済的メリットを感じてもらう方がいいのでは」という意見には、「文献調査だけでも国から交付金が出るのは確かだが、それだけがメリットではない。例えば神恵内村では、近隣の泊原子力発電所で仕事をしている人も多いことから、事業に対する理解が深く、金銭面というよりは人口や仕事が増えるきっかけになることを期待している方も多いと思う」と答えました。スウェーデンにおける地層処分についてのマスコミなどの反響を問われると、「福祉国家であるスウェーデンは国への国民の信頼が高く、国策に対するマスコミの報道も中立的と思われるが、日本は国に対する国民の不信も強く、さらに一部のマスコミがその感情を煽り立てるという一面もあると思われることが残念だ」と述べられました。


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