私はこう思う!

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アメリカの住宅停電に想う

隈部 まち子氏 machiko kumabe
ヒューマン・エコノミスト

エネルギーというと、国家レベルの潤沢な供給量ばかり気にしてしまうが、それでいいのかと想わせることを最近耳にした。

友人のカレンはニューヨーク市郊外の閑静な住宅地に住んでいる。昨年9月の夜、バンという鈍い音がして停電した。あちこちで電線が切断され垂れ下がり、向かいの家では火災が発生した。カレン夫妻はすぐに避難、冷凍庫の牛肉を含めて食料品は全てダメになった。実際に何が起きたかは、電気に疎いカレンの話でははっきりしない。この私も経済学で、後に理系に転じたとはいえ浅学な医学で、電線のことは全く分からない。

問題はこの先だ。カレン夫妻は大手企業に勤め良い保険に加入しており、キッチンとリビング付きのホテルのいわばスイートルームに無料で滞在することができた。しかし、1~2カ月経っても修復工事は遅々として進まない。結局クリスマスを過ぎ、年明けに修復工事が終了した。停電復旧に3カ月もかかるとは日本では考えにくい。二人が怒らず冷静に帰宅を待ったことも不思議だ。

ETTでの勉強によると、電気は光と同様に秒速約30万kmで移動し、貯蔵はできないので、消費量と発電量のバランスを常に保つ必要がある。失敗学会の失敗年鑑によると、電力消費量が急増すると、付近一帯に電力動揺を引き起こす。さらにアメリカエネルギー省によると、アメリカの送電線網の約70%は25年経過しており老朽化が進んでいる。原因はこれかもしれない。

マクロの国家レベルの供給量が確保されていても、復旧工事の効率性の良し悪しで、消費者への供給が左右される。住宅停電はミクロのエネルギー量でも、当該の消費者にとっては大いなる供給量である。マクロエネルギー供給量と同時に、エネルギー復旧効率もエネルギー供給の安定性に欠かせない価値ある安心材料であるのではないか、と私は想う。

(2023年5月)

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