私はこう思う!

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止めただけでは終わらない原発

大宅 映子氏 eiko oya
評論家/
公益財団法人大宅壮一文庫理事長

「原発はいらない!!」もしこの世に原発は存在せず、これから導入するか否か、と問われたのであれば、私はそう答えたかもしれません。しかし原発は既に存在しているのです。しかも使用済燃料の始末の解決法がないまま。やかんに湯を沸かすように、火を止めれば止まり、放っておけば自然に冷めて水に戻るという品物なら問題ありません。でも原発ばかりは止めただけでは終りにならないのです。お気楽に"や~めた" じゃ済まないのです。昔から"トイレのないマンション" と言われてきたこのモンスターに、これからも立ち向かっていかなくてはなりません。廃止するだけでも、膨大なコストと時間と技術が必要です。

また、百歩譲って日本が完全に脱原発をしたとしても、諸外国、特に途上国は、これから豊かになるためにエネルギーを必要としています。中国、ミャンマー、インド…etc. 皆原発を推進するでしょう。そうなると、いくら日本が止めたとしても、危険の存在は続くということです。原発の技術は日本が持っています。その技術をより磨き上げて、これらの途上国での原発の運営に貢献するのが、日本の義務であり、責任であると思います。また、世界もそれを期待しているのではないでしょうか。私は科学技術の進歩を信じる一方で、人間はあくまでも謙虚に畏れを失わないようにするべきだと考えています。新しい原発着工は無理でしょう。しかし、再生可能エネルギーが原発にとって代わるとも思えません。再生可能エネルギーの先進国ドイツでも購入する電気代が高く、消費者への負担が急増し、後退しつつあります。二周遅れのような日本で、太陽光発電がブーム状態なのはいかがなものかとも思います。

エネルギーを考えるとき、私たちはどこまでの豊かさを追求するのかを考え、トータルで必要なエネルギーを想定し、どういうミックスでやるかを論じるべきでしょう。便利も豊かさも今まで通り、でも原発だけ不要、という選択肢はあり得ないと思います。

(2012 年10 月末)

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