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東京五輪の持続可能な水産品調達とSDGs

浅野 智恵美氏 chiemi asano
NACS消費生活研究所主任研究員/環境カウンセラー

世界人口が増える中、将来にわたる水産資源の保全は、食の確保と漁業の繁栄に不可欠です。乱獲や枯渇が問題となる中、欧米を中心に世界各国で海のエコラベル付水産製品が普及し、注目が高まっています。しかし、日本は危機感が広がっておらず、海のエコラベル付水産製品の販売数の少なさや、消費者の関心の低さなどの課題が山積しています。

国連の持続可能な開発目標であるSDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」では、海の環境や資源問題を定めています。海洋と海洋資源を保全し持続可能な形で利用すべく、水産資源を回復する効果的な漁獲規制と管理計画が重要な要素となっています。

一方、スポーツの祭典を通じて環境や資源を大切にする流れを広げようとするり取り組みが、2020年の東京五輪に向けて進められています。食材などの持続可能な調達も重要な開催要件で、国際オリンピック委員会はSDGsに沿った大会運営を求めています。水産物では乱獲や違法な漁業への対応、小さい魚まで獲るのを減らすなど、水産資源を守るための管理ができていると第三者機関が審査して認証した水産品を推奨しています。

「オリンピックは世界最大の環境教育の場である」とも言われています。日本の水産業を復活させることは、和食の要である魚食文化の伝承や地方創生につながります。ふるさと納税品として、鳥取県境港産の紅ズワイガニのMELジャパン(マリン・エコラベル・ジャパン)認定商品が販売開始されるなど新しい動きも出てきています。

毎日のくらしは選択の積み重ねで成り立っています。消費者には商品選択の権利とともに安易に商品を選ばない、過剰消費に気をつけるなどの責任があります。また、視野を広げて社会経済・消費生活の根幹とも言えるエネルギー問題について、資源の有限性やエネルギー利用の有り方を考える責任もあります。

生物多様性と気候変動、エネルギー、貧困問題は密接な関係にあります。対策の遅れは環境の悪化を招き、水産業の存続や水産物の安定供給確保に重大な影響を及ぼします。食卓から海を守り次世代に豊かな魚食文化をつないでいくためには、私たちの意識変革と選択が重要な役割を担っています。世界の環境取組の潮流に遅れをとらないためにも、持続可能な社会につながる企業や商品、生物多様性保全につながる水産品を選ぶ重要性が増しています。

*SDGs:Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)

(2018年2月末)

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