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ドイツで出会ったエネルギーミックス

浅田 浄江氏 kiyoe asada
消費生活アドバイザー/ウイメンズ・エナジー・ネットワーク(WEN)会員

6月下旬から7月にかけてカナダを旅した。『赤毛のアン』の舞台プリンスエドワード島と、カナダ最大の街トロントを中心に観光したが、日が経つにつれ、日本とカナダのエネルギー事情から目が離せなくなった。

カナダは世界有数のエネルギー資源国で、石油、天然ガス、石炭、ウランに加えて水力資源も豊富であり国内需要を賄って余りある。隣国の米国に、石油・ガスはもちろん、発達した送電網により電力という形でも盛んに輸出している。

2012年の発電電力量を燃料別にみると水力が60%と最も多く、続いて原子力15%、ガス11%、石炭10%、風力・太陽光など水力以外の再エネ電源が4%となっている。

カナダは広大な国土に比し人口密度は低い。一人あたりの電力消費量は世界一位で日本の約2倍である。電気事業は基本的に州単位で組織・運営されており、10ある州別に電源別発電量や料金が公表されていて興味深い。電気料金は水力電源の多い州ほど安く、国土の広さや緯度の高さと相まってその安さが使用量の多さの一因になっているようだ。

こうしてみていくとカナダと日本はことごとく真逆の状況にあることを思い知る。

エネルギー資源に乏しく自給率は6%程度と低い日本、国土は狭く人口密度が高い島国である。各国それぞれおかれた状況の中で経済を成りたたせ、利便性の高い生活を支えていかなくてはならないのだが、改めて持てる国と持たざる国の違いを痛感する。

先ごろ、日本における2030年のエネルギーミックス(電源構成)の議論が決着した。総発電量のうち火力の比率を6割以下へ引き下げ、原子力は22~20%程度、再生可能エネルギーは22~24%程度に拡大する方向で当面の施策を推進していくというものだ。

エネルギー政策は国の根幹をなす。「安全」を大前提に「供給安定性」「経済性」「環境保全」を同時に達成する、いわゆる「S+3E」を消費者一人一人が理解し、日本が選ぶ道について冷静に考えなければ、と改めて思った旅であった。

(2015年7月末)

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