私はこう思う!

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時間の多様性とエネルギー消費時間の多様性とエネルギー消費

槇村 久子氏 hisako makimura
京都女子大学 宗教・文化研究所客員研究員

「エネルギーサフィシエンシー」という言葉を前回コラムで中上氏から紹介いただいた。
「現在の脱炭素社会の議論が、あまりにも供給側、科学・技術サイドに偏り過ぎているのでは」というご意見に共感した。

日本は何度かのエネルギー危機を迎え、さまざまな省エネ技術が進んだ。家庭では家電製品の改良に目を見張り、水量が少ない洗濯機、省エネの冷蔵庫、空調機器など。道路も住宅地の街灯も、公共空間やオフィスは照明機器がLEDに置き換わっていった。そして家庭もLEDに代わり、屋根にはソーラーパネル。こうなるとエネルギー消費に安心感が生まれてしまう。しかしウクライナとロシアの戦争により電気代やガソリン代が高騰したことで、エネルギー問題は自分事になったようだ。

エネルギーサフィシエンシーは、私たちの暮らしのあり方や社会活動の見直し、多種多様な暮らしを考えることなどを求めている。

私は“多様な時間を楽しむ”ことを以前から伝えている。いま日本は超高齢化社会(少子高齢人口減少)に入り、生産年齢階層だけから、多様な世代が働き暮らすようになった。これまでの人生はおよそ20歳まで20年間勉強し、60歳定年まで40年間働き、80歳まで20年間老後を楽しむという生活だった。それが寿命は90歳近くなり、定年の考え方も変わってきた。どの年齢階層も仕事も遊びも自分のライフスタイルを創っていけばいい。例えば、高速道路では自動車でスピードの効能があり、自転車道ではサイクリングで風景を楽しむ、歩道では歩きベンチでゆっくり休むとか。時間の流れの違いと楽しみがある。

脱炭素社会を進めるには、これまで多くのエネルギーを使う生き方から、生きていくための生産時間を最小にする生き方の、両者の間のどこかでバランスをとる位置を決めていく。それには歩くことが楽しめる街、都市に身近な自然を、サイクリングで遠出できる道もいい。

一方、技術や科学の進歩は超スピードで進んでいる。地球を離れ、宇宙空間へ生活も進みつつある。夢のエネルギーと言われる核融合発電の可能性は今後どうなっていくのだろうか?

(2024年3月)

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