地域活動紹介

最新情報

2020年度
3月2日
第1回オンライン勉強会
2月24日
石川エネの会 かなざわ
2月16日
福井県女性エネの会
2月10日
2020年度 原子力特別勉強会 ③
2月10日
2020年度 原子力特別勉強会 ②
2月10日
2020年度 原子力特別勉強会 ①
1月15日
岐阜大学・十六銀行産学連携プロジェクト くるるセミナー
12月18日
大阪府立大学
12月10日
2020年度メンバー勉強会②
12月10日
2020年度メンバー勉強会①
12月3日
食のコミュニケーション円卓会議
12月1日
松江エネルギー研究会
11月30日
山口県地域消費者団体連絡協議会
11月21日
のべおか男女共同参画会議21
11月7日
中部エナジー探検隊
11月4日
にいはまエネルギー・環境クラブ
10月29日
フレンズQクラブ
9月18日
NPO法人WARP-LEE NET
9月5日
えひめエネルギーの会
9月4日
NPO法人
あすかエネルギーフォーラム
8月25日
2020年度 メンバー会議 ②
8月25日
2020年度 メンバー会議 ①
2019年度の活動紹介はこちら
2018年度の活動紹介はこちら
2017年度の活動紹介はこちら
2016年度の活動紹介はこちら
2015年度の活動紹介はこちら
2014年度の活動紹介はこちら
2013年度の活動紹介はこちら
2012年度の活動紹介はこちら

 

2020年度メンバー勉強会①

《日 時》
2020年12月10日(木)13:00〜17:00
《会 場》
経団連会館(東京都千代田区大手町1-3-2)

企画委員が企画したメンバー勉強会は、コロナ禍により会場とWEB参加のハイブリッド型で実施しました。私たちを取り巻く状況を大きく変化させたコロナ感染拡大 —— コロナ後の経済、社会、そしてエネルギーはどのような影響を受けて、どのように変化していくのでしょうか? グローバルな視点に基づいた日本の進むべき方向性について、小山堅氏((一財)日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員)と秋元圭吾氏((公財)地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー・主席研究員)にお話を伺いました。今回は小山堅氏の講演をお送りします。


講演 
COVID-19 パンデミックと国際エネルギー情勢

エネルギー問題をめぐる新たな国際情勢

2020年の世界はコロナ感染拡大で幕を開けた激動の1年でしたが、エネルギーの世界には、コロナ禍の影響も含め様々な変化が生じています。50年前は世界のエネルギーの中心はOECDの先進国で、需要の7割を占めていたのに対し、現在は中国、インド、ASEANといった途上国が中心を占めるようになり今後も増加し続けます。また気候変動問題がクローズアップされている中で、革新的技術、イノベーションが問題解決の鍵となりますが、今後、技術革新がどの程度進展するのかは不透明です。最近の国際エネルギー情勢をめぐる地政学では、アメリカ、中国、ロシアそして中東という4つの国・地域が4大重要プレイヤーであり、それぞれの戦略のみならず、相互関係がポイントになります。中でもアメリカは、特に重要なプレイヤーです。トランプ大統領はオバマ前大統領の政策をひっくり返し、パリ協定から離脱、対イラン政策の見直しを行いました。次期バイデン政権は、気候変動対策に対して積極的に取り組むと公約し、またイランとの核合意復帰も考えています。しかしアメリカ上院議会で民主党が過半数の議席を占めなければ、エネルギー・環境に関する重要な法案は成立せず、予算も通りません。


最近の国際エネルギー情勢を巡る地政学



コロナによるパンデミック発生により世界経済は1920年代後半からの世界大恐慌以来、最悪の状態になっています。IMF(国際通貨基金)によると2020年は世界の経済成長がマイナス4.4%。リーマンショックの後の落ち込み、マイナス0.7%を遥かに上回る影響で、エネルギーに対して大きなインパクトを与えています。また、都市封鎖や移動制限でエネルギー需要が劇的に低下しました。私ども(エネ研)の分析では、都市封鎖で、ガス、石炭は約10%の減少ですが、石油については約20%減少となります。2021年も深刻なコロナ感染状況が続くと、需要は底ばいが続き、価格は低迷が続き、エネルギー供給国は困難な経済状況から抜け出せません。2020年4月には、驚くべきことにWTI原油先物取引の価格が史上初めてマイナスをつけました。こうした異常事態を受け、5月からサウジアラビアなどのOPECに加えてロシアも参加して史上最大規模の生産削減が行われ、一方、コスト高のシェールオイルは、自然と生産をストップするしかなくなり、その結果、供給が大きく減って、緩やかに価格が戻りました。しかし、上値は依然として重い状況にあります。需要減と低価格のダブルパンチで、エネルギー産業はコスト削減、支出抑制を図り、投資の大幅削減を行っています。しかし将来的に需要が増加したときに、需要と供給のミスマッチが生じて価格が高騰する可能性もあります。産油国にとっては、コロナ禍の現在、経済の大幅な落ち込みとともに、国内でのコロナ感染拡大で社会情勢も厳しさを増し、国内の体制や政治情勢にも大きな影響が出ています。

*WTI原油先物取引は月ごとに決済日を設けており、5月物の決済日は4月21日だったので、5月物の買い手は4月21日までに先物の売りを行って決済するか、そうでなければ買い持ちの先物原油を現物で受け取る必要があった。現物を受け取りたくない投資家は5月物の売りを急ぎ、お金を払ってでも引き取り手を探す必要があり、マイナス価格をつけた。



ポストコロナの世界はどうなるのか

10月にエネ研が世界の長期見通しの中で「ポストコロナ・世界変容シナリオ」の分析を発表しました。ポストコロナシナリオの世界は、コロナ禍の影響による政治・経済・社会のあり方の変化がそのまま維持・強化されるシナリオです。そこでは、安全保障重視とデジタル化進展の二つの要素がシナリオの中身を左右する点として重要です。安全保障面では、これまで経済効率最優先で作られてきた世界のサプライチェーンを、今後は、自国、同盟国などの影響圏内で配置するようになるかもしれませんし、経済効率最優先からの乖離で、世界経済は成長が低下します。

また社会のデジタル化、情報通信技術の活用によって大きく変化するのが電力化率の上昇です。電力化進展の中で、電力市場の将来を左右する4つの要素は、Decarbonization(脱炭素化)、Deregulation(規制緩和・自由化)、Digitalization(デジタル社会)、Decentralization(分散化社会)となります。この4つは、相互に、また複雑に関係しあい、時には相反する関係に立つ場合もあります。規制緩和・自由化で市場プレイヤーが選択するのは、国や政府が決めるエネルギーミックスより、温暖化対策で批判されている石炭であるかもしれません。電力は、手頃な値段で安定的に供給されることこそ重要ですが、変動型再生可能エネルギーの大幅拡大、自由化の影響、サイバーセキュリティなど、新たなリスク・脅威も念頭に置いた戦略の必要性があると言えるでしょう。




温暖化対策におけるカーボンニュートラルの方向性

温暖化対策について、カーボンニュートラルを巡る主要国の動きを見ると、EUは2050年にカーボンニュートラルを目標に掲げていますが、もともとEUの場合は将来的な経済成長のために「グリーンディール」を進めており、クリーンエネルギー開発を核に据えた長期戦略を立てていました。しかしコロナの甚大な影響からの復興のためにもグリーンディールを掲げるようになっています。また中国は9月の国連総会で2060年のカーボンニュートラル目標表明、日本は10月に菅総理が2050年のカーボンニュートラル目標表明、そしてバイデン政権発足のアメリカも2050年のカーボンニュートラル目標を目指すことになります。日・米・EU・中国・韓国だけで、世界のエネルギー起源CO2排出の約6割を占めているので(2019年)、世界の気候変動政策強化の流れに大きな影響をもたらすと予測されます。他方、カーボンニュートラルは容易な目標ではありません。現時点ではほとんどの国でエネルギー消費の8~9割は化石燃料に依存しています。また、途上国・新興国が、あとたった30年でエネルギー関連のインフラをすべてクリーンエネルギーに入れ替えるのは極めて困難といえるでしょう。省エネ徹底+非化石燃料の使用推進、電力化促進+電力ゼロエミッションという取組みが重要ですが、それに加えて、水素など革新的エネルギー技術の貢献が不可欠になってきます。

「エネルギー転換」にかかる巨額のコストの最小化は重要な課題であり、その取り組みとして我々が注目しているのが、化石燃料の脱炭素化です。サウジアラビアが提唱している炭素循環経済、CCE(Circular Carbon Economy)とは、4つのR=Reduce (大気中に排出されるCO2を削減)、Reuse(大気中から回収されたCO2を化学変化を加えない形で他の用途に利用)、Recycle(回収されたCO2 を化学変化を加えた形で他の用途に利用)、Remove(大気中のCO2を回収して除去)の技術で構成されています。この4R技術を最大限導入し、化石燃料から水素を作り、炭素回収貯蔵技術を組み合わせてクリーンな水素を製造して利用するシナリオでは、CO2排出量はどう変わるかというと、今までのまま(レファレンス)を2050年40ギガトン(Gt)とすると、技術進展シナリオでは25Gtまで低下しますが、CCEシナリオでは20Gtまで減少します。しかもCCEシナリオでの化石燃料の消費量は技術進展シナリオのそれとほぼ変わらない予測になっています。つまり、化石燃料を活用しながら、大幅なCO2削減が可能、ということになります。

*ブルー水素:化石燃料を原料として、生産時に排出されるCO2 をCCSで回収貯留して生産する水素


■世界のCO2排出量(グラフ)
■世界の一次エネルギー(グラフ)



水素は特に発電・輸送部門等で大きな削減ポテンシャルを持ちます。ただし水素を化石燃料から作る際に出るCO2はCCSで地中に閉じ込め、あるいはCO2を使って何かを製造する必要があります。また、水素はLNG(マイナス162℃)よりさらに低い温度で冷却し、液化して日本に運ばなければならないため、コストがかかるのが問題です。そこで、移行コストを下げるため、既存のインフラ活用が注目されています。今、サウジアラビアと日本が協力して行っているブルーアンモニアは、天然ガスからアンモニアを製造する際に排出されるCO2を分離回収して、EOR(石油増進回収)やCCU(CO2回収貯留利用)に利用することから、気候変動対策に有効な燃料として、既存のインフラ・設備を活用して相対的に低コストで利用されようとしています。


左右とも 化石燃料消費量は変わらず排出量は大きく減少 




エネルギー転換は世界を変える

いずれにせよこれからの世界は、従来とは違う新しいエネルギーの未来、Energy Transition(エネルギー転換)の時代に向かっていきます。世界はこれまでにもエネルギー転換を何度も経験してきたわけで、産業革命が起きるまでは人力、動物の力、風車、水車といった自然エネルギーが動力でした。産業革命でイギリス中心に石炭が主役になり、20世紀は自動車の大量普及から石油の世紀になり、現在もエネルギーの中で石油が最大のシェアを占めています。それでも1970年代の石油危機を契機として石油依存の不安定さを体験した世界は、OECDを中心にエネルギーの安全保障対策を図り、石油依存度は低下してきました。そして21世紀は、気候変動を中心とした環境問題への対応やエネルギー安全保障への対応のために、再エネや、先進自動車、そして水素など新たな技術開発と普及が発展するのではないかと考えられています。そしてポストコロナの構造変化によりエネルギー転換を左右する技術を手に入れたものが技術覇権の勝者になるので、米中のみならず世界の地政学を大きく変える重要なファクターだと思います。

そのような世界情勢の中で、日本はどうすればいいのか。日本は非常に大きなエネルギー消費国、輸入国ですが、今後、中国、インド、ASEANなどと比較するとエネルギー需要も減少する中で存在感が小さくなりかねません、そこで、新しい技術で未来の水平を切りひらいていかないと存在感の維持ができなくなります。そのため、次期エネルギー基本計画策定に向けた議論では、コロナによる大きな変動、アメリカ次期政権の政策、世界の気候変動対策など、海外情勢をしっかりと見据えた上で、その不確実性も考慮しながら、2050年のカーボンニュートラルという目標に向かわなければなりません。そして日本のようなエネルギー資源に脆弱な国は、安全のSを基本に、安全保障、経済効率性、環境という3つのEをバランスよく達成させていくベストミックスを引き続き追求していくことが最も大事だと思います。





質疑応答

講演後、会場内とWEBから寄せられた質問の多くは、水素エネルギーに関するものでした。「原子力からCO2フリーの水素をつくることができるのではないか」という問いに対し小山氏は、「原子力大国のフランスでも議論は始まっており、今後は日本でも原子力問題と絡めて議論されて可能性があると思う」と答えられ、また「海外からの輸送にコストがかかるなら、輸入ではなく国内で水素エネルギーをつくれないのか」という質問に対しては、「すでにサウジアラビア、オーストラリア、ブルネイ、アラブ首長国連邦、カナダなどと国際協力の可能性を探し、できるだけ多くの選択肢を持つようにしている。技術的に国内でつくれないわけではないが、日本の再エネ価格は高いので再エネ由来の水素もコスト高になる可能性が高い」と答えられました。そして「日本はエネルギー開発で世界のイニシアチブを取れる分野はないのか」という問いに対して、「水素の分野でトップランナーだが、最近世界の関心が急速に高まっており、うかうかしていると追い抜かれる可能性がある。世界を意識して積極的に取り組み続けないとアドバンテージを保てないかもしれない」と答えられました。



小山 堅(こやま けん)氏プロフィール

(一財)日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、86年同大学院経済学修士修了。(一財)日本エネルギー経済研究所入所。95年に英国ダンディ大学に海外派遣され博士号取得。2007年に理事、戦略・産業ユニット総括に就任。11年、常務理事、20年より専務理事。また東京大学公共政策大学院特任教授、同大学院客員教授、17年からは東京工業大学科学技術創成研究院特任教授。そのほか原子力損害賠償・廃炉等支援機構 競争・連携分科会常任委員、経済産業省総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会長期エネルギー需給見通し小委員会委員、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会専門委員、内閣府総合海洋政策本部参与会議海洋の産業利用の促進PT有識者などを務める。国際石油・エネルギー情勢の分析、エネルギー安全保障問題が専門。


ページトップへ