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原子力の復権

槇村久子氏 hisako makimura
京都女子大学宗教・文化研究所客員教授/(一財)大阪市男女共同参画のまち創生協会理事長

我が家のエネルギーミックスは、電気、ガス、石油、灯油、太陽熱、薪、炭、ヒートポンプと多様である。冬はバイオエネルギーの薪がストーブで大活躍。炭も時々混入する。太陽熱は設備が古くなり、灯油も止めた。石油はまだマイカーに使っている。人間が始めた焚き火は、暗闇で明りになり、暖を取り、煮炊きもできる。しかし現在は電気が無ければほとんどが機能しない。電気を作るには石炭、石油、天然ガス、原子力、水力、再生可能エネルギーがある。再生可能エネルギーは太陽光、風力、中小水力、バイオマス、地熱と多様で、このエネルギーミックスをどう考えるかも課題だ。

東日本大震災の後、一次エネルギーの供給比率が大きく変わった。2010年と2013年と比べて原子力は2014年にはゼロ、一方再生可能エネルギーは13%また石油、天然ガス、石炭と化石燃料が大きく増加している。これは原子力の代替のため火力発電が増えたためである。この影響は様々に大きく、直近では電気料金の値上げにより家庭や企業に負担となり経営を圧迫している。私が責任者を務める財団も多くの施設を抱え電気料金の値上げに苦しんでいる。国レベルでは化石燃料等の輸入増で2013年度は13.8兆円の過去最大の貿易赤字だという。しかしお金だけの問題ではない。長年取り組んできた地球温暖化にも痛手だ。エネルギー起源のCO2排出量は1224百万トンでやはり過去最高、電力分は2010年比1.1億トン増えている。それに、電気を安定的に低価格で供給するために、原子力が動かない分を石炭火力で補おうとしているが、発電設備を新増設するには10年前後かかり、高効率とはいえCO2が心配だ。現実的に考えれば電源構成を一挙に変えることは難しい。長期的に考えれば、もっと新しい技術や設備が創りだされることだろう。

エネルギーミックスの課題の他にも、電力、ガス等をめぐって平成28年度から小売全面自由化、平成32年度から発送電分離という大きな変化がある。家庭も企業もどのように変化していくのか良くわからない状況にある。地球温暖化はもっと長期的であり、水とエネルギーと食糧と災害の循環と関連は複雑である。だからこそ国はエネルギーミックスの割合を早く示し、ロードマップを創り、現在の混乱・不安状態を軟直陸させ、時間軸が違う事柄を整理し短期、中期、長期と分かりやすい全体の構図を国民に示す必要があると思う。 1992年に地球サミットに行って以来23年も経った。2030年、2050年、2100年の人口動態の変化の中で、人々のライフスタイルも変わっていくのだろう。

データ出典:「エネルギー基本計画を踏まえた対応について」
(第10回近畿地域エネルギー・温暖化対策推進会議、平成27年2月開催、経済産業省資料)

(2015年2月末)

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