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寿都町、神恵内村に向けて 

浅野 智恵美氏 chiemi asano
NACS消費生活研究所副所長/環境カウンセラー

原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向け、北海道寿都町と神恵内村が、2020年10月に文献調査を受け入れました。処分場の選定プロセスは、第1段階は既存のデータや論文を用いる2年間の文献調査、第2段階は実際に地面を掘る4年間の概要調査、第3段階の地下施設をつくる14年間の精密調査へと続きます。

先日、Zoomを利用し、神恵内村の方々からお話を伺う機会を得ました。文献調査の進捗状況について、理解を深めることができました。迷いや戸惑いの中、住民が対話の場に参加することは、多大な労力と勇気がいります。神恵内村で生まれ育った女性は、この問題を自分事として捉え、学習し、判断していきたいと仰っていました。主役は住民と感じました。もう一人の男性は、村民約800人に情報が十分届いていないのではと発言されていました。当該地域で議論を深める上で、文献調査を2年とする位置づけは少々短いように思いました。

今後の方向性を決める上で、処分地受け入れの是非を問う議論は非常に重要です。しかし、村には電話やメール、SNS等を介し、厳しい言葉による反対意見が全国から届いているようです。平穏に暮らしていた村民は、これまで経験したことのない全国メディアの新聞社やTV局から取材を受け、生活がかき乱されている側面も垣間見えました。神恵内村、寿都町の方々に、大変なご負担が掛かっています。

その様な中、神恵内村ではふるさと納税に添え、文献調査を受け入れたことへの感謝や応援メッセージが寄せられているとの事。人と人の繋がりの温かさを感じました。処分場選定と地域共生の有り方について、この問題を全国で捉え、文献調査を受け入れた自治体住民を社会的側面から支援していく施策が必要と思いました。

高レベル放射性廃棄物をいつまでも地上に置いておくことは、リスクが伴うと考えます。将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任で処分地を決めなければなりません。蚊帳の外で見届けるという立場を取らず、勇気と将来ビジョンを持って文献調査を受け入れ、真摯に議論を重ねている神恵内村、寿都町の方々に、私たちは感謝しなければならないと痛感しました。

(2021年10月)

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