私はこう思う!

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百聞は一見にしかず

芦野 英子氏 eiko ashino
エッセイスト

6月16日、私は福島第一原子力発電所の現況を視察しに行ってきました。

いわき市より福島第一発電所に至る道すがらバスの車窓から見てとれる景色に目を凝らしながら、津波の爪痕の残る廃屋、立ち入り禁止区域の農地や建造物、そしてそこに施された立札やバリケード、車道の左側に設置されている放射線の数値パネル。そして除染を終えてシートに包まれた低レベル廃棄物の置かれた田圃や空き地。その数の多さに息を呑む思いであった。廃棄作業の拠点である『Jビレッジ』に着き、事故当時のビデオや現在の状況についての丁寧な説明がありいろいろと学習をした。

その後、構内専用のバスに乗り現場の様子をつぶさに見て回りました。

1号機は外壁等既に囲いがなされ2・3号機については瓦礫撤去等の準備工事が行われていた。3号機は事故の様子がいまだ生々しく窺え痛々しいすがたを見せていた。

また、陸側遮水壁の設置や排水路の暗渠化、雨水の浸透防止のためモルタルが吹き付けられた土手、汚染水の除去作業など確実に作業は進展していた。廃炉に至るまでにはまだまだ長い年月が掛かる。しかしここで働いている人達の顔を見ながら、日本の技術、人々の勤勉さは実に素晴らしいと思った。今年は新規採用の社員も増えたと言う。こういう人達が真剣に作業を続ける限り着々と成果は上がるはずである。

土手の隙間から月見草の花が咲いていた。また瓦礫の中からアザミの花も見えた。

昔、学生の頃歌った『原爆の歌』を思い出した。「ふるさとの町焼かれ、身寄りの骨埋めし焼け土に、今は白い花咲く、ああ許すまじ原爆を三度許すまじ原爆を我らの町に…」もうここには草も生えないと言われた広島に一年足らずで花が咲いた。いつでも希望はある。

帰りの特急では反対側の窓により富岡・双葉町・浪江・南相馬とつぶさに見ながら仙台にむかった。 途中の田圃に白鷺が二羽遊んでいた。場所を変え七・八羽。『このへんの田圃は試験的に稲を植えているので農薬は使用していない。だからドジョウやタニシがいるのです。それをねらって鳥がくる』と、同行の井口泰孝先生が教えてくれた。『それにつけても白鷺はどうしてそれが解るんでしょうね。どんなセンサーを駆使して飛んでくるのでしょう。』と先生も私も笑顔になった。百聞は一見に如かず。有意義な視察研修でありました。

(2016年7月末)

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