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豆腐とアイスクリームの期限表示から考える、食品ロス削減

浅野 智恵美氏 chiemi asano
環境カウンセラー/消費生活アドバイザー

食品の期限表示には、過ぎたら食べない方がよい期限の消費期限と、美味しく食べることができる期限の賞味期限があることは、皆さんご存じと思います。

豆腐は、以前は消費期限が4~5日程度で、傷みやすい食品というイメージでした。現在も個人商店や小規模のお豆腐屋さんは、消費期限表示を行っていますが、最近はスーパーなどで賞味期限表示の豆腐が、多種類販売されるようになりました。大手の豆腐製造事業者は配送・物流を含めて商品を一括管理し、商圏が全国区に広がっていることなどから、豆腐のバリエーションが増えているようです。

豆腐を大規模工場で製造する事業者は、製造技術の進歩により、衛生環境の整備やオートメーション化に取り組まれています。工場内に埃などが浮遊しないクリーンルーム化を進め、性能のよい機械を導入。HACCP*で重要管理ポイントとなる菌の増えやすい加工工程のロボット化など、衛生的な商品作りを構築し、推進されています。これらの取り組みにより、豆腐の期限表示を消費期限から賞味期限に変更し、かつ賞味期限の日数を伸ばす企業努力は、食品ロス削減に繋がっています。

一方、アイスクリームは-18℃以下で保存すれば細菌が増殖しないため、賞味期限表示の省略が食品衛生法で認められています。そのような中、一部のアイスクリーム製造業者が数年前から賞味期限を導入しています。その背景の一つに、消費者の「食の安全」への要望があります。これにより、パッケージに表示された賞味期限をもとに、流通段階から販売、家庭を含むフードサプライチェーン全体で、アイスクリームの過剰廃棄による食品ロスの発生が懸念されます。

期限表示の設定のあり方は、食品ロス発生につながる要素を大いに含みます。期限表示の意味を正しく知れば、食品を無駄なく食べきることができます。併せて、原料調達から製造、運搬、販売に掛かる多大なエネルギー消費や、製造元、卸売り、販売事業者の倉庫や家庭の冷蔵庫での保管に掛かるエネルギーと、食費の無駄遣いを防ぐことができます。「パリパリの最中アイスを食べたい!」のであれば、商品本来の美味しさを味わうためにも、購入後なるべく早めに食べることが重要です。

食品ロス削減は、世界的な課題の一つです。わが国においても、法律の制定や商習慣の見直し、事業者による食品の保存性を高める新容器の開発など、様々な取組が進められています。

ところで、牛乳の期限表示は消費期限、それとも賞味期限でしょうか?ご家庭の冷蔵庫に牛乳がありましたら、ぜひ確認してみてください。毎日頂く食品の期限表示に、今一度着目してみましょう。

*HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)
食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理手法。
(出典:厚生労働省)

(2023年8月)

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