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高レベル放射性廃棄物処理の行方と学校教育

浅野 智恵美氏 chiemi asano
環境カウンセラー/消費生活アドバイザー

高レベル放射性廃棄物の処分は、原子力発電の賛否によらず、考えなければならない問題です。処分事業と地域共生のあり方について様々な考え、価値観、立場を持つ市民が意見交換し、学び合うことを目的としたワークショップが、2007 年度から全国各地で開かれ、私も複数の会場でファシリテーターを務めました。本年9月には、高レベル放射性廃棄物の地層処分・処分事業に関するオピニオンリーダーのための熟議型ワークショップに参加し、エネルギー政策見直しの経過や、地層処分に関する話を伺った後、「私たちは今、地域で何ができるか?そのためにどのような連携が必要か?」をテーマに議論を持ちました。

日本学術会議が原子力委員会に提出した「高レベル放射性廃棄物の処分について」と題した報告書では、火山活動や地震が活発な日本において、1000 年~ 1 万年先の地層変動の予測は困難で、長期にわたり地下の地層を確認することは、現在の科学では限界があると指摘しています。さらに、地中深く数万年埋める計画を白紙に戻す覚悟で見直し、数十年から数百年程度、地上や地下に暫定的に保管しながら、半減期を短縮するための技術開発などを進めるべきと述べています。一方、国は原発から出る高レベル放射性廃棄物はガラスで固め、地下300m以上の地層に10 万年埋める地層処分を採用しています。処分地の選定はもとより、処分方法にも揺れが生じている現状に、原子力事業の難しさを痛感します。いつ、どこで、誰が、どのように高レベル放射性廃棄物の処分方法を検証し決定するのか、それを一刻も早く決める必要があると思います。

日本学術会議は「長期的な取組として、学校教育の中で次世代を担う若者の中でも、認識を高めていく努力が求められている」と先の報告書に記しています。11月に米国シンシナティ日本語補習校で、中学生と高校生を対象に「東日本大地震から考えるエネルギーと私たちの暮らし」をテーマにお話します。負の遺産を誰がどう受け入れるか、世代間の倫理公平性、処分事業と地域共生のあり方など、将来世代のために一人ひとりが自分事として考える重要性を共に考えていきたいと思います。

(2012 年10 月末)

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