私はこう思う!

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高レベル放射性廃棄物の文献調査が始まって

山口 博美氏 hiromi yamaguchi
消費生活アドバイザー/消費生活専門相談員

私は北海道で新しく生活を始める人には「北海道は広いから〇〇管内というエリア分けを覚えたらいいですよ。」と伝えている。北海道庁は明治から本庁と出先機関の支庁を設置し、2010年に14の支庁は9総合振興局と5振興局に改称されたが、この管轄区域が北海道の地域区分にも利用されているからだ。天気予報も地域ニュースも市を除けば〇〇管内〇〇町(村)と表現される。

昨年11月、ニュースは後志(しりべし)管内寿都町と神恵内村で高レベル放射性廃棄物の最終処分場の文献調査が始まったことを伝えていた。後志管内は南西部の1市13町6村で構成され面積は山梨県や福井県とほぼ同様、私が暮らす小樽や国際的観光地のニセコ、北海道電力泊発電所も同じ管内となる。海の幸、山の幸、おいしい水、温泉にも恵まれた地域だ。

私はこれまで高レベル放射性廃棄物の最終処分事業について国や原子力発電環境整備機構(NUMO)、専門家らの説明を聞き参加者相互で話し合う場や施設見学等で理解を深めてきたつもりだったが、ふりかえると電気を使う消費者としてどこまで自分事として考えていただろうか。

寿都町と神恵内村の文献調査が始まったことで報道を通して道民の声を知る機会が増えた。その声は高レベル放射性廃棄物や処分方法に対する科学的な不安だけではない。北海道ブランドに対する風評被害や観光への影響を心配する声には共感するし、意見の相違で住民が対立した話や、軋轢を避けてあえて本音を語らないという声を聞けば、平和に暮らす住民に混乱をもたらす難しい問題なのだと改めて感じさせられる。

NUMOは、これから住民の代表が参加する「対話の場」で調査の進捗や国の補助金などを活用した地域振興策について説明するとし、道内各地の様々な団体もこの問題を取り上げ始めている。地域住民の声を聞き議論を深める環境づくりが進められると思うがその声が広く社会に共有されることを願いたい。

(2021年2月)

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