私はこう思う!

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タンカーのおはなし 

金田 武司氏 takeshi kaneda
(株)ユニバーサルエネルギー研究所 代表取締役社長

コロナ危機でタンカー会社が儲かっていると聞いた。

「風が吹けば桶屋が儲かる」という話は知っている。どうもこう言うことらしい。「コロナで原油や天然ガスの需要が減ると、タンクが減らない。タンクが減らないと到着したタンカーが荷を下ろす場所が無い。荷を下ろす場所が無ければタンカーをタンク代わりにして海上に貯蔵する」。

日本は世界最大のLNG輸入国なので価格が安くなったら日本は一番得すると思ったらそうでもないらしい。それは、日本は安定供給のために長期契約しているので突然安くなってもメリットが無いのだ。しかも余ったLNGを売ることが出来ないばかりか暴落した市場で売れば「逆ザヤ」となる。

そのコストは消費者が払うことになる。コロナによる暴落は凄まじく、一時はマイナスの価格となった。マイナスの価格というのは「ガスもあげるしお金もあげる」と言うことだ。遠くペルシャ湾からわざわざ持ってきた有難い石油や天然ガス。全く理解不能の事態が起きた。

これで「よっしゃ!」と思ったのが中国らしい。日本のユーザーが困り果てているのを尻目に、中国は国の号令のもと颯爽と巨大タンカー84隻を一斉にペルシャ湾に向かわせた。安いうちに「爆買い」と言うことだ。どうなってるのだろうか。需要が安定している日本は需要に応じたタンカーしか無いが、中国のようにエネルギー需要がうなぎ登りの国は「今すぐ欲しい」という需要も莫大で、すぐにタンカーが用意できるのだという。

コロナ危機で莫大な富を得る企業もあれば国もある。エネルギー情勢の真の姿はタンカーを通じて見えると思った。「自給出来ない国が貯蔵もできない資源に頼り続ける」ということを考えさせられる事件だった。次は「食料」かも知れない。バッタも控えている。世の中は複雑になっている。

(2020年7月)

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