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北の暮らしとエネルギー

山口博美氏 hiromi yamaguchi
消費生活アドバイザー/消費生活専門相談員

北海道では冬期間の暖房や融雪に多くのエネルギーを消費するため、他地域に比べ光熱費の支出額が多く、世帯の家計支出に占める割合も高く、年代に限らず世間話でも光熱費の話題がよく出る地域です。今回は、消費者問題の視点から地域のエネルギー事情を考えてみました。

地域の消費者団体が注目している問題の一つにLPガス料金の地域価格差があります。消費者相談の現場では全国一高いといわれる北海道価格に対する苦情が寄せられ、価格調査でも、灯油やガソリンが原油相場を反映して値下がりしても、同じ石油から作られるLPガス料金は高止まりしたままで、全国平均価格との価格差は年々拡大していることがわかります。業界からは、北海道には製造施設がなく配送距離が長くコストがかさむこと、積雪でガスボンベの交換に手間がかかること、ガスコンロで調理用だけに使用する世帯が多い、地域の事業者数が限られるなどの地域特有の事情を聞きました。

自由料金制のLPガスですが、一種の公共料金のように思われていたり、設備の費用負担がどうなっているのか知らないと答える消費者も多くいるのも現状です。しかし、消費者の理解不足を問題視するだけでなく、行政、業界、消費者団体は連携して「消費者の知る権利」と「選択の自由」の充足拡大にむけた取り組みを進める必要性を感じています。

もうひとつ気になるエネルギー問題がガソリンスタンド過疎の問題です。広々とした道を自動車で走ることは北海道観光の醍醐味の一つですが、自動車を運転しているとガソリンスタンドが随分減っていることに気づきます。自動車の燃費の向上や、周辺人口の減少、格安セルフスタンドの存在など小規模なガソリンスタンドでは経営が立ち行かないといった声も聞かれます。しかし、北海道は公共交通機関が脆弱な上、集落が点在しているため自動車の利用が不可欠になります。また、ガソリンスタンドは暖房に必要な灯油や、農業が盛んな地ではトラクターなどの燃料も扱っています。冬期間の災害を想定すれば、ガソリンや灯油が途絶えることは生命に直結する問題にもなってしまいます。この問題は複雑で答えは簡単ではないからこそ、現状を地域の住民にも伝え、まちづくりの面からも共に答えを考えていくことが大切になると感じています。

(2016年7月末)

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