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産油国と輸入国の対CO2姿勢

茅 陽一氏 youichi kaya
東京大学名誉教授/(公財)地球環境産業技術研究機構顧問

最近の新聞報道などをみると、サウジアラビアなどのいわゆる湾岸産油国の最近の動きの中では、国内での石油や天然ガスなど化石燃料の消費を抑制する動きが目立っているようだ。このことは、これらの国々が従来化石燃料の生産販売で食べてきたのでちょっと不思議なようだ。しかし、この地域は、面積が大きくまた乾いた気候で日照が大きいのでどこでも太陽光発電や風力発電を大幅に拡大できる。また、需要面でも電気自動車の導入には高い関心が払われているようで、その意味ではこの地域の国々も温暖化という地球全体の問題の解決へ協力的といえ、大変望ましい傾向ということができよう。また、この11月にエジプトで第27回国連気候変動枠組み条約会議(いわゆるCOP27)が開催される予定で、これもこの地域の国々の温暖化対応姿勢の高まりを示す好例として世界で好意的に受け止められている、といえるだろう。

しかし、だからといって彼らが生産する石油や天然ガスという従来からの化石燃料資源の輸出まで抑制しよう、というのは彼らの経済の維持発展の手だてを抑え込むことでこれは無理なことだろう。むしろ、先進国がそれらの化石燃料資源を従来同様に購入し利用していくことは彼らの財政バランスのために望ましいことではないか。

ただ、そういうとその化石燃料資源から出るCO2はどうするのか。そこで温暖化の抑制、という地球環境の維持のためにこのCO2をどう削減するか、という問題になる。この化石燃料を先進国がただ消費しCO2を大気に放出する現状を放置したのでは地球温暖化は進んでいくしかない。だから、先進国が湾岸産油国などから化石燃料を購入すると同時にその排出するCO2を回収貯留するといういわゆるCCSの大幅導入は地球環境保全のための当然の義務ではないか。先進国のCCS導入は 決して進んでいるとはいえないが上記の意識が先進国内で一般化することをあらためて望む。

(2022年11月)

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