私はこう思う!

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食品照射で安全に美味しく食べられるものがある

市川 まりこ氏 mariko ichikawa
食のコミュニケーション円卓会議 代表/消費生活コンサルタント

レントゲン検査や手荷物検査に放射線が使われていると知っていても、「食べ物に放射線を照射する」と聞くと、一瞬「えっ!?」と思われるのではないだろうか。

食品照射は、食品や農産物に放射線を照射して殺菌、殺虫、芽止めなどを行い、食品を衛生的に管理する食品処理技術の一つであり、国際的に標準化された技術である。

私は、2005年、内閣府原子力委員会に設置された食品照射専門部会に消費者委員として参加した。その時、自分を含めて消費者は食品照射についてほとんど何も知らないということが分かった。

日本に昔からある消費者団体は、一貫して食品照射に否定的で40年もの間、消費者にとっての食品照射のメリットに目を向けていない。私は、このような状況を何とかしたいとの思いから、「食のコミュニケーション円卓会議」という消費者団体を2006年に立ち上げ、思い込みや古い常識に囚われない学びと体験を実践してきた。食品照射は当初から活動テーマのひとつとして取り上げ、様々な食品を照射して食品への照射効果や影響などを調べる体験実験を継続してきている。

食品照射については世界のどの国でも反対運動や放射線への忌避感があり、どの国でも消費者の理解や受け容れには困難を抱えていて、この点で日本だけが特別ではない。しかし、諸外国の状況とは異なり、日本では40年前に始まったジャガイモの芽止め照射以外は、改めてリスク評価を行うことも無く、規制を見直すことも無く、食品衛生法で禁止されたままである。行政関係者をも含めた多くの国民は、「照射食品の安全性に問題があるから法律で禁止している」と思い込んでいるのではないだろうか?

食品照射技術は、食品を安全に美味しく食べるためにある。これは消費者にとってメリットだが、食品によっては技術的な限界があり、経済的な利益が見込めなければ普及は不可能だ。実用化するかしないかは、このような観点から消費者の嗜好や事業者の自由競争に委ねられるべきである。しかし、選択肢として存在しないのが日本の現実だ。この現状を打破し、消費者がメリットを享受できるようになる日が来ることを願っている。

(2016年2月末)

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