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今こそ原子力発電所の考察を

沖陽子氏 yoko oki
岡山県立大学理事長兼学長/岡山大学名誉教授

「晴れの国おかやま」にも春の足音が近づいてきた。岡山を「晴れの国」と呼び始めたのは平成元年からで岡山県のトータルイメージを表現している。降水量1ミリ未満の日が全国第1位で、温暖な気候で災害が少ないという事実に基づいているが、ここ最近の気候変動から、平成30年西日本豪雨による真備町の水害はいまだ記憶に残る大災害で、平成の時代を経て岡山でさえ安全な地域ではなくなっている。とはいえ、かつて『東洋一の塩田』と言われた岡山県瀬戸内市の錦海塩田跡地500haに、日本最大級の235MWの太陽光発電所「瀬戸内Kirei太陽光発電所」が建設され、2018(平成30)年10月から稼働していることは、2050年カーボンニュートラルを目指す、日本の新たな「エネルギー基本計画」に即した誇るべき地域資源を生かした事業である。

さて、2021年10月に「第6次エネルギー基本計画」が発表された。そこでは新たなエネルギーミックスの目標が設定されている。いずれもハードルは高いが、需要側の国民の省エネへの意識改革が重要であることはいうまでもない。

具体的にカーボンニュートラルにどう関われるかを考えた場合、私の立場では地域で大学が先駆ける「ゼロカーボン・キャンパス」と計画づくり等に大学が関わる「地域ゼロカーボン」に関心が向く。現在、カーボンニュートラル宣言大学が増えつつある。最先端技術開発等の研究推進に貢献する大学もあれば、キャンパスを社会実装の場として大学で使うエネルギーのカーボンニュートラルを実現しようとする大学もある。大学の第3のミッションとして地域貢献が定着し、特に地方大学はこれからの地域を牽引する人材育成が望まれており、このようなゼロカーボン・キャンパスで育った人材は地域カーボンニュートラルをスムーズに受け止めることができる。

一方、「カーボンニュートラル宣言」をした地方自治体も多いが、いまだ住民がどれほど、その意味を理解しているかは定かではない。カーボンニュートラル実現には、技術イノベーションのみならず経済社会イノベーションが不可欠であり、教育研究・社会貢献活動を通じて、知の拠点となる大学の役割に大きな期待が寄せられるのは当然である。国、自治体、企業、国内外の大学等との連携強化を通じ、その機能や発信力を高める場として、「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」も立ち上がっている。

大学が変われば人が変わる。人が変われば地域が変わる。この流れをはやく具現化することで脱炭素社会の実現が可能となる。我々は頑張るしかない。

(2022年3月)

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