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エネルギー自給率の増加へ

松村 博久氏 hirohisa matsumura
鹿児島大学名誉教授

1970年代中頃のオイルショックに直面したわが国は、石油代替政策として天然ガス、原子力、ローカル(地域)エネルギーなどの導入を推進した。ここのローカルエネルギーとは、太陽、風力、小水力、地熱、バイオマス、海洋、廃棄物などを利用して得られるエネルギーのことで、一般に供給量が少ないために、近接地域で消費されるいわゆる地産地消型エネルギーである。

1980年代後半に入ると、太陽熱温水器から太陽光発電、風力動力から風力発電、バイナリー地熱発電など技術開発に伴う新しいシステムが取り入れられた。供給規模も次第に大きくなり、エネルギー消費量の補てん役を担えるようになってきたことから、ローカルエネルギーは「新エネルギー」と呼ばれるようになった。

現在はエネルギー自給率の向上と地球温暖化対策が重要課題となり、メガソーラ発電、ウインドファーム、バイオマス発電など自然エネルギーの利用促進が強調されて「再生可能エネルギー」へ進化した。

このように「ローカルエネルギー」から「再生可能エネルギー」へと変遷した歴史は、半世紀近くを経過してきたが、成果のエネルギー自給率は思うように伸びを示さずに低迷している。国内の原子力発電所が全面ストップし、国外へ多額の化石燃料費を支払っている今こそ、エネルギー自給率の増加に向う時期である。行政は短期的制定の補助金や助成制度に依存することなく、本腰を入れた普及啓発と明確な増強シナリオを提示することが望まれる。一方、消費者も他人ごとですまさずに国内や国外の事情をよく観察し、危機意識が希薄にならないように積極的な努力が必要である。地域に密着した地産地消エネルギーは、暮らしの中の「省エネルギー」に大きくかかわっているので、別々に対応するよりも両者が並列進行することにより、消費者の興味と意欲をそこなうことなく持続させ、より良い効果をもたらすと私は思う。

(2014年7月末)

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