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太陽光発電の環境問題

中村 浩美氏 hiromi nakamura
科学ジャーナリスト/ 航空評論家

富士北麓に居を移して2年半になる。山梨県は霊峰を望む富士五湖、南アルプスなど素晴らしい景観に恵まれている。季節ごとに果樹の花が咲く甲府盆地もいい。それらを満喫する日々だけれど、県内をドライブしていて気になることがある。それは休耕地や山の斜面に点在する、太陽光発電のパネルだ。特に小さな土地に無理やり設置したように見えるソーラーパネルには、違和感がある。

山梨は日照に恵まれた県だ。とりわけ北杜市は日照時間日本一を標榜しており、市内には出力10kW以上の太陽光発電設備が2,000以上もある。その北杜市には「太陽光発電設備設置と自然環境の調和に関する条例」があり、令和元年10月1日から施行されている。『豊かな自然環境及び美しい景観並びに市民の安全・安心な生活環境の調和を図り、もって魅力ある地域社会の実現に寄与することを目的』として、太陽光発電設備の設置に規制を設けた条例だ(建築物の屋根または屋上に設置するものは除外)。しかし住民には、規制強化を求める声が根強くある。樹木を伐採した山の斜面へのパネルの設置などの結果、森林の保水力低下による土砂災害や自然環境への影響を懸念するためだ。

11月15日に北杜市長選挙が行なわれた。新人の上村英司氏が、現職や他の有力候補との激戦を制し初当選した。新市長は「市民の声をしっかり聞くという主張が届いた」と勝因を語ったが、その声には太陽光発電への規制強化も含まれる。また北杜市の住民からの要望を受けた長崎幸太郎知事は、県の条例を新たに制定する方針を固め、県内の太陽光発電を規制する具体的な内容を今後検討するという。

菅政権は2050年カーボンニュートラルを宣言した。再生可能エネルギーの最大限導入が、そのための要件の一つだ。太陽光発電は、再生可能エネルギーのエースではあるけれど、従来から指摘されている供給安定性やコスト以外にも、環境問題という課題も抱えていることを忘れてはいけないだろう。

(2020年11月)

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