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原子力の復権

中村 浩美氏 hiromi nakamura
科学ジャーナリスト・航空評論家

2014年の世界の平均気温は14.59度だったと、米海洋大気局(NOAA)が発表した。観測記録が残る1880年以降の135年間で、最高温だった。人間活動による温室効果ガスの排出が主因と分析している。地球温暖化(気候変動)による異常気象は、ここ数年常態化している。また温室効果ガスの排出削減が、世界共通のテーマとなって久しい。

今年末にはパリでCOP21が開かれ、2020年以降の排出削減の枠組みを決めることになっている。昨年リマで開かれたCOP20では、各国の利害対立が最後まで解消できず、COP21に先立つ時期に各国が削減目標を提出するという、基礎的な合意に止まった。

先日、来日中のリチャード・レスターMIT教授にお会いする機会があった。『COP21でもCOP22でも、世界的枠組みは決まらないだろう。低炭素化には何十年もの時間がかかる。』と、教授は悲観的だったが、『日本には長期的な役割の戦略を期待する』とのことだった。電源構成(ベストミックス)が未定でエネルギー政策が固まっていなかった日本は、COP20では議論に積極的に関わることができなかったが、COP21では存在感を示さなければならない。

2030年のベストミックスの目標策定に向けた議論が、経済産業省の有識者会議で本格化している。政府は6月にも削減目標を国際的に表明しCOP21に臨む方針なので、それまでに結論を出すことになる。議論の焦点は、政府が合計の比率を50%程度とする意向と伝えられる、原子力発電と再生可能エネルギーの割合だ。昨年策定のエネルギー基本計画で、原子力を重要なベースロード電源と位置付け復活を明記した。しかし原子力依存度を可能な限り低減させるとも表明している。これはいわゆる脱原発世論に過剰に配慮したものだと思う。この方針を見直し、原子力の活用を(安全性の確保を大前提に)冷徹に議論してほしいと願う。

再生可能エネルギーは、物理的な限界、普及の制度設計の未成熟、コスト負担などを考えると、過度な期待は無理で20%前後が現実的な上限だろう。原子力には再稼働に向けた安全審査の遅れ(九電川内に続いて関電高浜にもやっと合格証が出たが)という課題があるものの、将来目標としては、再生可能エネルギーを上回る比率、具体的には震災前の30%程度に極力近づける比率を担ってほしい。それが温暖化防止のためにも、日本のエネルギーセキュリティの面でも意義あるベストミックスだと思う。

『原子力は低炭素化に貢献でき、日本の関与は世界的に重要だ。日本の安全技術の世界展開、福島の教訓の活用、安全確保の世界的枠組みへの貢献など、日本の原子力の役割は、これからも原子力を使い続ける世界にとって大きい。』レスター教授からのメッセージである。

(2015年2月末)

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