私はこう思う!

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非日常の中の日常――福島第一原子力発電所を視察して

小林 良子氏 yoshiko kobayashi
エッセイスト/石川県教育文化財団理事

エネルギー政策に多くの人が関心を持ったのは1997年の通称「京都議定書(地球温暖化防止会議)」で私もその一人です。日本は温暖化防止のために、私達の暮らしを支える電気を安定供給するために、原子力、火力、水力発電(自然エネルギー)などのエネルギーのベストミックスが実現する道を選びました。

原子力発電は幾つかの解決すべき問題を抱え、科学的に道半ばの発電でしたが、この30年、安全神話が生まれるほど無事故で稼働したことは事実であり、地球温暖化防止のために貢献してきました。それが東日本大震災で大きな事故になり、脱原発の声が高まり、国内の原発はすべて停止しました。現時点で脱原発の声は当然かもしれませんが、このままでは道遠しの思いがします。

ドイツは1986年のチェルノブイリ事故以来28年間、脱原発を掲げて再生可能エネルギーに力を入れ、ドイツ人らしい真面目さで環境教育にも取り組んでいます。それでも再生可能エネルギーは22%、原発は17基中9基が稼働して15%、CO2を排出する火力は60%です。

他国から電気を購入出来るヨーロッパでも温暖化防止や脱原発への道程は容易ではありません。まして島国の日本においては電気は自給自足であり、多くの原子力発電所の放射性廃棄物最終処理問題は未解決のままです。また、原子力発電所停止に伴う電力コストの上昇が経済界に与える打撃も心配です。リスクのない発電はありません。私は原子力発電所の30km圏内に住んでいますが、エネルギー政策は安全性を含めてバランスを大切に考えてほしいと思います。

2014年10月、福島第一原子力発電所を視察しました。原子力関連企業の方6,000人、東京電力社員1,000人が現地入りし、汚染水処理については度々故障したアルプスに代わるヒーローを日本企業で製造して運転を開始するなど、作業は確実に前進しています。福島に熱い思いを感じるのは作業を通して原子力の知識と技術の進歩があったからだと察知してほっとしました。日本人の叡智と勤勉さに期待しています。

(2014 年10 月末)

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