私はこう思う!

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「リスクとコストとパフォーマンス」を考えるということ

近藤 三津枝氏 mitsue kondou
学校法人甲南女子学園理事

私たちの生活を支える道路・鉄道、上下水道・ガス・電力などのインフラは経済成長期に多くが建設され、老朽化などの「リスク」を抱えています。例えば、全国の道路橋梁をみれば、建設後50年を超える橋梁は全体の40%以上を占めるに至っています。

また、コスト面ではこれまでの当初の建設費にばかり注目するのではなく、「ライフサイクルコスト(LCC)」が重要になってきています。例えば、建物のライフサイクルコストは、当初の建設費に加え、使用後の水光熱費、点検・保守・修理などの維持管理費、大規模な修繕費用、解体処分費などが含まれます。そしてライフサイクルコストに占めるそうした費用は、当初の建設費の3~4倍を占めるといわれています。初期建設費は、その後の建物の長い利用期間を含めたライフサイクルコストでみれば、氷山の一角というわけです。

このように、インフラや建物に求める利便性、快適性、サービス水準などの「パフォーマンス」を保ちながら、「リスク」と「ライフサイクルコスト」を如何にして低減していくかが重要となっています。

戦後、高度成長期から続いた「建設の時代」には、多くの企業などが品質マネジメントを認証取得し、顧客のニーズや要求に応えた品質を確保したマネジメントに取り組んできました。

しかし、今や「インフラ、建物などを守り、育てる時代」に大きく転換しようとしています。こうした時代に対応した国際規格が新たに発行されています。資産の管理が適切に実施され、目標を達成するための組織経営の仕組みを定めた規格です。

成熟した「インフラなどを守り育てる時代」には、未来を見据えた、ライフサイクルを視野に置いたマネジメントが重要になってきています。

インフラのオーナーである企業や自治体は、これらの規格を取得するだけではなく、ライフサイクルに亘って「リスクとコストとパフォーマンス」のバランスのとれたマネジメントを、実際の活動に取り入れ社会的に実証していくことが、インフラの長寿命化にとってはとても重要であると考えています。

(2023年7月)

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