私はこう思う!

INDEX

非日常の中の日常――福島第一原子力発電所を視察して

田中 裕子氏 yuko tanaka
ジャーナリスト/フリーアナウンサー

雪国の暮らしも35年を越した。たしかに冬の生活は厳しい。エネルギーも必要だ。 若い時は子供達とスキーをするなど楽しんだものだが年をとるに従い苦しいものになってきた。

10数年前から休暇はまとめて一番寒い2月に南の島ハワイでとることにしている。今年は大病をした夫の療養も兼ねて一月余りをここで過ごしている。一年を通じて27、8度というこの島でコンドミニアムでの自炊生活を楽しんでいる。

されど消費大国アメリカにおいて省エネ大国日本と言われる日本人の暮らし。それも筋金入り省エネを実践をしている者にとっては、気になることばかりだ。どこに行くにも羽織るものが必要という冷房の使い方、一回の買い物で何枚も増えるレジ袋、レストランでの小袋入り調味料、使い捨てのプラスチック食器など日本では考えられないほど無駄に溢れている。 アメリカはいうまでもなく資源大国なのだと改めて思う。

資源小国日本が戦後間もなく、どんな思いで原子力の研究を始めたのだろうかと思いを馳せる。 冷たい目で見られていたに違いない原子力を、科学者と技術者を中心に60年の間、育て支え続けてきたのだ。そこには日本人の真面目さ、勤勉さ、科学する心、もの作りに対する伝統があることは否めない。(発光ダイオード、小惑星探査機はやぶさ・・・どんなに誇らしく思ったことか!)

日本は世界一の原子力発電の技術を持っている。失敗も含めて、これから設置する国に、きちんと継承していく責任がある。「失敗しつつも確実に進歩してきたのだから」

「原発が一基も稼働しなくてもやっていけるではないか」、とんでもない。老朽火力を懸命に稼働させCO2の増えるのに目をつぶり、必死で停電を避けるため頑張っている人達を私は知っている。「トイレのないマンションと同じ」、そんなことはない。今の時点で地層処分という処分の方法は確立されているのにエネルギーを使うだけ使って、その処分場を作ることに耳を貸さない人達。

日本を離れ青い空と青い海、大きな人達に囲まれて過ごす暮らしの中で、今、私は日本への愛おしさと歯がゆさにつつまれている。

(2015年2月末)

ページトップへ