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“電力システム改革”を改革せよ!

石川 和男氏 kazuo ishikawa
社会保障経済研究所代表

電力会社の使命は、電力の「大量・安価・安定供給」のはず。
2016年の“電力システム改革”という美名の制度変更で、小売全面自由化に伴う他の大手電力や新電力との競争が激化。発送電分離も行われ、原子力や火力、水力など大型発電事業への投資意欲は相当低下。
この制度変更による経過は惨憺たるもの。電気料金は高止まり、安定供給力は削がれ、人材難は少子高齢化もあって深刻さを増す。
23年7月時点で、国全体の販売電力量に占める新電力シェアは16.5%、うち家庭など低圧分野は26.1%。大手電力とその子会社の域外進出は2.6%。
小売会社数は一時激増したが、最近は減少傾向で、23年10月末時点で731。このうち23年10月末時点の事業休止件数は25件、自由化以降の事業承継は累計で140件、事業廃止や法人の解散等は99件。
16年4月時点で供給実績ある事業者数は199で、23年10月時点では536へと増加。
電気料金平均単価は、電力自由化第一弾(1994年)当時に比べ、再エネ賦課金と燃料費を除いた要素を比べると、2022年度は33%低下。東日本大震災以降、燃料費増大や再エネ賦課金導入で、10年度に比べ65%上昇。22年度の平均単価は震災前と比べ、家庭向けは59%上昇、産業向けは92%上昇。
ここ1年の大手電力の電気料金は、23年12月請求分の家庭用単価が昨年同月比16%低下。昨秋からの燃料費高騰で高止まり状況が続いたが、政府補助金措置や燃料価格下落により、23年7月請求分の規制料金の改定以降も低下傾向。
16年の制度変更は、それ以降の電力市場の動向を俯瞰しても明らかに失策。今後は、原子力・火力・大型水力という安定電源の安定運営に向けた制度改正や、乱立する新電力の統廃合を図る必要がある。数多ある再エネ事業の集約化に向け、『太陽光・風力』群を一括管理する体制を構築するとともに、EV市場との連動などによって過剰に発電された再エネ電気の『逃げ場需要』を創出していくのが合理的。
要は、今すぐ、“電力システム改革”なるものを改革しなければならないという話。

(2023年12月)

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