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行動継続のためにゲーム感覚を取り入れる

新井 範子氏 noriko arai
上智大学経済学部教授

数年前のことだが、平成24年、25年に関西けいはんな地区で行われた「デマンドレスポンス(DR)」の大規模実証実験に評価委員として参加させていただいた。夏と冬の合計4回行われた大規模な実験は、参加家庭にあらかじめポイントを付与し、DRの呼びかけの日の節電の度合いによって、ポイントが減っていくシステム。節電できればポイントがたくさん残り、実験終了後に多くのお金がもらえる仕組みだ。結果、初年度のほうが効果は高く、TOU(時間帯別の料金)やCPP(ピーク時課金)などで効果は若干違ったものの、やはり、実験に慣れてくると効果が薄くなってくることがわかった。せっかく節電行動を起こすことが出来たのに、その行動をどう継続させるのかは、とても大きな課題だと思う。このDR実験で、「頑張った分だけお金になる」というメリットがあっても、2年目は効果が減少するとわかったわけだから、日常の省エネ活動の継続は、さらに難しいことになる。

考えてみれば節電行動することの動機付けに関しては、多くのことが取り組まれている。例えば省エネフェアなどのイベントや様々な媒体を使った広報活動である。しかし、行動の継続に関する取り組みは少ないように思える。では、行動継続のためには何をしたらいいのだろうか?行動継続の施策として、「ゲーミフィケーション」というものがある。これは、簡単に言えばゲームでないものにゲームの要素を取り入れることで、最近よく聞くようになった言葉だ。人は楽しいことは継続できるが、単調になったことは継続できない。だからゲームのように楽しい要素を毎日の節電行動の中に取り入れられるようにすればいいのだ。今後、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)が普及して、電力が見える化したら、このゲーミフィケーションの要素をぜひ、加えて欲しいと思う。すなわち、キャラクターが毎日違うコメントをしたり、他の人たちと励ましあえたり等、飽きないで続く仕組みである。節電の継続には、節電することが楽しいと思える仕組みの開発が必須となるだろう。

〈参考〉
デマンドレスポンス(DR)… 電力需給が逼迫する際に、供給者側からの要請に基づいて需要者側で電気の使用を抑制もしくは別の時間帯にシフトすることにより需給バランスを保つこと。
TOU(Time of Use Pricing)…季節別や時間帯別で料金を固定した料金制度のこと。
CPP(Critical Peak Pricing)… 電力需要のピーク時間帯における料金を高くすることで電力需要の抑制を促す料金制度のこと。

(2017年6月末)

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