私はこう思う!

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「No!」を選択肢に加えよう

日景 弥生氏 yayoi hikage
学校法人柴田学園常任理事/国立大学法人弘前大学名誉教授

弘前市教育委員会委員を務めている。以前から気になっていた学校に設置されている太陽光発電設備について、折あるごとにデータ提示を求めていた。やっと示されたデータは、予想をはるかに超える結果だった。

それによれば、弘前市立小・中学校計50校のうち太陽光発電施設が導入されているのは13校(26%)で、設置目的は、再生可能エネルギーの活用6校、教育目的6校、避難施設・防災拠点の非常用電源7校(1校に複数の目的あり)であった。

再生可能エネルギー設備等の設置状況に関する調査結果(文部科学省2018年)によれば、太陽光発電設備の設置数は2009年の1,202校から2018年は9,022校と約7.5倍(設置率は31.0%)に増加し、停電時でも使用可能な機能を有している設備の割合は58.6%になっている。東日本大震災で危惧されたエネルギー不足が、学校における太陽光発電設備の導入を加速させたようだ。しかし「太陽光発電設備は、交付目的である地球温暖化対策への貢献、経済的効率性、環境教育への活用、防災上の効果は低調な状況であり、それらが図られるよう改善の処置を要求する」(会計検査院2012年度決算検査報告)としており、設備は充分に活用されているとは言い難い状況も見受けられる。

一方、都道府県別年間日照時間ランキング(2014年)によれば、1位は埼玉県の2,366時間、青森県は44位で1,735時間であり、日照時間は埼玉県の約73%である。 また、弘前市における月別日照時間(1987~2010年)は、最高は5月の201.4時間、最低は1月の57.0時間で、約4倍の違いがある。日照時間の影響は、提示された資料からも読み取れる。例えば、各学校における「施設電気使用量のうち太陽光発電が占める割合」は、最低値はひと桁台、最高でも30%にも届かず、「年間削減コスト」からは、設備投資の回収には今年誕生した子どもの平均寿命をはるかに上回る。考えられない費用対効果である。

再生可能エネルギーの効果的な活用に異論はないが、設置前の専門家を含む多面的かつ多角的な検討と、結果によっては「設置しない(No!)」という意思決定も必要である。貴重で有限な資源(税金)を投資するのだから・・・・。

(2021年1月)

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