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食品照射で安全に美味しく食べられるものがある続編

市川 まりこ氏 mariko ichikawa
食のコミュニケーション円卓会議 代表/消費生活コンサルタント

放射線を照射した食品が安全だということは、国際的に認められている。しかし、問題は品質で、放射線を当てた食品に変な味やにおいがしたら使い物にならないのではないだろうかという懸念が残る。その点を消費者の視点で確認するために、2007年から様々な体験実験を継続してきた。
その体験があるからこそ言えることがある。食品照射は、どんな食品にでも、何にでも使える魔法の杖ではない。食品全体から見るとほんのわずかな部分でしか本来の効果が得られない技術だが、他のどんな技術にも勝る、優れた効果を発揮できる。例えば、温度を上げずに殺菌処理ができるから、生で食べたい食品の食中毒防止には必ず役に立つことを、多くの消費者の方に知っておいてほしい。

好奇心から始めた食味体験

食品の選定にあたっては、「家庭の冷蔵庫で腐らせてしまいがちな野菜も照射で長持ちするのかな?」「照射で味やにおい、外観の変化はあるのかな?」という消費者目線の素朴な好奇心を活かした。照射による食味の変化を見るために、チーズ、ベーコン、生うどん、豆腐等を購入して食味体験を行ったり、興味と関心の趣くままに、果物や、茶、筍、米などの体験実験を継続してきた。
これらの体験実験を通し、食品照射について「低温のまま殺菌などの処理ができるメリットがある」「どんな食品にも使える訳ではない。向き不向きがある」「線量は多過ぎても少な過ぎてもダメ」などのことが実感として理解できた。

香辛料や生レバーも体験実験

2009年と2013年には、放射線殺菌処理した香辛料と加熱殺菌処理した香辛料を使ってカレーを調理する食味比較実験を実施した。その結果、加熱したものより非加熱の照射香辛料を用いた方の風味が良かった。放射線は、香りや色を劣化させることはなく、品質を保ったまま殺菌処理ができる技術なのだということが納得できた。

2012年6月(生の牛レバーの提供や販売を禁じる食品衛生法の規格基準が施行される直前)に、冷凍牛生レバーの真空パックを取り寄せ、原子力機構高崎研究所で照射してもらい、官能テスト(五感を使った品質テスト)を行った。放射線殺菌した生レバーを未処理のものと比較してみると、その結果は、概ね「色、においの差なし」だった。
焼肉店や居酒屋の「レバ刺し」は人気メニューだったので、提供禁止を残念がる声は、いまだに聞こえてくる。放射線照射は、食品の安全性を守る技術として世界で認められているが、日本では知らない人も多い。今後、牛のレバーの殺菌技術として国が許可すれば、消費者が安全に食べるための選択肢として活用できると思う。

(2016年10月末)

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