私はこう思う!

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北山 淑江氏 yoshie kitayama
新潟大学名誉教授(理学博士)

毎年9月下旬、大学2年生を対象に見学会を開催している。新潟東港にあるLNG受け入れ基地と、隣接して建設されたLNGを燃料として使用しコンバインドサイクル方式で高い熱効率を誇る火力発電所の見学である。私は今、この見学会を終えて原稿を書いている。

見学前に、学生にはETT発行の「暮らしの中のエネルギー」を読んで感想を書いてもらっているが、この感想文で意外なことがわかる。エネルギーや環境について学校で考える機会を、小学校では与えられるが、その後の教育の場では本人の興味の有無に任されているということである。

感想文を読むと、大部分の学生にとって、このテキストがエネルギーについて改めて考える初めての機会と見受けられる。中学、高校では受験勉強に明け暮れるため、エネルギーについて漠然と考えてはいるものの、知識として取り入れる気にはなれないのが実情のようだ。それは理解できる。蛇口を捻れば飲めるように精製した水や湯が、コックを廻せばガスが出る。食物も季節に関係なく欲しいものが食べられる。これほど便利な生活を送っていては、日本が資源の無い国であると頭ではわかっても、実感できなくて当然だろう。

今年の感想文のなかに、「日本は資源を輸入に頼っている。昨今報じられている北朝鮮問題がこじれて第3次世界大戦が起これば、たちまちエネルギー源の石油や天然ガスが入手できなくなるであろう」と書いた者がいた。また、原発の廃棄物処理に関して意見を述べた者も少数ながらいた。「資源の無い日本では原発は必要なエネルギー源である。しかし廃棄物の地層処分に対しては自分の傍に置くのは不安で心配」と書いている。因みにこれはNUMO(※)主催説明会に登壇したパネリストの若者と同じ意見で、私もそう思う一人である。

バブル期から低成長期の現在まで、同じ年齢の若者を対象に開催しているこの見学会は、豊かさ・便利さに慣れてしまった若者に、その時の社会情勢やできごととエネルギーとを結びつけて考えるきっかけを与えてきた。彼らの感想文をとおして時代の変遷まで見える。地道に教育を続けることの大切さを、改めて認識させられる今日この頃である。

※NUMO:正式名は原子力発電環境整備機構。放射性廃棄物の地層処分事業を実施する組織。

(2017年10月末)

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