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ドイツで出会ったエネルギーミックス

生田 ふみ氏 fumi ikuta
岐阜大学・十六銀行産学協同プロジェクト くるるセミナー ディレクター

ドイツ南西部、スイス国境近くにあるシェーナウという小さな村が、10年余をかけて電力供給会社を設立したという情報を知る機会があり、ドイツ環境スタディーを実施。国情が大きく違うのだからとどこかに疑問を持ちながら、フライブルクを拠点にアルザス地方の農家や牧場のエネルギー事情を視察。クリスマスマーケットの電燈の灯りとホットワインを楽しみながら、市民レベルのエネルギーミックスの可能性を垣間見ることが出来た。

【プラスエネルギー集合住宅】ヴォーバン地区に行政・業者・住民参加の都市計画による、安全で緑豊かなエリアがある。合理的な省エネ集合住宅と太陽光パネルによる余剰電力の売買が可能な設計、地域熱供給システムなど、徹底したプラスエネルギー効果が見られるだけでなく、カーシェアリング、都市部でありながら子供の遊び場を住宅エリアの諸所に確保、地面雨水溝で街路樹などが驚くほど大きく育った景観からも、太陽を和らげるエネルギー節約効果を改めて気づかされた。

【アルザス地方の再生可能エネルギー】黒い森の麓にあるフライアムトの酪農家3軒を訪問した。BSE(狂牛病)による牛肉の価格低迷と高齢化や後継者不足などを機に、トウモロコシや牧草、家畜の糞尿によるバイオマス発電へ参入。残物は肥料として農家が再利用。急勾配の大屋根に太陽光パネルを設置し、酪農に代わる収入源にもなっている。風力発電、小型水力発電など多様な設備により300パーセントの電力自給率を生み出し、地域の住宅や公共施設などへ供給。面積の4割を占める森からは材木やマキは販売、小枝はチップにして暖房装置の燃料にするなど、自然環境との共生を目の当たりにし、次世代への持続可能なエネルギーの一つのあり方として納得させられた。

【シェーナウの電力供給会社EWS】チェルノブイリ原発事故後、住民が主になって節電などの調査から始めてコジェネ発電による電力会社を設立、1,700戸から150,000戸のエネルギーシフトを実現した。かの事故は大きな試練であったが多くの事を学ぶきっかけになったとも。厳寒の冬仕様のドイツと高温多湿の日本の違いはあるが、地域の住環境、産業、経済面など多面的に現状を考察、総合的な視点から、多様な可能性を考えるべきヒントは多くあった。

(2015年7月末)

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