私はこう思う!

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日本の技術力を信じたい

高木 美千子氏 michiko takagi
エッセイスト/旅行作家

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故から1年10カ月余り、住み慣れた土地を追われ、家族も離散して2度目の新年を迎えた方たちをはじめ、防護服を身につけて現場で働く方たちを思うと、胸が締め付けられる。あの事故のニュースに接して以来、原発は是か非か、今後のエネルギー政策は…と、私は考え続けている。

長い間、ETTのメンバーとして、各地の原子力発電所を見学、「安全」「安心」の説明を受けながら学んできたことは何だったのか。大きなプールのような施設の水のなかで保管されている高レベルの使用済み燃料やドラム缶に密閉された低レベルの廃棄物を見ながら、これがどんどん増えていったらどうするのだろうなどと考えていたことを思い出す。

私はいま大阪の下町に暮らしている。あの年、夏の電力不足に対する節電要請に近所に住む主婦たちは必死だった。

「いつでもお湯が沸いている電気ポットをやめたら、電気料金が5千円も安くなったわ」「うちでは炊飯器も土釜に替えたの」「クーラーもほとんど使わず網戸にして窓を開けたらなんとか暮らせてる…」こうした女たちの会話をどれだけ聞いたことだろう。原発が再稼働されないことを願う彼女たちの思いを、メディアのせいにしたり、センチメンタルという言葉でくくることはできないと思った。

一方日本の産業を活気づけるために安定した低価格の電力の供給が必要なことを思えば現状での化石燃料購入費用の海外流出、天然ガス購入価格の上昇、CO2の排出…。これらの問題をかかえてこれからどうなるのか。なにかと不安はつのる。

その時、産経新聞のトップを飾った記事に目を見張った。「超電導線で超節電」「原発3基分カバー」「関電・住友電工月内に送電実験」という見出しの文字。他国に比べ遅れていた日本の超電導線への取り組みがまさにはじまろうとしている。その気になれば地熱発電、エネファーム、海底資源、まだまだありそうだ。日本の技術力に期待したい。

(2013 年1 月末)

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