私はこう思う!

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太陽光発電と農業 

伊佐 真理子氏 mariko isa
PRプランナー/ノア・コーポレーション代表

コロナの波も少しおさまったこの頃、県外出張も少しずつ増えてきた。新幹線で移動する時は、車窓からいろんな町並みをぼーっと見るのが、私の心安らぐひと時でもある。そうやって眺めていると、なんとまあ、太陽光発電を取り付けているお家が多いことか…。今や、一生活者が、カーボンニュートラルの活動に参加すると言ったら、エコカーに乗るとか、使い捨てのプラスチック製品を使用しないとか様々な取り組み方があるが、太陽光発電も身近な取り組みの一つなのだと感じる光景だ。

そんな中で、最近気になっていることは、今まで田畑であったようなところに大掛かりな太陽光パネルがぎっしり設置されているのをよく目にすることである。よく見ると、その下で農作物が栽培されている。これは、営農型太陽光発電=ソーラーシェアリングというものらしく、太陽光を農業生産と発電とで共有する取り組みのようだ。農作物の販売収入だけでなく太陽光で発電した電気を売ることで安定した収入が見込める。また、ボイラーを焚いてハウス栽培をする場合などは、電気をそのエネルギー源に置き換えることもできるということで、農林水産省もサポートしている事業らしい。

野菜や果物を買う生活者からすると、「作物には太陽光が必要なんじゃないの」とか「陽が当たってない作物って安心して食べられるの?」と思ってしまうが、作物にとっては一定量以上の太陽光は光合成に利用されていないという限界点があるとのこと。さらに、作物には「陽生植物」「半陰性植物」「陰性植物」と、太陽光をたくさん必要とするものとそうでないものがあるということも知り、「そういうことでこの農法が存在するのか」と納得した。

営農型太陽光発電を行うには多くの届出や約束ごとがあったり、イニシャルコストがかかったりすることの情報はインターネットでも得ることができ、これらをクリアすれば、取り組むことができる。良いことずくめの営農型太陽光発電。しかし、何らかの理由で辞めざるを得ない時のことを、関係する人々は考えていらっしゃるのだろうか…と不安も覚える。

私は、農業・農村の振興に関する地域活動を支援する「NPO法人ハーヴェスト」で熊本の棚田の再生や耕作放棄地の手入れなどの活動もしている。直近では、耕作放棄の梨園の整備を行った。草を刈り、山から侵食する竹を刈り、枯れた梨の木を伐採し燃す。多くのボランティアの方の力をお借りして行う大変な作業だ。それでも、鉄骨の梨棚は残して、次の農作物を作るのに利用してもらおうということになった。草や竹や枯れた樹木は燃して自然に返せるが、建造物は本格的な撤去作業が必要となる。

かなり以前のことになるが、ETTで東京夢の島のゴミ最終処分場を見学させていただいたことがある。その時の案内してくださった所長さんが「地球上の生物で、自然に返らないゴミを出すのは人間だけ」とおっしゃった言葉が、20数年経つ今でもずっと耳に残っている。営農型太陽光発電の施設がしっかり管理され、有効利用されて、『人間しか出さないゴミ』にならないことを願っている。

(2021年12月)

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