私はこう思う!

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500万年前のロマン

出光 ケイ氏 kei idemitsu
スポーツキャスター

羽田空港から2時間弱のフライトで稚内へ。着陸寸前には利尻島が間近に見え、大自然に歓迎されたかのようでした。

目的地は雄大なサロベツ原野も擁する幌延町。幌延深地層研究センターでは、高レベル放射性廃棄物・地層処分技術の研究が、日夜じっくりと積み重ねられています。専用のエレベーターで降下すること約4分。最終処分に関する法律の規定よりも50m深い地下350mの世界は、意外と暖かくて穏やかでした。八の字型に作られた757mの坑道をゆっくり歩くと、壁に湧水の跡が見られる所もありますが、これには岩盤に穴を開け、セメントなどを充填するクラウドという技術で対応。堆積岩の地層に必ず存在するメタンガス対策としては、地上との換気やガス検知器はもちろん、点火源にならない機器を使用しているのだそうです。

日本では、ガラス固化体となる高レベル放射性廃棄物ですが、更にそれを金属製のオーバーパックや粘土の緩衝剤で密封します。伺った日は偶然にも、丸3年掛けて行われたオーバーパック腐食試験の最終日。170×80cmながら6トンもあるステンレス製の円柱を、我が子のように慎重に見守る作業員の方々の背中に、未来を託す頼もしさを覚えました。と感慨に耽っていたら、壁に一か所だけむき出しの部分を発見!「幌延の窓」と称される地層は、約500万年前のものだとか。壁に触れて、遥かなる人類の祖先と交信できた気がしたと同時に、これからの地球の安全をしかとお願いして参りました。協定により、幌延町には一切の放射性廃棄物は持ち込まれず、数年後の研究終了後は閉鎖・埋戻しが約束されています。併設のゆめ地創館で、ユニークな仕掛けのエレベーターに乗って研究内容を学ぶもよし。隣のトナカイ牧場で癒され、貴重なブルーポピーを愛でるもよし。地層と共に積み重ねられた人類の叡智とロマンが、私達現代人の享受している原子力の行く末を担ってくれると、期待せずにはいられません。

(2018年7月)

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